八話 知能指数UP
「そうかそうか。ゼアミちゃん、その楽器いらんのか。じゃあ俺が使ってやるさかい」
「はぁ、私の大事な大事な子である楽器を貴方にあげるわけないじゃない」
「手の平クルックルワイパー過ぎないか?」
いつも自分の楽器をボロクソに言っているのに俺が欲しいと言ったら自分の物と主張。
何故そんなにも俺に渡したがらないのかがわからない。
「ふん、背中で茶を沸かしておけるのは今のうちよ!」
「頑張ってことわざ使ってんのに意味が全然違うのって悲壮感が半端ないって」
正解のことわざに比べて身体の位置が真反対だぞゼアミ。
日本の首都をブエノスアイレス(アルゼンチンの首都)と言っているのと変わらない。
「知識マウントやめなさいよ」
「知識マウントも無いんやけど。お前のせいでこのパーティの平均IQが半減してんの分かる?知識指数が極低になるんだよ」
「私の知能レベルをギガントクリオネと同レベルと思ってない?」
「実際、受付嬢に単細胞生物並みって言われていただろ?」
「流石に食虫植物くらいの知識はあるわよ」
「植物と張り合ってて嬉しいか?」
単細胞生物から葉緑体の多細胞生物へと格上げになった訳だが。
ただ虫を食べる程度しか知能がない植物と同じなのに恥じらいを感じないのか。
本人が納得しているから良いのか。
「ふふふ、トキマサさんに教えてあげるわ。過去の記憶の扱い方について昔の上司から教えてもらった名言があるのよ」
「おう、左遷される前にお世話になっていた神様かいな」
「そうだけど、トキマサさん。嫌な記憶を思い出させないで。それは『過去を忘れろ目の前のものに集中しろ、そうすればショートケーキが美味しく食べられる』ってね」
「うん、どう考えても最後おかしいやろ」
「そうね、凝視してショートケーキを食べても美味しくならなかったもの」
「美味しくなる方がおかしいんやで、それは」
凝視してるだけで料理が上手くなるなら調味料なんて要らない。
そもそもショートケーキはそのままが美味い、特に苺。
久しぶりにケーキ類が食べたくなってきたな。
異世界の材料で作れるならサンサンやライカさんと作ってみるか。
「ちょっと記憶が曖昧だから違うかも、過去を忘れろって聞いてあるけど」
「しょうもない記憶は覚えているのに大事な過去を忘れたらダメだろ」
神界から左遷された事は忘れろっていたのにいつまで覚えているんだか。
そう言えばゼアミにはこの名言の片鱗が見え隠れしていたな。
筆の使い方は理解していなかったし、タコとイカの判別等指で数えられるな。
嫌な思い出は忘れるべき、過去の記憶なんて基本黒歴史だぜ?
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