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電脳狂戦士 現代ダンジョンに挑む  作者: saikasyuu
電脳狂戦士 指導する
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竜に挑む

次回より新章

アークオリンピアでの日坂さんの指導はおおむねうまくいったと言える。

流石に一回だけでは意味が無いので、これからも続けていく予定ではあるが。

あとミツハネに出会えたのは割と運が良かった。

彼女が大楯を使っているから、試しに使い方などをまとめてほしいと言ったら快諾してくれたのだ。

お陰でまた日坂さんに教える際の教科書が増えた。


そんな風に日々を過ごしているが、別にゲームばっかりやっているわけじゃない。

折角の夏休み。一日中自由に時間を使えるこの期間を逃すわけにはいかない。


そんな俺達がやることは・・・








当然の様にダンジョン探索だった。


「はい天ぷらどうぞ」

「いただきまーす」


ダンジョン三十層。

ボス部屋の前で、戦いの前の腹ごしらえ。

闇夜の力を使い二十六層を強行突破。

その後も似たような形で三十層まで一気に歩を進めることに成功していた。


そしてついに、今日ボスに挑む。

でもその前に食事の時間だ。腹が減っては戦は出来ぬ。


天麩羅の揚げたてのいい香りが鼻をくすぐる。

まさかダンジョン内でこんなものまで食べられるとは。


「まさか一式持ってくるとは」

「戸村君には頑張ってもらわないといけないからね!」


予め下準備したものを鞄の中に入れて、ボス部屋前で調理するというまず他の冒険者じゃ出来ないやり方だ。

こればかりは日坂さん印の鞄を持っていてもなかなか出来ないことだ。


海老、鱚、人参、ナス、ピーマン、玉ねぎのかき揚げなど様々な種類がある。


「うーん美味しい」

「全部ダンジョン産の野菜で、油もダンジョン産!」

「これでヘルシーってんだからやばいっすよねぇ」

「お蕎麦もあるよ!」

「いただきますー」

「召し上がれ!。あ、桜木さんもどうぞ遠慮なく食べてくださいね」

「あ、はい・・・はて、ここはいったいどこの料亭・・・?」


そして今日は桜木さんも付いてきている。

別に前の時みたいにこちらから同行を頼んだわけではない。

むしろあちらから頼まれたのだ。三十層のボスと戦うなら同行させてほしいと。


まぁその桜木さんは今日坂さんによって用意された昼食に驚いているけど。


「え、お二人はいつもこんな食事を?」

「鞄に入るようになってからは大体そうですよ」

「コンロとかも入ってましたが」

「あ、これは最近貰った物なんです。協賛企業が増えたおかげで」

「ああなるほど」


今回使用したコンロはダンジョンでの使用を前提とした物だ。

ダンジョン内でも温かい食事がしたい。そんな冒険者は結構多い。

でもダンジョン内に持ち込むものとしては嵩張るし重い。あとボンベも別で必要と使い勝手が良くない。


そこでとある企業は考えた。

ダンジョン内である物を使用して火を付けられればいいんじゃないかと。


「でもやっぱり便利だなぁ魔力式コンロ」

「魔石をセットするんですか・・・この紋様が魔法陣ですか?」

「はい!別の火をつける魔道具を参考にしたそうです」

「なるほど。これの文字と魔石だけで良い分コンパクトなんですね」

「らしいですね。私もボンベを持ち込むのはどうなのかなぁって思ってたので丁度良かったです!」


ちなみに七瀬スポーツがメインとなっているダンジョン関連の協賛企業が増えたのはちゃんと俺達二人の活躍のお陰だ。

俺は豊宝竜の木材(竜一匹分)

日坂さんはスキルの変化による効果付与で自分意外(以外)でも鞄を広くした状態で持てるようになったこと。

この二つが大きく、七瀬スポーツのダンジョン課はそれはもうとんでもない利益を上げている・・・らしい。

細かいことは知らないが、とりあえず株価はものすごく上がってるらしい。

もちろん元々協賛している企業も同じく。

七瀬スポーツは今最もダンジョン関係で成長した企業になったと言える。


昼食を食べ終わり、少し休むとついにボス戦だ。


「片付けは日坂さんだけがやるんですね」

「???。戸村君は戦うから当然じゃないですか」

「・・・手を出すと泣かれるんです」

「な、泣いてはないよ?」

「ああ・・・」


何か相変わらずだなこいつらみたいな目で見られている気がする。


「んじゃ行きますけど、本当に見るだけでいいんです?」

「今日は戦力調査が目的ですから・・・はぁ面倒な」


せめて本音は隠そうよ桜木さん。


今回桜木さんが同行した理由は、まさに戦力調査が目的だ。

対象はもちろん俺。


『闇夜』を手に入れ、少し時間が経った俺がどれだけ戦えるかを協会は把握しておきたいらしい。

確かに魔法の使い方だったりも学んだので実力はまた変わっているだろう。

それに三十層のボスは一人で戦うのなら非常に戦闘力を測りやすいはずだ。


あと個人的にやってみたい事もあるんだが・・・それはまぁ余裕があればだな。


準備も出来たところで、俺を先頭にボス部屋へと突入する。

最後尾の日坂さんが扉を閉めるとすぐに部屋の中心が輝きモンスターが出現する。


同時に部屋の様子が一変する。

土壁に覆われた一室から、空が見える吹き抜けの神殿の様な所へと変化した。


「では我々は下がりましょうか」

「戸村君頑張って!」

「あいあいー」


三十層ボス、ランドワイバーン。

空を飛べない竜種だが、その実力は竜種に相応しい。

三十層までに存在するモンスターでは全く歯が立たない程の力を持っている。


さらに魔法への耐性。しっかりと装備を固めた上でも耐える事の出来ない攻撃力。

今現在人類が確認しているモンスターの中でも五本の指に入る強さを持っていると言っても過言ではない。


だがまぁ・・・


「竜狩りには慣れてるんだよなぁ!!」


空も飛べねぇトカゲモドキに負ける気は無いんだよねぇ!!


















冒険者歴約五か月。

目の前にいる少年がそうだと聞いた時、信じる人間がどれだけいるだろうか。


ワイバーンの爪を自分の爪で受け止め、巨体から繰り出される体当たりを正面から迎撃する。

そんなことをいとも簡単に熟す彼が、冒険者として半年未満?

一体どんな冗談だと。


「ハッハッハッハ!!ほらほらどうしたぁ!!」

「■■■!!」

「■■■!!!!!」


ワイバーンの咆哮が空気を揺らす。

対抗するように少年もまた叫ぶ・・・いや『嘶く』

衝撃が互いの中心点でぶつかり相殺し合う。


もし仮に、あそこに自分がいたとして同じことが出来るか。

まぁ無理だとすぐに理解する。

前提として、自分はあのような力押しの戦いには向いていない。

スキルの構成も武器も、自身の性質自体も。


だが仮に。仮にだ。

もし自分が力押しの戦いをする存在だと仮定した場合・・・あれが出来るか。

冒険者として登録して約五か月で。

学生という身分の時間の限られた状態で。


答えは分かり切っていた。


ワイバーンが怒り狂ったかのように両の爪を何度も目の前の敵に振り下ろす。

対して少年も同じように狂ったかのように己の鎧から生えた刃を振るう。

初めは拮抗していたぶつかり合い。

だが徐々に均衡は少年側に傾いていく。


「一本!!」

「グギャ!?」


ついに少年の刃がワイバーンの体に届く。

鱗を貫き、消して浅くない傷跡がワイバーンの肉体にくっきりと残る。

だがそれを少年が確認すると、一度距離を取る。


「ああクソ。またミスった」


何か不満だったらしい。

自分の眼から見ても今の一撃は理想のそれだったように見える。

頑強なワイバーンの鱗は、自身のチームメンバーで最もパワーのある男ですら一撃では砕けないというのに。


「もっと鋭く・・・もっと早く・・・もっともっと」


何かを少年が呟くと、彼の気配が徐々に鋭くなっていく。

この気配には覚えがある。

豊宝竜に彼の大事な人が攻撃されたとき、鎧蜘蛛に追いつめられたとき

そして・・・鬼を殺したあのとき。


まだその時よりは薄い気配だが、間違いなくそれに近づいていた。


「さァ・・・もっトヤろウ」


瞬間、彼の姿が消える。

まだ何とか目で追える速度だが、気を抜けば一瞬で見失うだろう。

そしてエンチャントが施された鎧が、彼の攻撃と同時に黒い斬撃痕を刻み込む。


もはやワイバーンは彼に置いてかれている。

肉体が斬られた時にそちらに顔を向けるが彼は既にそこにはいない。

そうして何度も何度もワイバーンの体が切り裂かれ、ついにその時が来る。


「おワリィ!」


ワイバーンの首に黒い刃が食い込む。

だがワイバーンはまだ諦めていないのか、近づいてきた彼に向けて顎を開く。

あれを食らえば、いくら彼でもマズイ。

一瞬動くべきかとも思ったが、すぐにその考えは否定された。


「アァ・・・大人しくしてロッテ」


開かれた顎に逆に腕が突っ込まれ、そこから刃が生えワイバーンの体内を貫く。


「ガッ!?」

「首貰うぞ」


少年の立っている地点に亀裂が走る。

そして刃をさらに食い込ませながら体を力強く捻る。


するとワイバーンの首が徐々に悲鳴を上げ、ついには完全に胴体から離れた。


「あいー・・・取ったは良いけど要らねぇなこれ」


捨てられたワイバーンの首はすぐに消える。残った肉体も同じく。


三十層ボスのランドワイバーン。

多くの冒険者が挑むことすらしない強敵が、今立っている一人の少年によって倒された。

危険度だけで言えば豊宝竜よりはるかに上の怪物が。


だがそれは、こちらとしても予想通りの出来事であって驚きは無い。

しいて言うならば、彼に余裕がありすぎることは想定外だが。


彼は明らかに手を抜いていた。

真剣には戦っていたが、何かを試すように戦っていた。

それは恐らく彼が先に言っていた試したい事があるという話の事なのだろうが、詳しくは聞いていない。


何故か。聞いたら後戻りできない様な気がしたからだ。

主に被害担当として。


「お疲れ様戸村君。はいタオル」

「あざっすあざっす。いやぁランドワイバーン君は強敵でしたね」

「え?強かった?」

「まぁほどほどに」


あれでほどほどかと、桜木は内心で呟く。

やはり強い。強すぎる。

元々すさまじい速度で強くなっていたが、先日の特殊個体との戦闘から異常な程に強くなっている。


経験値を独占しているからとかそういう強さではない。

一挙手一投足が、先月までの彼とはまるで別人だ。

動き自体は変わっていないはず。ただその質が上がっている。


ガブガブと渡された水筒の中身を空け、軽く汗を拭う戸村宗次。

一体彼に何が起きているというのか。


「お疲れ様です戸村さん。完勝ですね」

「そうっすかねぇ。俺的には最初の一撃で決めたかったんですけど」

「それが出来てしまえばもう文句なしに最強を名乗れますよ」

「・・・そうっすかね」


だが彼にもかわいらしい部分はある。

今の様に最強だと彼に伝えると微妙そうな顔をするのだ。

これは彼の持つ目標。超えるべき存在がしっかりと存在してるからだろう。

そこに届いていないのに、最強と言われてもしっくりこないといったところか。

佐々木あたりが見たら満足そうに腕組んで頷きそうだ。


「ところで箱は開けなくていいのですか?」

「あ、そうだった。じゃあ日坂さんお願いします」

「分かりましたー」

「ん?戸村さんは開けないのですか?」

「俺運無いんで」


そういえばそんな報告も上がっていた。

彼は自分の運が悪いと思っていると。こちらから見たら十分幸運だと思うが。

だがまぁそう思ってしまう気持ちも理解は出来る。


何せ・・・


「あ、なんか武器出たよ!」

「え?何すか!」

「えーっと・・・棒?」

「・・・あっそうっすか」

「うわぁ」


ボス部屋の報酬で手に入る武器は総じてドロップ装備であることが多い。

見た所今箱から出てきたこん棒はまさにドロップ装備だろう。

別のダンジョンで同じ武器を使っているモンスターを知っている。そこまで強くはなかったが。


それでも売ればそれなりに大金が手に入る。

冒険者なら両手を上げて喜ぶはずなのだが、彼は一瞬で興味が無くなったらしい。

すぐに他には何かないかと箱の中身を見始める。

まぁ豊宝竜の存在で一財産築いた彼からしたら、もはや金銭はあまり興味を惹かれないものなのだろう。


「あ、桜木さんのお仲間で使う人います?」

「・・・もしや無償で渡そうとしてます?」

「え?はい。お世話になってますし」

「お願いですので普通に市場に流してください」

「あ、はい」


そしてこの少女・・・日坂巡も地味に価値観が壊れている気がする。

間違いなく彼のせいだし、それで何かあるわけではないので微妙になんとも言えないのだが。


「あー。別の強化スキルとか欲しいなぁ」

「戸村君まだ強化スキル欲しかったの?」

「そらまぁ。まだゲームに追いついてないですし」

「えー。この間結構近づいたって言ってなかった?」

「闇夜のお陰で大分能力は上がりましたけど、1が10になった程度で100には遠いんですよ」

「あー。ゲームの中の戸村君ものすごいもんね」

「そうなんですか?」

「はい!動画で見るのとは全然違うんですよ!」


何でもゲームの中の彼は本気で動くだけ周りに被害が出るんだとか。


「地上走るだけなら音速出てるっぽいんで俺」

「どんだけですか」

「まぁ近づいたんで大分動きやすくなってきましたけどね」

「・・・成程」


どうやら彼が急速に強くなった理由は、ゲームが関係しているらしい。

また信じられない様な話だが、これが本当なのだから手に負えない。


要するに、本来の彼・・・ゲームの能力に現実が追いついたお陰だと。

元々何度もやった戦闘スタイルに近寄ったことで、彼自身の動きにキレが増したのだと。


「でも逆にゲームの方で進捗がなぁ」

「そっちも気長にやるしかないんじゃない?」

「そうなんですよねぇ。まぁ戦闘経験自体は溜め込めたんで、後は詰めるだけなんですけど」

「目標には、届きそうなのですか?」

「いやー・・・いかんせん肝心なところの経験がねぇ」

「肝心な部分?」


頭を掻いて何か恥ずかしそうな顔で彼は言う。


「いやね?腕の良い剣士との戦いがしたいなって」

「・・・それは」

「なんで今の目的は四十層なんですよ」


彼の言いたいことは理解できた。

なるほど。確かにあそこには腕の良い剣士がいる。

良すぎて正攻法での突破は、我々も出来ていないレベルの剣士が。


この時点で、報告書にある一文を追加することが決まった。

という書かないと後で面倒なことになりそうだ。


「でもその前に私をどうにかしなくちゃ・・・」

「日坂さんを?」

「姿を隠せる道具が欲しいんですけど・・・売ってなくって」

「・・・成程。了解しました」

「え?」
























戸村宗次に関する報告書


通常ダンジョン三十層までのモンスターでダメージはゼロ。

相性が悪くとも突破出来るだけの力があると判断。


また初見のモンスター相手でも問題なく対処可能。

ゲーム内での経験が活きていると考えられる。


感情の制御の点については懸念点はあるが、それは彼の強さにも繋がっているので無視しても問題なし。


総じて、彼の戦闘力は既に日本全体で見ても最上位に入る。


よって冒険者協会デルタチームから、新たな『特殊冒険者』として推薦する。


また同時に、彼の強さにも関わる為『姿を消せる』魔道具の譲渡を提案する。


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― 新着の感想 ―
[一言] 蒼君・運が悪い(特殊モンスターと出会う悪運が良い) 日坂さん・運が良い でいいんですかね…宝箱から武器が出る確率はいかほど? というか日坂さんが彼女というよりオカンに見えてきた件
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