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芸術は爆発だ!!  作者: ヒョーゴスラビア総統
一章 紙絵師による異世界冒険だ‼︎
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2話 宅配されたチート武器

「ケホケホ。何なのよ一体」


 土埃ホコリが舞い咳き込む俺たち。


 目の前には金で装飾された中型の黒箱がある。


「何なんやこれ。こんな大層なものを上空より落とせるのはさっきまでどった天界の者達しかいひんと思うし俺は最高神からの贈り物だと予想するけど?俺まだ最強武器貰てへんし」


 それに手錠も付けっぱなしだ。このままでは不便でならない。


「取り敢えず開けてみましょ」


 ゼアミは箱をスッと開ける。


 重厚そうにみえても鍵穴などは付いていなかった。


 先程の衝撃も何もなかったかのように整頓して中身は置かれていた。


 中には天界でゼアミに勝手に決められた最高武器らしい大筆一本と小筆十数本。


 そしてこれも同等の色であり青緑色と紅黄色で装飾が施されていた。


 四季の景色を想像させる連続階調グラデーションに花鳥風月の装飾が施された琴と三味線が置いてあった。


「おお、私の愛する神器達よ」


 そう言いながら琴と三味線を取り出す。


 調弦、調律のためか弦や糸巻きなどを触って調整。


 そして心地良く音色を奏でる。


 先程までの騒がしいゼアミが奏でられているとは忘れてしまうほど上手い。


「流石、音楽神と呼べるだけあるな」


「上から目線でなんて言い方。ふん、でも良いわ。今は気分が良いからその不敬見逃します」


 そう言いながら再度音楽を奏で始めた。


 やはり根は音楽神。楽器が神器なのは自明の理か。


 だが、神器を持って女神の風格を持ったのは何故か腹が立つな。


 なんでだろ。


 そう思いながら俺は大筆と小筆を取り出すとチャリンと金属音が聞こえた。


 箱の側には何かが入った革袋が落ちてあり拾って中を見てみると。


 なんと数十枚の白金貨が入っているではありませんか。


 そして手錠の鍵らしきものが金貨に埋まって入っていた。


「おいゼアミ見てみろ金貨や。金貨が入っとったぞ。やっぱり最高神様は文字通り最高やな」


 ささっと手錠を外して金貨を喜ぶ。


 RPGの中では初期の時点に資金が配られるのが定番。


 だが近年のRPGや異世界転生系ではそれらが無くなっていたのでこれは有り難い。


 だが俺の喜びへの返答は返って来ない。


 あの口うるさいゼアミが何も返答せず神器達を地に置いたまま肩を震わせる。


「おい何やってんねん。ゼアミ、何やったんか。まさか神器が不良品って訳やないよな?」


 流石に壊れた神器を渡してくるほど最高神はドSではないだろ。


「トキマサしゃん。これ見て」


 手に二枚の紙を持ちながらまたもや涙目になっているゼアミがこちらを振り返る。


 何なのこの女神。俺と出会ってから泣いてばっかりなのだが。


 本当に俺が悪いのか。


 突然の敬語と涙目で少し罪悪感を覚えながら紙を受け取る。


 紙にはこう書かれてあった。


 辞令



 ・神歴56819年満月ノ刻 印(押)

 ・文化神部 芸術神課 音楽神ゼアミ殿

 ・最高神 カミツナギノカミ 印(押)

 ・神歴56819年新月ノ刻付で文化神部 芸術神課の任を解き、異世界転生部 魔王討伐課の勤務を命ず。


 今後のご活躍をお祈りいたします。

 その大筆に付いている金貨は給付金であるためお使い下さい。



 以上


 もう一枚は手書きで描かれた初期街へ続く道の地図。


 その図はまるで小学生低学年が描いた作品のような抽象的な図。


 円と四角に文字を打ち込んだような大雑把な地図である。

 まさかとは思うけど最高神が描いて……ないよな。


「ちょいと待て。最高神の名前があまりにも有名すぎんか。カミツナギノカミって始祖三柱神の一人じゃねえか」


 誰でも知ってる大神霊中の大神霊。


 まぁそれは今置いといてだな。


 絵があまりにも低レベルすぎて世界観が分からない。


 方角どころか地名も分からないのだ。


 もう少しマシな方がいなかったのかよ。


 それにゼアミの辞令って。


 文化神部、芸術神課ってなんだよ。


 なんで部署、課所に分かれているの?


 最早ここまでくるとツッコミきれない。


 確かにその方が効率上良くなるけどさ。


 えっ天界って会社なの。


 神様の世界もそんなのだと少し引く。


 神様に辞令ってあるの?人事異動とかあるのか。


 ゼアミには悪いがこれは大学生である俺の将来の勉強とさせて頂くか。


 紙を見終わった後ゼアミを見ると大声で泣き出した。


「うあぁぁぁぁぁ。辞令よ。辞令。どうしよう。本当に異動させられちゃったわ。もう生きて帰れないわぁぁぁ」


 自身の神器である琴と三味線をギュッと持ちながら泣き叫ぶ。


 この女神は本当に泣いてばっかりだな。


 この後がとても心配なのだが。


「おいおい。横領や窃盗で懲戒免職されなかっただけでも感謝しとけよ。下されたものは変えられへんやろ」


「だから、違うって言ってるじゃん。私は借りたって言ってるでしょ、どうして誰も信じてくれないの〜」


 まだこんなことを言っているのか。


 確かにゼアミは盗んだとは一言も言っていないし、信じておきたいのだけどな。


 起きてしまった事は変えられないのが現象だ。


 だから今は動くことが重要だと思う。


 初期の街を見つけて身の安全を確保しなければな。


 この異世界にどのような生物がいるのかもわからない。


「とりあえず動くかゼアミ。初期街を見つけへんと何も出来へんし」


「貴方こんな状況によくそんな事言えるわね。こっちは意気消沈しているって言うのに」


「少なくともこっちは色々な事が起こって混乱しとるからな。突然死の宣言されて武器も勝手に選ばれて無能女神と一緒に異世界に飛ばされてもう頭パンクしそうなんやけど。自暴自棄になりそうやねん。やけど冷静になりながら異世界楽しもうとしとんねんで。だからさっさと立って初期街に行くぞ」


 地図を見ながらスタスタと足早に歩き出す俺。


「分かった。分かったから。だから置いていかないでぇぇぇ」

ご愛読いただいた貴方に圧倒的感謝を‼︎

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