街のスラムが膨れた理由です
グールの特徴をまとめると以下の通りらしい。
1、動く死体のように腐敗臭がする。
2、噛まれるなど接触すると数人に一人はグール化する。
3、人間のリミッターを解除した状態なので力は強く、動きも機敏。魔物化でもしているかのような身体能力。
4、毒竜の血や毒、古代の禁術『死霊術』などによって最初のグールが生まれる。
それを聞いた風見には微妙に引っかかるものがあった。
このグール事件、言うなれば映画やゲームのバイオハザードなどゾンビものにそっくりな事例だ。
噛まれて感染ということからもやっぱりウイルスを想像してしまうわけだが、
「毒竜の血や毒に魔法……じゃない。律法で感染ねえ……。しかも腐ったものが動くのか。うーむ」
風見はこのように頭を悩ませる。
グール化の原因はいくつかあり、さらには既存の感染症では当てはまらない律法での感染やら、腐敗臭がするのに動くやらといった要素があるのだ。果たして自分の知識が役立つのかも判らない。
「あの、何かおかしいでしょうか?」
「いや、正直に言うとよく判らない。ただ血とか律法とかウイルスとか、先入観を持っちゃいけないかなって思っただけだよ」
毒や魔法のようなものでグールが生まれるのはさておき、行動を操って感染を広げようとするタイプの微生物はいくらかいる。
例えば有名どころでウイルスが起こす狂犬病は神経を冒し、酷い興奮状態にさせるために何にでも噛み付く狂暴化を起こさせ、噛んだ相手にウイルスを付着させて増えようとする。
寄生虫でもそういうタイプはおり、こちらでは虫に寄生して日向や葉っぱの先などに虫を留まらせるものがいる。そうすることで鳥や、草を食べる大動物に虫を食わせて内に寄生する自分が感染してやろうという魂胆なのだ。
自分を何かに食べてもらって遠くへ運んでもらい、糞で落とされてそこからまたさらに広がろうとする発想は何も果実だけではない。
と、そこまではいい。
何かが感染して生物を操るのはまだありえる話だ。
けれど、腐ったものが実際に動くというのは奇妙な話である。
ゲームのゾンビも厳密に言うとウイルスに感染しただけの生者であり、前頭葉がやられて理性を失い、食欲だけとなった生物という設定だった。
しかしこちらは腐ったものが動いているという。
腐れば神経も筋肉もまともに動かないはずなのでそれは明らかにおかしいだろう。
ファンタジーなのだから魔法などの力でアリと言ってしまえばそこまでだが、風見としては気になることだった。
死霊術師とやらを除いて考えればこれは恐らく、感染症の一つ。でなければ接触で感染が起こるはずがない。
ウイルス、細菌、寄生虫、その他微生物が相手だろうとそれを動物が媒介するなら予防は医者でも清掃業者でもなく獣医の役割である。
「……まあ、今は考えても始まらないな。早く見つけて皆を安心させてやろう」
「はいっ!」
「はぁ。私まで巻き込まんで欲しいんだがね……」
夜のスラムで三人がアテにしたことはグールに付き物らしい腐臭だった。
風見とクロエは鼻がいいわけではないので路上で寝ている人に尋ねて調査しようとしている。
数メートルおきには人が転がっている状態で数だけは異常なほどいるのだが、それでも事は上手く運ばなかった。
スラムは元々衛生状態が悪く、ドブ川のような臭いもするので肝心の臭いは誤魔化されてしまうのだ。
だから普通の人間はかなり近くまで寄らないと腐臭を判別できない。
かといってリズのように鼻がいいと臭いの区別はつけられてもかなり神経に触るようで、すこぶる不快そうに顔を歪めていた。
酒場巡りや外歩きで弾んでいた尻尾も今は芯が抜けたように垂れている。
「……」
時折、何かを訴えかけるリズの視線が投げかけられる。
もうため息すら吐かない彼女はかなり不機嫌そうだった。
リズは途中途中で「なあ、帰らない?」と何度も言ってくるのだが、風見もクロエのことがある手前、よしとは言えなかった。
そんな答えは彼女も予想していたらしい。
風見が「無理っす」と答えるとふてぶてしくも従っていた。
いつもと違って従順な犬っぽいかわいらしさが見え、風見はちょっと撫でてなぐさめたくなってしまった。
決して、へたれた犬耳をくにくにしてやりたいからとかいう邪な考えではない。
「はぁ。クロエ、こんな格好で聞いても無駄だよ。スラムの連中は吹きだまった塊だ。よそ者は受け付けないし、はぶれ者も許さない。情報を得たいならバカを捕まえて金を握らせるのが手っ取り早い。それか半殺し」
「なんでうちの乙女どもはこんなに物騒なんだろうか……」
「し、しかしグールはみんなが嫌うもののはずですっ。なら自分達から言ってくれるものではありませんか? 誠心誠意を伝えてもう少し聞き回ればきっと――」
「ないよ。美談や物語の見すぎだ。そんなものを現実に期待するな」
リズはきっぱりと断言した。
これだからお嬢様はと多少の侮蔑も込められた態度にクロエはしょげてしまう。
正直なところ、彼女も期待薄だと勘付き始めていたので核心を突かれた気がしたのだろう。
周囲から注がれる視線が何色で染められているのか。
そんなもの、浴びれば誰だって判ってしまう。
「それはお綺麗な騎士様がすることじゃない。領主の私兵は下々のためには働かないさ。そいつらはこんなスラムの人間なんて気にせずグールごと皆殺しにするのが普通だよ。周りの連中もそう思っているからぼろにくるまって小さくなっているんだろう? まったく、あっちもあっちでグールになりたいのかな。どいつもこいつも現実を見ちゃいない」
「そっか。道理で俺達への視線がこんな風になるわけだな」
風見の経験で言えば保健所に保護されたペット――それも虐待の経験があるものはケージの隅からこんな視線を向けていた。
身を低くして見つからないように。
けれど相手が何をするか判らないから震えながらも決して目を離さないのだ。
彼らの近くにいるだけで危害を加えてしまったような罪悪感すらにじんでくる。
「やり辛いな……」
「で、でも、それならどうしましょうか……?」
「はあ。まったく、しょうがないね」
リズは変に同情して動けなくなっている二人にやだやだと息を吐いた。
彼女はつかつかと一人で足を進める。
しかし風見らが一向についてこないのに気付くとじれったそうな顔をして振り向いてきた。
「こっちだよ。あまり関わる気はなかったんだが地元の輩が群れている場所に案内する。こういうことの情報なら持っているだろうさ」
「え。そんな情報源があるなら早めに教えてくれたら良かったのに」
「あまり頼り過ぎは良くないんだよ。私ではなく、あっちにとってはね」
「あっち……?」
自分の足で情報を集めなければ技術が身につかない。そんな言い分なら判るのだが真逆の言葉だ。
風見は疑問に思うのだが、リズはそのままスラムのどこかへと向かっていくので置いていかれないうちにクロエと共に追った。
ほんの数分もして到着したのは倒壊した家屋だった。迷路のように密集した家の間に設置された倉庫か何かだったのだろう。
彼女は何を思ったかその残骸の中に踏み入っていくと、ちょいちょいと手招きをしてくる。
そして折り重なった柱をくぐって抜けると彼女は膝を折った。そこは砂利混じりの床以外に何もないと思われたのだが、彼女はこんこんと地面をノックする。
すると返って来たのは土の音ではなかった。
どうやら板の上に何かで砂を張り付けただけらしく、ほんの数秒もすると床下から突っ張り棒をどけるような音がした。
「梯子があるから降りるが、その格好だから下手なことを言うな。中にいる子供を刺激されても困る」
「子供……? てことは、隠れ家か何かなのか」
「そんなところかな」
頷いた彼女は床板を外すと梯子を使わずに飛び降りた。
見れば深さは四メートルほどあったようだが彼女は見事に着地して奥へと進んでいた。風見やクロエもそれに遅れないように降りる。
梯子の下には中学生になるかならないかくらいの子供が待ち構えており、警戒心のこもった瞳で風見らを見つめていた。
彼は何も言わずに梯子を上り、周囲を確かめてまた入口を閉じる。よほど知らない相手を招きたくないのだろう。子供ながら大した徹底ぶりであった。
「うおぉっ、姐さん! 姐さん、来てくれたんですか!?」
「うっとおしい、張り付くな。お前みたいなでかいのにまとわりつかれる趣味はない」
「もふぁっ……!? ひどいなぁ、もう。最近ご無沙汰だったから再会を喜んだだけなのに……」
追いついてみると青年――というにはまだ若い子供がリズに抱擁しようとしたが顔面を押さえつけられて拒否されたところだった。
その一方、リズの足元には数人の子供がお姉ちゃん、姉さんなどと様々な呼び方で張り付きにいっている。
「はいはい、久しぶりだね」とこちらは邪険に扱わずに迎えるあたり、露骨な差別が伺えた。尻尾を掴まれても特に何も言わないなんてカリカリしている普段とは大違いである。
少年はそれを少しばかり羨ましそうに見つめている。
かつては彼もあちら側だったのだろうか。
「……ええと。それで姐さん、こちらは? 隷属騎士ではないですよね?」
「見た目通りの神官と騎士とでも思えばいいよ。害はないから身構えなくていい。ほんの野暮用で寄っただけだ」
「人の良さそうな顔をしてますしね。ひとまずそういうことにさせてもらいます」
リズの言葉に納得していたものの、瞳には警戒心に似たものが残っていた。
この人もきっと他と大して変わらないんだろうと半ば諦めてみるかのような目は冷たさとは全く異なるものがある。
それに染まりきっていない子供の視線もあるが、外で受けた視線とよく似ていた。
「今日ここに来たのはスラムにグールがいると聞いたからだ。グールと共に周りも焼き討ちするのではなく、蔓延する前に感染源を潰そうと思っている。その……ヨーゼフとかいったかな? そいつの居所を調べたい。報酬は銀貨だ。受けるか受けないかはお前達に任せるよ」
「姐さんの頼みごとなら断れるわけがないじゃないですか。まあ、調べて回るだけならグールの相手をするわけでもないし、さくさくっとやってきますよ」
そう言った彼は視線で指示を飛ばすと子供の中では年長の部類に入る数人が外へと向かい始めた。
用件が済んだところでリズは風見に視線を戻してくる。どうやらここについて話してくれる気のようだ。
「私達は自分達の素性を隠して情報を洗いたい時はこいつらを使うことがある。あとは隷属騎士にどうしても埋められない欠員ができた時とかはここから人をもらうこともある。これらは親がいなくなった子供がつるんでできた集団でね、あまり関わっても自立ができんだろうから極力関わり合いにはなりたくないんだよ」
「ええー、そんなぁ。オレ達だって色々できるようになっているんですよ? 姐さんはオレ達をもっと徴用してくれていいんじゃないですか?」
「できることが私達側に傾倒したっていいことはないよ。良くて商人の小間使い。普通に行けば農民の養子にでもなればいい」
成長ぶりを認めてもらいたがる少年をリズはすげなく扱う。
裏稼業や傭兵業など、彼女らからすれば教えられる道もあるだろうが敢えてそこを外していくのには理由があるのだろう。
隷属騎士の団長として冷酷なこともあれば、こんな反面も持つ。だからこそ彼らにこんなに懐かれているのだろうか。
「とにかくこれが報酬だ。大切に使うこと」
彼女は懐から銭が入った袋を出すと少年の手に預けた。
だがじゃらりと明らかに枚数の多そうな様子に少年は戸惑いを見せる。
「ただの情報一つですよ? しかもオレ達なんかだったら銀貨一枚でも多いくらいだって言うのにこれは……」
「気にしなくていい。どうせ私には使い道がないし、”悪い人”から奪った金だ。それにここはまた子供が増えているじゃないか。お前はともかく、あれらにゴミなんて漁らせるな。なんなら身なりを整えて教会に行かせるなり、好きに使え」
相変わらず差別の激しい扱いだが、少年ははにかんで銭袋を握り締める。
そして感情のひとしおを噛みしめた彼はそれを全員の前に掲げ、こう言った。
「ようし、皆! 今日はこれで盛大に肉尽くしだぶふぁっ!?」
言った瞬間、リズに蹴られて近くの棚に顔面から突っ込んでいた。容赦のない一撃であったが、彼女はそれを冷たく一瞥すると部屋の奥へと歩く。
全員があちゃあと見遣る中、つかつかと彼女の足音だけが鮮明だった。
「調べがつくまで奥の部屋を借りるよ」
バカをした彼の介抱に走った少女が「あ、はい!」と代わりに返事をする。
余談だが、ぶっ飛ばされていてもあの少年はどこか嬉しそうな顔をしていたのは気のせいだろうか。
風見はそれを横目で見つつもリズに続く。
どうやらその部屋は不要になった木箱などを集め、ベッドや家具を作るための資材置き場兼、製作所となっている場所らしい。
リズは適当な木箱の上にどかりと座り込んでいた。
「彼らは親がいなくてもここで助け合いつつ、生きる術をそれぞれ見つけようとしているのですね」
「そうだね。だがああいうのが一番危ういんだよ。どういう形にでもすぐに転がっていってしまう。あれはまだいい部類で、スラムの人間なんてロクな末路じゃないさ」
クロエとしてはこんなしっかりとした共同体を感心の目で見つめていたようだがリズは違った。彼女はその裏を知った顔である。
そしてそんな彼女の視線は、つと風見に向かった。
「なあ、シンゴ。このスラムにはいやに住人が多いと思わないかな?」
「そうだな。家がある人以外に路上生活者がかなり多い気がする。こっちの日常は知らないけど、それでも少し多く感じるな」
「そうだね。”遠くから来た”シンゴは村狩りを知らないだろう? これはね、“猊下”のためにドニが起こしたことさ」
もしあちら側の部屋に聞こえるといけないからと配慮した風に彼女は言う。
「城の外へ出て色々と調べようとしていたみたいだけどね、大概はシンゴの想像で間違いはない。猊下は金づるだ。良い顔をしてみせて当然だよ」
「……やっぱりか。うん、まあそうだよな」
召喚の現場に、スラムの現状。
嫌になる現実にうんざりとした気分で風見は息を吐く。
社会の闇とかそういうものはどこにでもあると彼も重々承知していたが、ここは元の世界よりもずっと悪辣のようだった。
「無知は罪というくらいだから教えてあげよう。猊下の召喚に必要なものは召喚の術式を持つ者とブースター用の律法士の血だ。律法は技能者の血で威力が高まるんだが、そいつらは買うと高い。だからドニは領地の村を狩って奴隷を集めた。で、その中の使える者は隷属騎士とブースターになりました。そしてご覧の通り身内が奪われて生きる術がなくなったのはスラムへと雪崩れ込んだ。ね、いやに人が多いわけだろう?」
「そっか、胸くそ悪い話だな。神官のクロエには悪いけどドニもその猊下も、ここの人達にとっては大悪党か」
「そんなっ。それは猊下には関係ないことです!」
クロエは大きく首を振って反論した。
けれどリズは右から左へと聞き流して取り合わない。これはあくまで風見に向けた刃だから彼以外の反撃に興味はないらしい。
だから風見が「どうだかな」とクロエに反論するとリズは関心の瞳を向けた。
「正確には無知は罪なり、知は空虚なり、英知持つもの英雄なりって言うんだ。知らなかった。ようやく知った。たくさん知った。けどそれだけで終わったら何にもならない。英知ってのは物凄く偉いって意味だけじゃなくて、じゃあどうしたらいいんだろうって考える力のことも言うんだ。何もできていない猊下なんて英雄でもなんでもなく、そういうのの元凶でしかない。そういう意味で言うならドニとも変わりないんだろうな。そういうことは職業柄、よーく身に染みてる」
静かな彼の言葉には不思議な重みと説得力があった。
クロエのように彼がただの善人と思ったら大間違いだ。
彼は多くの動物を助けたし、殺してもいる。
医学を学ぶ間もそう。社会に出てからも全国の農場を守るため、民間人に病気を広めないために大なり小なり殺処分を経験するのは確実だ。
命を守ることはその反面、命を奪うことにも繋がる。ある意味、兵隊と一緒だ。
病院だけにいれば違うかもしれないが、もっと多くの数を相手をしようとしたら避けられない。
助けられるものと助けられないもの。それを選ばなければならない時は必ずある。
鳥インフルエンザのような病気が流行れば仕方ないと言えるかもしれないが、それでも殺していることは事実である。
命を扱う者ならそれくらいは心に留めておかなければならない。
「何が良くて何が悪いのかは考えないといけない。自分の為だけにやったらそれはただの虐殺だ。考えて、悩んで、どうにか正解に辿り着こうと足掻くことは忘れちゃいけない。守りたいものがあるから、守らないといけないものがあるからするんだ。猊下だけじゃない。過去の英雄だってそんなもんだったんじゃないかと思う」
彼の場合、殺した分は何かを生かしているんだと思うことで納得しようとした。
殺す量を少なく済ませられるよう、病気の発見と判別の研究を自分でも進めていた。
ゴールはない。誰もここがゴールとは言えない。
病院で勤務していたなら誰かがありがとうと言ってくれただろうが、公務員獣医の場合はもっと機会が少ない。
ただ、大を守るためには誰かがやらなければいけない仕事なのだ。
命の重みを知らない誰かに任せようとは思えない。それを知る自分がより良くしようと思いながら精進を重ねていくのが医学というものだろう。
「……はいっ、偉そうな言葉は終わり! 行動を何もしてないうちじゃ語るだけ価値がなくなりそうだもんな」
風見は場を苦笑で取り繕い、先程までの真面目さを相殺しようとしていた。
それを前にしたリズは鼻で笑ってしまう。
「まったく。締まらん男だね、シンゴは」
「はいはい、そうですよ。伝説と同じように見られたって肩身が狭いんだから仕方ない。俺はこれでいいさ」
いい感じだった。
風見はそのくらいの反応を期待してやったのでほっと息を吐き――その一方で、ぽけっと放心しているクロエを発見した。
彼女は胸の前で手を組んだまま時を止めていた。
「……えーと。クロエ……?」
「……あ。はい、……はい。大丈夫です、風見様」
「長歩きで疲れたんだよな? あー、でもグールのことがあるからまだ頑張ってくれ。もう少しだけな、もう少し」
思うように濁されてくれなかった強敵を前に風見は誤魔化しの笑みを浮かべようとしたが、それは顔の筋肉が引きつるのみで終わってしまった。
するとクロエはそんな彼に向って「あの」と小さな声を出す。
「……お慕いしています、風見様」
「お、おおう。ありがとう。……でもなんで急に?」
「想いが届いていたからです」
クロエがどのような想いを込めて異世界からのマレビトを望んでいたのか知らない彼としては判らない言葉だった。
けれど彼女は胸の内にこもっている感情を満足そうに抱き、熱っぽい吐息を外に逃がしていた。
(リイル様。やはり風見様は本当の猊下です)
どうもクロエにとっては先程の言葉が心に響いたらしい。
こうして、風見の知らないところで信仰心は一層に厚くなるのであった。




