十話 人身事故
「よし、訓練を続けるで〜。二枚目は〈富嶽三十六景・山下白雨〉さっきのはデカかったらしいからさっきより小型にしたで」
「ご主人様、愛してるアルーーーー」
「にゅーーーん」
なんか変な台詞と鳴き声が聞こえたがそれでやる気が出るなら今は良い。
サンサンの愛の告白みたいな捨て台詞を聞いたような。
ゼアミの「にゅーーーん」が一体何なのかは後で聞こう。
そして岩が轟音を打ち鳴らしながらT-34の方へ飛んでいく。
フォッガンッ‼︎
「アルッ」
「えっ?今の音って何⁈」
「なんか変な音と声が聞こえたんやけど」
本日二回目のサンサンの声と何かが金属音にぶつかった音がした。
ゼアミも聞こえているあたり空耳ではないだろう。
金属音と言えばT-34が持っていたあの棺桶に岩が当たったのかもしれない。
棺桶はああ見えて精密機械らしいので破損してしまったらいけない。
T-34が先ほどまで立っていて音源がした場所に行くと。
なんとさっきまであった頭部が消失し胴体だけのT-34が倒れていた。
胴体の横には愛用の棺桶が置かれている。
「Tー34が死んだ‼︎」
「このヒトデナシーーーーー!」
ゼアミがT-34の惨状を見てそう言う。
因みにサンサンは見つかったらしくゼアミの横にある飛んできた山の下敷きになっている。
無様に埋められた死体のように手だけが出ている状態。
いや、マジで何があった?
「こっちはサンサンが生き埋めになっているわ」
「サンサンは大丈夫や。ほっとき!」
「えっ、正気?」
マジ、と言っている顔をしながらもこちらを見てくるゼアミ。
大丈夫だ、サンサンがそんな事でやられるタマじゃない。
クリオネに食われて、幽霊から霊弾ぶち込まれて蛸に食われかけても傷一つ無かった娘だ。
今までの経歴振り返ってみるとやっぱり耐久力凄いな。
俺とゼアミの手で掘ってサンサンを掘り起こす。
「プハァッ、久しぶりの生き埋めだったアル」
「な!」
「な!じゃ無いわよ。出てこなかったらどうするつもりだったのよ?」
「いや、T-34に撃たれても大丈夫やったら大丈夫かなって思ったやけど」
ヘイシダコや岩が飛び散るほどの弾丸を弱めと言ったが浴びたのに喜んでいたからな。
そんな人間兵器が生き埋め程度で死ぬわけないと思っていただけだ。
「ご主人様、生き埋めになりかけたけど、私は元気アル」
「異世界版魔女の宅○便やめて」
そんな親への手紙に書くような台詞はやめてくれ、心に刺さる。
服が泥だらけになりながらも喜ぶサンサンだったが首だけのT-34を見て蒼白になる。
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