16話 年下の子って言うのは一種の期間限定だと思っている
そう、これでチマチマ一線平塗りしなくて良い。
それが絵描きの醍醐味だとは思うが今この世界では一描き一描き絵描きが命懸け。
描いている途中に殺されていれば本末転倒も良いところだ。
なので絵を誠実に描くのは勘弁して頂きたい。
俺だって本当だったら一線を描きたいよ。
しかしゼアミが「良い性能の武器」と言っていたが想像以上のもの。
ごめんな、意味わからない無能な武器って言って。
武器という部類に入るのかなのかは別。
俺一生大切にするしこれをくれた最高神と芸術神には崇拝しかない。
神社も何処の礼拝堂で信仰しているのか分からない。
少ないかも知らないが一日一回は礼拝してる。
ゼアミがこの筆が貴方を選んだと言っていたとおりだ。
実際ゼアミを持っていても何も起こらなかった。
出たのは黒墨だけ。
それも顔面に向かって。
魚の墨絵ならぬ女神の墨絵ってな。
そのあとゼアミは筆に向かって怒っていたが物に鬱憤を当ててもな。
さてと、俺は今までの鬱憤を晴らすため一丁やったりますか。
筆先をそのままゼアミを喰っているクリオネに向け振り上げる。
「ゼアミ、覚悟しろぉぉーー」
「えっ?えっ?トキマサさん?何する気ですか」
そう俺に何かの確認を取ろうとするゼアミを無視して筆を降り下げる。
「落ちろコラー」
そう俺が言いながら筆を振り下ろすと。
顕現していた湖水図が反転し山頂部分がクリオネに向かって突っ込んでいった。
轟音を上げて地面に粉砕する箱根峠と岩と地面の板挟みに合うクリオネ。
見るからに地獄絵図だった。
ゼアミがいる頭部を狙わず胴体を狙って放っていた為かゼアミには傷はないはず。
無事を確認するために触手と唾液でベトベトになったゼアミをクリオネから引っ張り出す。
ただ口って何処。
分からぬ。
「ひぐっ、ひぐっ。食べられるかと思った。見捨てられたかと思ったぁぁぁーー」
目の前ではクリオネの粘液でネバネバになりながら俺の膝に抱きついて泣き叫ぶゼアミ。
「いや離れてくれ、マジで離れてくれ」
クリオネの唾液が原因なのか凄く臭い。
大泣きするまでほっといたフリした俺も悪いが今は離れてくれ。
クリオネは圧倒的な質量に叩きつけられたものだからそのまま動かなくなっている。
大筆で召喚した物は数時間経てば消えて無くなる。
流石にずっと有り続けるのはチート過ぎるからな。
まぁ魔力を消費し続けるなら召喚したままに出来るけど。
今の崩壊している山に顕現し続ける意味もない。
破壊された絵画には価値が無くなるように破壊された光景に価値はない。
なのでクリオネにぶつけてから魔力を送っていないからじきに消滅するだろう。
クリオネは聞いていた通りに硬く三、四回切り込まなければ刺さらなかったので少し疲れた。
まぁ、所詮はただの軟体動物、スパスパ切れた。
ククリナイフはただ一直線に斬るのに特化したものでは無い。
滑らせるように斬らなければならないため難しい武器だ。
「ありがとうトキマサしゃん。本当にありがとうぅぅぅ」
クリオネの触手部分は少し粘着質があり引き離すのに時間が掛かった。
何せぐるぐる巻きにゼアミを捕らえていたのだったから本気で喰おうとしていたんだな。
コイツを見て何処に栄養があるように見えたのか聞いてみたいな。
そして引き離してからずっとこのように泣き続けている。
まぁ捕食プレイが好きな連中は流石にいないだろう。
「ほらゼアミ逃げて悪かったよ。もう切り上げようか。クエストの期間は五日以内七匹討伐やけど流石にこのままでは無理だとわかるやろ?もっと準備万端で行こな。せや、その方がええ。俺この服じゃ走りずらいし、な?」
そう言いながらハンカチを渡す。
全部を拭き取れるとは思えないが顔ぐらいは拭ける。
綺麗な顔なのにいつまでも臭いままは嫌だし。
「ありがとう。意外と優しいのねトキマサ」
「意外とってなんやねん意外とって。元から優しいわ。って何でや、何でそないに俺に近づいてくるんや?」
「喰べられる時は一緒だよトキマサ♡」
いや本当にすいません。
まさかそこまで追い詰められるとは知らなかった。
まぁ一割ぐらい泣かせた原因が俺にあるわけだし。
いやしかしなんでだろうなー。
何故かいじめたくなるんだよな、この女神。
討伐依頼はとても難しかった。
クリオネを仕留められたのもゼアミを食おうと止めたお陰だ。
何より生きている動物をおいそれと殺すのも気が引ける。
命を奪うってこういう事なのか、と思い知らされる。
これから色んな生き物の生殺与奪を繰り返すとなると覚悟しなければならないのか。
生物の世界だと弱肉強食だと言われている。
知能と情がつくとここまで苦しくなるのは人間の性。
立ち向かってくるクリオネに、正面から斬りかかる勇気も持てない。
うーーん、冒険稼業って本当に難しいな。
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