15話 トラブルメーカーが許されるのは二次元まで
その性質をを利用して冒険者たちは金稼ぎ用の周回モンスターとなるわけなのだが。
俺とゼアミは金属製の神器を持っていたお陰で初手の捕食は免れた。
普段はこのクリオネ達は地中でおねんねしているところをだ。
ゼアミが大筆を振り回したせいで墨を浴びたクリオネが怒って起きたというわけだ。
その後は何度か触手に捕まりそうになっているところをギリギリに避けて逃げている。
しかしこのクリオネ、唾液のようなネバネバした粘膜を飛ばしてくる。
ただ怒りの対象を狙っているだけか粘液はほとんどゼアミに当たっている。
「ったくよー。お前のせいでよー。こっちは食われそうやねん」
「仕方ないでしょ。まさか適当に筆を振り回してたら透明なクリオネがいたなんて。しかも寝ていたなんて分かるわけないでしょ」
「寝耳に水にしては上出来や。だがなもう少し考えて行動してくれ。流石に単細胞生物やけんやろ」
「馬鹿にしないで、もういいわよ。私が魔法使うからある程度距離が離れたら下ろして」
「わかった。わかった。ほっといて逃げるで」
「えっ?嘘じゃないわよね。少女一人置いていかないわよね」
取り敢えず激昂したクリオネから一定距離離れてゼアミを下ろしある程度離れて見ていると、
「ふふふ。さあて見ていなさいトキマサ。これが女神の魔法。そう、信者達が目を見開いて崇拝を表して敬愛する神様しかできない奇跡よ。街に帰ったら入信し、一日十二回祈りを捧げ私のいう事は全て従いなさい。何故ならその方が女神の神格が現れるから。特にご飯の時は私のお皿に出たピーマンとニンジンを一つ残らず食べっ……にゃん⁈」
ドヤ顔で言っていたゼアミはいつの間にか神隠しにあっていた。
神が神隠しとは世も末か。
先程まで俺を追いかけていたクリオネの動きが止まり、口がムニュムニュ動いている。
クリオネは透明だから中身が見えるためゼアミが弄ばれているのが見える。
おいおいそんなモン食ったら腹こわずぞ。
しかもにゃんってなんだよ、にゃんって。
長々としたセリフを言っていた間に詰めていたクリオネに食べられていた。
しかしあの口うるさいゼアミだ。
そう簡単に食われはしない。
「ちょっとトキマサさん助けてください。ちょっと?」
クリオネの口が塞がっているのに声が聞こえるということはそれぐらい大声で叫んでいる。
騒がしい者ほどよく生き残るって言う事はあながち間違いでは無いのか。
「そこにいますよね。トキマサさん?まさか本当に逃げていませんよね。ねぇ?トキマサさん。トキマサさーーーーん」
叫んでる、滅茶苦茶叫んでる。
あの小さい身体からどうすればそんな声が出るのか。
あちらからでも俺の所在が分かると思うのだが、焦りすぎて見えていないのか。
だが安心しろゼアミ。
お前の最後はちゃんと見届けてやるからな。
「トキマサさん帰ってきてください。こんな、ことはないですよ。ひゃっ、触手が動き出した。お尻に、お尻の喉にある変なやつに当たった。なんだろう、あんまりこの名前は 言いたくないけど。お願いします。トキマサさん助けてください。トキマサしゃーーん」
「しゃーねぇーたな‼︎今から助けるから動かんといてくれよ」
「トキマサしゃん‼︎」
ゼアミが希望を込めた声を出す。
もう少し反省させようかと思ったが流石にかわいそうだからな。
そして俺は大筆を背中から下ろし地面に筆先をつける。
「これが大筆の力やぁぁぁ」
大筆を振り上げたことで筆先は空を舞う。
通常の黒色の墨ではなく金色の粉が混じった虹色の墨が辺りに撒き散らされる。
そして撒き散らさせた墨は一点に集中し、一つの形に彩る。
「東海道五拾三次・箱根湖水図」
そう俺が言うと墨の塊は一つの絵と変化、顕現していく。
黄色、薄緑茶色、青色、薄焦茶色で構成された自然が生んだ起状激しい荒々しい岩肌。
厳しい環境を少しでも陽に当ろうと生きる木々。
今でも元世界では存在していた箱根の轟々とした峠。
それを高価な筆と具で描いた歌川広重の一作である。
「想像通りや」
浮世絵は何度も模写を繰り返した。
絵師になりたいのならば偉人や憧れの人の絵から学ぶだろう。
お陰で今では鉛筆を渡されたら描ける程度まで上達している。
そしてこの大筆はその頭に思い描けばそれを召喚させると言うとんでも神器。
この能力を発揮させる方法を知るのに苦労した。
ゼアミの変態打倒ビンタを食らった次の日。
毎日筆を持ち出して振り回していたのは良い思い出。
そしてその能力はスキルとして実装されていた。
冒険者身分証の紙がピコピコ光っていたから見てみたら、スキル名が出ていた。
大筆【雪舟(雪舟等楊)】
スキル名〈一筆書き〉
一筆で一つの絵を描き手の想像通りに完成させる。ただ、絵画レベルは画家の腕に左右される。
大筆【葛飾北斎】
スキル名〈画狂の星〉
筆のレベルと筆が認めた描き手の創造性と絵画練度、パラメータの[lv]に比例して思い描いた生物、人を召喚する。召喚された生物は描手に主従関係が生まれており描手の命令通りに生命活動を行い、顕現時間はレベルに応じて長くなり、極めれば幻想種、絶滅種、神でさえもの寿命が訪れるまで顕現し続ける。
大筆【歌川広重】
スキル名〈森羅万象〉
筆のレベルと筆が認めた者の創造性と絵画レベル、パラメータの[lv]に比例して思い描いた景色、風景を召喚する。召喚された風景は実際の物量エネルギーを有しており、顕現時間はレベルに応じて長くなり、極めれば滅びた文明、遺産建築物、果ては世界をも創造する事が可能となる。
大筆【菱川師宣】
スキル名〈浮世絵祖〉
敵全員に種族問わず高確率で魅力状態&防御力低下状態&攻撃低下状態を付与。
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