三十二話 絶望的観測
残りの戦車も指で数える程度となってきた。
恐らく、他の冒険者が持っている分だけのRPGー7を撃ちまくったのだろう。
俺も負けじと目の前の戦車に狙いを定める。
「そのムカつく鉄の棺桶にシューーーーーート」
「「ナイスーーーーーー」」
「超ッ!」
「「エキサイティング‼︎」」
ゼアミとTー34がハモって叫んだ。
俺達パーティは今絶好調。
他の冒険者もある程度手柄を上げたことにご満悦か「いい汗かいたぜ」な格好で座っている。
それに対して自分の軍隊が殲滅状態になったマッカーサーは面白くないらしく。
手を握り締めながら苦虫を噛み潰したような顔で聞こえるくらいで呟いた。
「くっ、最早ここまでやるとは。一方的ではないか」
こちらが残念に思うくらい一方的ですね。
まぁ、殺傷してはいけないという此方最大のバフがあるのが最大の勝因だと思うけど。
「これもあのコミンテルの獣人とあの大筆の男が原因だな」
おっとぉ、何か嫌な予感がする。
「もう、魔王様の命令なんて聞いていられるか!あの二人を倒せ‼︎」
「ええーーー!」
急に此方にターゲットを絞ってきた。
しかも殺傷してはいけない命令を無視しており明確な殺気を含んだ声で。
残った戦車も城門や街ではなく俺達の砲門を俺達二人に向けた。
マズイマズイ、俺はもう全てのRPGー7を使い果たしてしまった。
Tー34は申し訳なさそうな顔でもう弾頭がございませんと言っているし。
本当の万事休すか、調子に乗りすぎたか?
そんな絶望的な状況の中此方に向かって時を考えていない元気な声が届いた。
「ご主人様。大丈夫アルカーーー」
「サンサン、こっち来るな。ゼアミの結界の中に入れ!」
「えっ?」
街に飛ばされていったサンサンが何事も無かったかのように此方に向かって走ってくる。
ありがたいといえばありがたいが流石に数門の砲弾からは逃げ無ければ。
しかし、俺達に向けられていた全砲門がサンサンの方向に向いた。
いや、サンサンの囮スキル強ずぎるだろ。
向いた瞬間、砲門からは火を噴いて数発の弾頭がサンサンに直撃した。
「アルアル、ガンガンガンッ」
二発くらい爆発音が聞こえたあと何かを掴んだ音が響いた。
爆風の中であったがどうやったのかはある程度見えていた。
まさかこんな集中放火を食らっても生きているサンサンが凄いわ、引くわ。
「さっきは飛ばされたアル。けど、今のはタイミングよく捕まえれたネ」
「ハァッ?」
マッカーサーが驚くのは無理もないな。
自らの拳で二発の砲弾を炸裂させた。
そして最後の三発を野球の捕手のようにキャッチするとは思わないだろう。
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