10話 職業意外に選んで決めるのに結構時間がかかる
そんな思いを無視して受付嬢は俺の職業を提案してきた。
「魔力量が平均値なのでゼアミ様のように魔力を暴食漢のように消費する魔術師職などは向いていませんがそれ以外なら何にでも今なれますよ。攻防に秀でた聖騎士【ホーリーナイト】、遠距離からの攻撃者【アーチャー】、最新兵器を用いた重装弓兵【ガンナー】、遊撃戦に有利な狂戦士【バーサーカー】や人を守り守護する【シールダー】や影の支配者であり暗殺者の【アサシン】など選び放題ですよ」
そう言いながら様々な職業名が書かれた数枚の紙を渡された。
バリッバリのコテッコテの物理職。
確かに俺のステータスを見たらこの判断になるけど。
そしてこの職を薦めてきた受付嬢は間違ってはいないだろう。
俺だってそう推薦するし。
にしても、マジですか。
念願の魔法使いになれないだと。
いや童貞のまま三十路を迎えれば自然になれるが。
「こんなの年齢を重ねるにつれ夢にまで見た魔法少女になれない世の中の同志と同じくらい悲惨じゃねぇか」
「?」
受付嬢がキョトンとした顔で顔を傾ける。
まさか俺の魔力量が足りないと言うオチだ。
現代文明機器に囲まれて育ったから仕方がないが。
電子やら金属やらの物理主義に囲まれて育った弊害。
逆に魔力量が高いですよと言われたら言われたで可笑しな話だがそれでもだ。
折角魔法が使える異世界に来たのにここで物理攻撃類はあまりしたくない。
王道ではなく我が道を行くのが狂人の性。
ここまで魔法使いに向いていないと言われれば諦める者もいるだろう。
だが、関西圏の男は諦めが悪いのでね。
やれる事を探してやるのが我々のやり方だ。
「俺のパラメータでできる魔法使い系統の職業はないですか?」
「魔法使い系統、ですか?」
「そうです」
「ん〜。そうですね。魔法使いの方はいませんが一応こちらには職業一覧の辞典があるのですが。トキマサ様の魔法使いとパラメータに適正する職業としては魔術師の【マジックソード】、魔術書や杖などで魔術を発動させる【エンチャンター】などがありますが下位職になりますよ」
先程渡してもらった職業名が載った紙を見させてもらう。
他にも錬金術師の【アルケミスト】や賢者の【ワイズマン】など。
そう知能を多く必要とする職業もあったが俺はそこまで物覚えが良くない。
魔力が少ない者が魔術を使うには触媒体が必要になる。
とするとお金が掛かるし魔石や魔術書などの種類の知識が必要になる。
高校時代、化学も学習していたから錬金術師は実験を繰り返さなければならない。
ならばここはあえてサモナーを選ぶか。
辞典を見た感じ他の物は要らないし、魔術の知識もいらないように見える。
生物や物を召喚するのも面白そうだし。
あと動物も好きだからな。
召喚した獣とかとモフモフとかしてみたい。
「では【サモナー】でお願いします」
「【サモナー】?下位職ですか?これだけ肉体が恵まれているのに?職業を決めるのはその人ですから尊重します。ある一定のレベルに達したら転職出来ますので……ではサモナーと。冒険者ギルドへようこそゼアミ様、トキマサ様。ここにはいない本社スタッフ、無断欠勤をしたスタッフ、今お食事中のスタッフ一同、今後のお二人様のご活躍を期待しております!いってらっしゃいませーー」
「いやまて。無断欠勤したスタッフ許してええの?」
「いえ、ちゃんと一ヶ月給与一割の刑にされるそうです」
「つらっ!意外と重いな、その刑」
受付嬢はそう言い、にこやかな笑みを浮かべる。
この人一言余計なんだよな。
そこがおもろいのだけど、同時に怖いわ。
ギルドから出て宿屋に向かう途中受付嬢から貰った身分証を取り出す。
俺の名前が書かれた免許証サイズのカードを渡されたのだ。
名前の下には職業【サモナー】と書かれておりさらに下にはスキルと書いてある。
しかしながらまだ一つも覚えていないため白紙。
ここから色々覚えていくのだなと期待を寄せる。
予期せぬイベントが起こってしまったがこれはこれだ。
今のところ良い方向に進んでいるのか分からないが。
まぁ良い今は宿屋に行って休みたい。
天界から色々あり、ゼアミちゃんをここまで運ぶのに心身共に疲れた。
ようやく忙しい1日が終わり新しい異世界生活が始まる。
そう思いながらギルドから出る二人を見つめる視線を二人は気づいていなかった。
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