5話 「お兄ちゃん」と言う妹の特権
ーー冒険者ギルド(ヨーク支駐屯所)ーー
巨大な看板にそう書かれていた。
木を文字の通りに掘り墨で描かれたよく和定食屋の看板のようにデザインされたもの。
おそらく作ったのは俺と同じ工作系大好きな人かな?
大層なものを作って凄いな。
支駐屯所と言うことは他にもあると言うことで本部もあるということなのだろう。
まぁ初心者の街に本部を置くことは無いよな。
だとしたら王都や都市にあるのか。
そして駐屯所は他の建物とは違います。
それは日本で見た事ある大使館の様な豪勢な大理石造りで想像していた物とは違っていた。
想像では木造の巨大なホールみたいな建物を想像していたのだが。
実際には余りにも造形が良すぎる。
この異世界自体の文明度は中世くらいなのにも関わらずだ。
いずれはこんな屋敷に住んでみたいな。
ある程度金が貯まったら家でも買ってみるとしよう。
そうそう屋敷なんて買えるとは思えないし舐めているのかと言われそうだが一軒家くらい。
いや集団住宅くらいは稼いで活躍してやる。
ギルドとはRPGでは必ず出てくる組織。
本来は現実世界でのイスラム圏で派生したものである。
商業や職人の独占利益を行うために集まった集団組織。
冒険者の登録から仕事の口添えまで行う民営サービス。
ようは異世界版のハローワーク、職業安定所の立ち位置。
確かに人間という者は生まれた時から罪であり労働こそが贖罪となる。
しかし働かざる者食うべからず。
生きるためには職が必要である。
日本では人の数ほど職業があると言われているが異世界も同じなのだろうか。
欅のドアの隙間からは他の冒険者の声とこの異世界の食べ物の匂いか嗅覚を擽る。
窓や扉から溢れてくる声に荒くれ者がいるのか某ガキ大将みたいな者がいるのか。
いやいや悪いイメージは払拭しよう。
声が大きい奴なんてそこら中にいる。
大阪の繁華街なんてそいつらの巣だし。
いくつになっても元気なのは良いことだ。
だが新参者の俺を見て絡んでくる者がいるかもしれない。
決闘みたいなものは無いと思いたいし、そんな危ないことはしない主義だ。
それに俺が持ってるのは大筆と大万年筆だし、どう見ても実戦向きの武器に見えない。
ガンを飛ばしたり構えていなければ大丈夫だろう。
さてと気を引き締めて中に入るか。
そして俺は背中に向けていた手を下ろす。
すると重力に逆らえないゼアミは尻から地に着いた。
「きゃっ。ちょっといきなり下ろさないでよ」
「すまん。すまん。お前のこと忘れていた」
「絶対わざとでしょ。ねぇ」
「せや」
そう言い金属のドアノブを回し扉を開けると、
「いらっしゃいませ。お仕事紹介ですか?依頼の応募ですか?お食事ですか?取り敢えずカウンターへどうぞー」
ウサギ耳を生やし、このギルド専用なのか制服を着た女性スタッフがトレーを持っていた。
無料配布、原価0円の営業スマイルで出迎えてくれる。
取り敢えずカウンターに行けば良いのだな。
電気機器がないと思われるこの異世界では蝋燭が光源であるため少し薄暗い。
それに対して人は活気に溢れている。
人の陽気は大炎より強しってか、いいじゃないか。
食堂があるということは酒場併設のギルド、すぐ食事へ移動出来るから機能性が良い施設。
鎧を着た者、長いローブを着た者、古傷がある者が屯っているが、治安は良さそう。
ギルドの外見が良いのはこういう人達のお陰なのかな。
良かった。ビール瓶が飛びまくったり、武器や魔法のぶつかり合いが無い世界でなにより。
平和主義が大好き。
だが、今初めてギルドに入ってきた新参者である俺があまりにも注目されていた。
何故だ。まさか隣にいるゼアミが女神の神性を放出しているのか、そうなのか。
だとすれば少し面倒臭くなる。
そうコイツが調子に乗りはじめ……。
「何よ。みんなどうして子供がここに来るのかとか。妹なのかとか。あの兄ちゃん大筆持って変な奴とか。もっと私を見てよ。女神なのよ。なんで神性オーラ出てないのよーー」
ただただ良かった、小煩くなったが俺の予想は外れたらしい。
そもそも神性オーラとはなんだよ?
神性が出ているというのは分かる、が。
「俺は少なくとも駄女神オーラが出ているのは感じ取れるが、確かにおかしいな」
「貴方もそうやって弄ってきて、もう嫌よ。早く天界に帰りたいよ。お兄ちゃん」
「誰がお兄ちゃんじゃ‼︎」
お兄ちゃん、お兄ちゃんだと。
俺のことをお兄ちゃんと言っていいのはあいつだけだ。
「いかんな。自分で仕掛けた筈なのにゼアミのペースに乗せられてしまっている。まずいな」
口喧嘩では相手のペースに乗せられてしまえば負けとなるのだ。
にしても後ろから「お兄ちゃんw、お兄ちゃんw」と言ってきている。
最終的に面倒臭い状況になってしまったのだ。
嫌な状況は耳と頭の片隅に置いといてだな。
やっぱりこの大筆と小筆は目立つのか。
どうにかして隠して置きたいのだが元々が巨大過ぎるんだよな。
実際ゼアミよりも大きい神器だ。
毎度思うがこんなヘンテコな巨大筆を持って異世界転生するとはね。
これらから俺を異世界人と見られることは無さそうだが。
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