13話 色気は無意識のうちに出ているくらいが良い
この万年筆は元いた世界のように見た目は豪華な装飾がされた筆だ。
スイッチや引き金など何か変わったものがついているのではない。
本当にただただ美しいだけの万年筆。
試し書きで丸や図形を書いて持ち感を試すが、これがしっくりくる。
インクも程よく出ており紺の光沢を出している。
ホテルでよく用意されてあるメモ用の紙を千切り一文字。
新品なのか分からないが檜に近い材質でできた机を下敷きにして書いてみる。
ゼアミの言っていた絵の巧さが本領という事。
それは絵や文字の巧さでも力が変わるという俺の中での推測を立てた。
ならば下手に書いてしまっては能力が発動しないと思う。
俺は数年前に書道で二段取った記憶があり、和筆の扱い方なら多少の心得がある。
字の巧さならばそこまで悪くはない筈だ。
あの時の感覚を思い出して綺麗に『焔』を描いてみた。
普通ならここで紺色、黒色の墨が出てくるが出てきたのが黒い墨です。
ある程度時間が経つと俺が思っていた色に変わっていくではないか。
一応焔を描いていたので赤色、橙色、黄色に変化し、その絵が空中に描かれていく。
この時点で驚きなのだがさらに驚いた。
ジジジッ
と音を立てながらその文字が赤く染まり焦げていくではありませんか。
「どういう事や、これ」
挙げ句の果てには。
パチパチパチパチッ
「おいちょ、待て、あちっ、あちちちち。水、水」
何故か書いた紙から焔が顕現した。
今ので少し火傷したぞ、このヤロー。
いや待て、本気出した俺も悪いがそれは聞いてない。
手のひらサイズではなくガスバーナーが暴走したぐらいの大火。
何故焔が顕現したのか、原因はこの万年筆の力なのかと考えていた。
いるはずもなく宿屋に燃え移らないようにと風呂場に入って水を手に入れようと入るが。
そこには湯船に浸かり頬を朱に染めながらほんわかしているゼアミがいた。
そして俺と目が合い、少しずつ顔が朱く染まっていく。
「キャーーー。トキマサさんのエッチーーー」
と、某青ダヌキ国民的アニメのヒロインのセリフを言いながら桶を投げてきた。
中にはシャンプーやリンスなど入浴剤容器も混じっている。
「物を投げるのは分かるがそれは危ねぇやろ」
一応注意はしておこう。
分かる。怒るのは分かる。
これは本当に俺が悪い。
だが、ここで引く事はできない。
このまま転生一日目で神器で遊んで焼肉となって死ぬのは洒落にならない。
焼肉か。塩タンも良いがやっぱりロースかな。
あの肉汁と柔らかさが良いんだぜ。
天界どころか一族を通してのお笑いだ。
転生者の中でもこんな死因は嫌だろう。
「ごめんて。緊急事態や。水、水くれ」
「これ以上のどこが緊急事態よ。出て行って、早く出て行って」
投げるものが無くなったのか次は水をかけてきた。
確かにゼアミから見れば緊急事態だが、俺も同じく緊急事態なんだよ。
「うー、うー」言いながら水をぶっかけてくる姿は小動物にしか見えない。
湯気が立っているのであまりゼアミの姿は見えない。
幸か不幸か、薄い輪郭線、シルエットでしか分からないようになっている。
小さい発展途上の胸を手で隠し、湯船に深く入りながら抵抗してくる。
そして若干涙目になってきている気がする。
俺の服はビチャビチャになりながらも奮闘。
投げられて落ちている桶を取り湯船から湯を取ろうとすると。
「こっちくるな馬鹿ぁぁぁぁ」
近づいて見られるのが嫌だったのだろう。
「ごめんて、そっち見んから」
ゼアミが叫びながら殴ってきた。
今のは痛かったぞ。
筋力のパラメータが低いから弱いと思っていたが今のは会心が入っていたのか。
だが、殴られた時に俺は水を採取した。
「お湯、取ったどーーーー」
そう叫びながら急いで燃えている机と紙にぶっかける。
するとあら不思議、焔が消えていくではないか。
ジュージュー言いながら白い煙を出して消えていく。
消火した後は壁と机が火災現場のように黒くなっていた。
これは後で他の筆でペンキの代わりぐらいに使えば揉み消せるだろう。
「ふう、危なかったぜ」
変な冷や汗が出ていたが、濡れた服で消えている。
パタリと床に座り込む俺。
焼肉になる事はなんとか避けられたようだ。
「へぇ、何が危なかったの⁈」
「うん、ああ。カルビにならずにすん……」
座った俺の背中からゼアミの声が聞こえた。
今日出会ってからそこまで経っていない俺達。
そんな短い間に泣き虫のゼアミを見てきたつもり。
しかしその声はあまりにも女神の残酷さを物語っている声だった。
「ゼアミお前出てたんか?」
そのまま前を向きながらゼアミに聞く。
後ろを振り向くのが何か怖い。
何故だ。相手はあのロリ女神であるゼアミだぞ。
死にかけの老人と同等の体力しかないゼアミを恐れる要素があるのか。
だが俺の直感は振り向いてはいけないと言っている。
「そうね、ゆっくり今日の疲れを心の底から癒していたのにトキマサさんに覗かれて台無しになったのよ」
「そ、さよか。それはすまんなぁ。さっきも言うたように緊急事態やってん」
言っていることは普通でも声が凄く怒っているようです。はい。
そう、先程まで本当に緊急事態だったのだよ。
原因が俺であったとしても適切な処置をした俺に慈悲があっても良いのではないかな。
そうじゃないとお前も焼かれていたんだぞ。
いや女神だから燃えんのか。
「そう。だから、な・に・が・あ・ぶ・な・か・っ・た・の♡」
「えっと、その。すまへん」
そう謝まりながらゼアミの方向を向く。
ゼアミはバスタオルを巻いて笑顔で仁王立ちで立っていた。
謝った俺を見て溜息を吐く。
「トキマサさんの変態‼︎」
バチーーンッ
その後宿屋から頬を叩かられた音が木霊した。
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