ホテルにて
「今日はお疲れ様でしたー」
「お疲れ様戸村君」
ホテルの食事はビュッフェだったので、テーブルを二人で囲んで少し小さめに今日のお疲れ様会を行う。
てか食べ放題でもないと普通に満腹にならないので自分で選んだんだけど。
無効化ダンジョン初日。
まずは試しで潜り、実際にスキルが使えない状態がどれほどなのかを確かめる。
それは非常にうまくいったと言えるだろう。
最後の方では完全に体をあの感覚に馴染ませることが出来た。
それが思ってたより早く終わったので、そのまま頼まれた鉱石の採掘に向かった。
釧路冒険者支部支部長・・・澤田さん曰くその鉱石は掘りやすく分かりやすいとのこと。
鉱石が見つかるのは三階層から下。
厳密に言えば武器として使えるレベルの鉱石がそこから下にある。
モンスター自体は特に問題もなく倒せ、順調に進む俺達。
そしてついに鉱石を発見!!
「・・・明らかにこれだけ色が違うんですけど」
「・・・目立ってるねこれ」
普通鉱石採掘って言うと、鉱脈だかを見つけてそこからピッケルで岩を削るイメージ。
岩やらなにやらが混じった物を手に入れて、それを後でまた精錬したりと作業がある。
でも俺達の目の前に現れた鉱石はそういう奴じゃなかった。
なんかもう・・・鉄むき出しだった。
「え、これ削るの?」
「ピッケルより違う方が良いですかね」
あまりにも大きい塊だったので、ピッケルではなく闇夜の爪を使用して根元から切った。
ちょっと大きく切りすぎたので日坂さんの鞄に入る様に後で細かくする作業は必要だったが、思ってたより時間は掛からなかった。
他の場所の鉱脈を探そうと歩くと、これまた思ってたより見つかる見つかる。
なので本当に時間も掛からず、夕方になる前にはかなりの量が回収できた。
それを持ち帰ると、澤田さんも大喜び。
どうもこの人、やっぱり普段は自分で潜って採掘しているらしいのだ。
でも一人しか潜れる人がおらず、時々他所からヘルプも来るがそれでも足りない。
人が来ないのは本部のせいなのでそれで怒られることは無いが、仕事をしている身としてはやはり心苦しく思っていたんだとか。
しかし。今回俺達が持ち帰った量は澤田さん三十人分にも及ぶ量だそうで。
これだけあれば暫くは余裕が出来るんだとか。
ちなみに採掘方法を伝えたら澤田さんの背後に宇宙が見えた。
あれが宇宙ネコか・・・
そんなことがあって、後は時間も微妙なので予約したホテルに直行。
予約自体は協会がリストアップした一覧から高くて食べ放題の所を選んだ。
え?何で食べ放題が必要なのかって?
普通の食事で今の俺が満足するわけないでしょ。
「でもそのパスタの盛り方は流石にあれだと思うよ?」
「そうっすかね?」
最近はずっとこんな盛り方だからなぁ。
あ、ローストビーフ持ってくるの忘れた。
「ところで戸村君」
「はい?」
「今日鉱石取ったけど、明日はどうするの?」
「一応取る予定ですけど・・・どうかしたんですか?」
「ちょっと調べたんだけどね?もしかしたら取る鉱石はもっと下の方が良いかなって思ったの」
「ほう?」
下に行くほど良い鉱石が手に入る。
それ自体は前もって聞いていたので知っている。
でも何でもかんでも下の方が良いというわけでもないらしい。
魔力との相性がいいとか。めっちゃ硬いとかいろいろ性質があるんだとか。
なのでもし装備をそれで作りたいなら、自分の要求に応じた物を選んで取らないといけない。
日坂さんがその提案をしてきたということは、下には俺に合いそうな鉱石があるってことだよな?
「いくつか候補があるんだけど。聞く?」
「もちろん」
「じゃあ先にお料理持ってこよっか」
「ウッス」
話を聞き終わる前に食べきっちゃうと食事があれだからね。
本当は良くないんだけど、全部食べ切るから許してほしい。
一通りメニューをテーブルに並ぶと、鉱石の話を聞く姿勢が整う。
「まず六階層の鉱石からだね」
「・・・ぉぐ」
「あ、返事はしなくていいよ」
「・・・」
最近日坂さんが俺の扱い分かってきたなって感じがすごい。
「この階層は魔力との相性が良い奴で、魔法銀・・・ミスリルが取れるんだって」
ミスリル・・・あれか。よくゲームに出てくるあれか。
魔法との相性が良いなら闇夜の能力とも間違いなく合うはずだ。
でもミスリルってあんまり大きな武器に使いイメージ無いんだよな。そこはどうなんだろうか。
「実際銀だからあんまり戸村君向きではないかもね。でも魔法との相性はぴかいち!」
ふーむ。つまりメインで使う鉱石としては選びにくいというわけか。
でも使えば魔法との相性は間違いなく良いんだから、例えばアクセサリーとかにして持つだけでも効果があるかもしれない。
「次の方が戸村君の好みかな。八階層の鉱石で、重力鉄って名前だって」
「・・・ゴクン。聞いたことないっすね」
「うん。ちょっと特殊な鉱石らしいんだ」
その鉱石自体が特殊な磁力を帯びているらしい。
それが魔力に触れると重量が増すそうだ。
俺向けと言ったのはその重さの部分だな。
でも魔力を籠めなければただの鉄とそこまで変わらない様なので硬度って点では注意が必要かもしれない。
俺結構雑に扱うからな。硬い方が色々とありがたい。
「あとは九層と十層なんだけど・・・これはなぁ」
「???」
「あのね。この二つの階層の鉱石って実はまだほとんど手に入ってないみたいなんだよね?」
「・・・?」
「一応戦闘の余波で少しだけ削れた物があったらしく、それを調べたりはしてるそうなんだよね」
ほぉ。じゃあまだその二つの鉱石は性質が分かっていないのか。
・・・と、思ったけどどうやら違うらしい。
「この二つ・・・特に十層の鉱石なんだけど、そっちが多分一番戸村君向けなんだよね」
僅かな欠片を調べた結果、その二つの鉱石についてあることが判明した。
特に十層の方だが、恐ろしく硬く重いらしい。
魔力などが関係なく。ただただ頑丈な金属。その特徴的な木目の模様から名付けられた名前は『Dダマスカス鋼』
DはダンジョンのD
「全体的に折れづらいから乱暴に扱っても大丈夫・・・って予測らしいよ?」
「ふーん。魔力とか一切関係ないのは良いですね」
正直戦闘中に重さを変えられるとかは面白いとは思う。
でもそんな面倒なことしたくないわという気持ちもある。
だって最初からパワーで殴れば良いだけだし。
そう考えるとやっぱり俺に合ってるのはDダマスカス鋼か。
でもどうしてこれがほとんど採掘されてないんだ?
「普通のピッケルだと取れないんだって。硬すぎて」
「なら他の奴・・・は無いんですか?」
「ドロップ装備で削ったこともあるらしいんだけど、あんまりうまくいかなかったんだって」
「ほー」
そうなると確かに普通に手に入れるのは難しいな。
爆破して取るとかそのくらいか?
俺ならワンチャン闇夜の爪でやれるかもしれないけど・・・てか日坂さん的にはそれが前提の提案か。
「全部取るのって出来ます?」
「出来ると思うよ。別の鞄は必要になると思うけど」
「む。あんまり負担になるようならあれですね」
「え~。空の鞄持つだけだから大したことないよー」
まぁ中身の重量を感じない分持ってる側は楽なんだろうけども。
見てる側からすると大きな鞄背負ってる小さい女の子なんだよなぁ。
しかも隣にいるのは大柄な筋肉質のヤロウと来た。えっぐい。
「何作るのかで必要な量は変わると思うけど・・・あ、そういえば何が欲しいの?」
「んー。特にこれと言った希望は無いんですよね」
「前はゲームと同じのが良いーとか言ってたけど」
「まぁ代用品は手に入ったので」
『闇夜』力の一つである魔力爪。
ゲームで俺が使ってる武器・・・『モンスターアーム』によく似ている。
でも結局大本が鎧なので完全に同じではない・・・まぁ十分ではあるんだが。
俺が今欲しがってるのはそれ以外の武器の話だ。
ゲームなら自分が戦える最強状態ですべてをなぎ倒す。
それが出来るシステムだし、俺も努力をしている。
だが現実ではそうもいかない。
俺が努力するより別の武器を用意する方が楽な場合はよくある事だろう。
そういった時に備えて、何か俺が自由に使える武器が欲しいとそういう話である。
二十六層で悩んでた時のあれは『闇夜』で解決したからな。
「まぁ敢えて言うなら・・・打撃武器?」
それでもあえて希望を言うなら打撃武器が良いとは思っている。
爪で斬る攻撃は出来るからな。
どうせも一本持つなら爪では出来ない事が出来る武器が良い。
そういう点では、やっぱりゲームの『モンスターアーム』は俺に合っている。
あれは爪での斬撃攻撃、握ることで打撃も出来るからな。
臨機応変。俺の感覚に従って複数の攻撃が可能なのは強い。
あれはあれで間合いが短いのは欠点なんだが・・・そこはまぁどうにでもなるしな。
「やっぱり大きいのが?」
「それはもちろん」
「戸村君本当に好きだね」
まぁ個人の趣味ってのは否定しないが、それ以上にやっぱり肌に合うのだ。
レイピアとかも使った経験はあるけど何か違うというかなんというか。
あれらを使って強者に勝てる気が全然しなかったのだ。
日坂さんは俺の希望を聞くと何かを考えてこう言った。
「うーん。だったらやっぱり鞄は三つくらいいるかなぁ」
「え、そんなに必要なんですか?」
「実はここに来る前に浮島さんにある情報を教えてもらってたの」
「もしかして装備関連?」
「うん。これくらいの大きさの武器を作るなら鉱石がどれくらい必要とかいろいろね」
成程。もしかしてこれも含めて特殊冒険者の課題は『無効化ダンジョン』なのか。
鉱石が手に入るダンジョンはいくつかあるが、その中でもここのダンジョンは最も質が良いとされている。
特殊冒険者と言う今までとは違う世界へ一歩踏み入れるのなら、装備もそれ相応な物にすべき。
ならこのダンジョンで良い鉱石を手に入れ、装備を整えるべきだ。
その手間やコストを解消するための試験。その為の『無効化ダンジョン』
そう考えると非常にしっくりくるな。
「でもそうなると日坂さんの装備も整えないといけない様な」
「あ、私は協会がくれるから大丈夫だよ」
「え」
「まぁほら。私スキルの問題もあるし」
「なるほどね?」
恐らくだが。日坂さんが魔道具を使用した状態で隠れた場合。
俺無しでもダンジョンの結構深くまで潜れるはずだ。
もちろん戦えないからドロップ品は得られないが、環境から手に入る物に関しては入手可能。
それすらしないでただ上に戻るだけと言うのなら、もっと簡単に出来るだろう。
だから全力で協会側が日坂さんを援護している。
万が一俺に何かあっても一人で戻ってくるために。
「桜木さんみたいな協会所属の人たちが手に入れた、生存重視と隠密重視の装備くれるんだって」
「はぇー・・・ん?くれる・・・?」
「うん。日常でも逃げられる様にって」
「あー」
あんまり実感無かったけど、やっぱり日坂さんって超重要人物だよなぁ




