討伐隊+α
安田記念外れたので禊がてら・・・何故自分は素直に三番人気を軸にしなかったのか・・・
「お願いします。私も連れて行ってください!!」
「えーっと」
「うむ・・・」
「ちょっとまひるっち!」
「あまり迷惑をかけては・・・」
奥多摩の食物ダンジョンの隣に用意された冒険者協会の建物。
そこは主にダンジョンから帰った冒険者たちの休憩スペースとして用意されたもので、
下手なホテルなんかより施設が整っているとよく言われている。
そこの一室で、協会から派遣された冒険者チームに頭を下げて何かを頼んでいる少女がいた。
遠島真昼だ。
「えっと。遠島さん?大丈夫ですよ。戸村君は最悪引きずってでも連れてくるので」
「お願いします。私も、私も・・・」
「えー・・・ど、どうしましょう桜木さん」
「・・・そうですね」
今回の特殊個体の出現を受け、すぐに冒険者協会本部は冒険者チームの派遣を決定。
すぐに動けて実績も実力も十分なチーム。
つまり桜木のチームが今回の件で動くことが決まるまでそう時間は掛からなかった。
そして連絡を受けて一時間ほどで奥多摩のダンジョンへ到着。
現場にいた桜木の知り合いである日坂から戸村宗次が現場に残っていると聞いて彼女の同行を要請。
モンスターの正体は分かっているが、何があるか分からない為準備は可能な限り完璧に近づけたかったからだ。
さらに言うと、もしもの場合に備えて戸村宗次を下がらせる時には彼女がいた方が良いと判断された。
その時、同じ場所にいた遠島が自らも付いていくと言い始めた。
彼女の対処に、彼らは今時間を取られていた。
「そうですね。正直言えばついてくること自体は構いません」
「桜木さん!?」
「どうせ現場についたら日坂さんも下がってもらいますし、その時に一緒に下がるのならという条件付きではありますが」
「じゃあ・・・!」
「ですが」
「ッ」
「一つ、確認したいことがあります」
「確認、したいことですか?」
「ええ。何故、貴方は我々についてくるのですか?理由を教えてください」
意外なことに、桜木は遠島の同行を許可すると言った。
これは本来ならばありえないことではある。
だが日坂という、本当は協会所属ではない人間に同行を依頼している時点でもうニ、三人くらいなら変わらないだろうと桜木は考えていた。
背後で佐々木と別のメンバーはダメに決まってるだろといった顔をしているが特にそれを言い出したりはしない。
実際来られても、守り切る自信があるからだ。
決して桜木を怒らせることにビビっているわけではない。ふるえてなんかいない。
そんな桜木だが、出した条件は意外なものであった。
いや。ある意味で必要な物だったのかもしれない。
遠島は、まだ何故討伐チームに付いていきたいかを話していなかった。
条件を聞くと、少し話すのを躊躇うようなふりを見せる遠島。
だが言わない限り自分が彼女達についていくことが出来ないとすぐに理解した。
「・・・私のせい、だからです」
「まひるっち・・・」
「まひるさん・・・」
「いや。いやいやいや。それはないですよ遠島さん?」
「あまり詳しい事情は聴いてないですが、それは彼がこのダンジョンにいる理由の話ですか?」
「っ。は、はい」
本来戸村宗次と日坂巡の本拠地。
一番長く潜っているダンジョンは地元の駅にあるダンジョン。
この奥多摩に存在している食物ダンジョンではない。
少し前にも来ているが、それはクエストを受けたから来ただけ。
冒険者は基本どこのダンジョンに行っても良いことになっているが、大体は一部のダンジョンにのみ挑む。
それは自らの経験やモンスターとの力関係を把握しやすいからという理由がある。
そんな中で、彼らが今日このダンジョンにいたのはどうしてか。
そう。遠島達が頼んだからだ。
それもクエストでも何でもなく、ただの興味と欲が理由で。
だからこそ、遠島真昼はこう考えてしまった。
戸村が危険なモンスターと戦っているのは、自分のせいだと。
「いる理由はそうですけど、戦うの決めたのはそもそも戸村君で・・・」
「許可したのは日坂さんですね?」
「はい。だから遠島さんが思うことなんてなに一つも」
「それでも!」
「・・・」
「それでも・・・ここに来なければ戸村は・・・」
今遠島の心にあるのは、罪悪感と情けなさだ。
今日じゃなければ。今日ここに来たいと言わなければ。
それならば少なくとも戸村が自分で危険に赴くこともなかっただろう。
そうでなかったとしても、自分がもっと強かったら。
彼を一人にしなくて済んだのに。
彼女は決して、今は冷静ではない。
他人からしたらこれはお門違いな考えだ。
何せ戸村は彼女達と一緒にここに戻ることが出来たにも関わらず、自分で選んで戦いにいった。
その時点で他にどんな理由はあれど、彼女の責任は存在しない。
選ばせてしまったなんていう、訳の分からない責任は存在しないのだから。
「なるほど。理解しました。では行きましょうか」
「おい待て桜木」
「何ですかクエストで厄介物を持ち帰った佐々木さん」
「地味に根に持ってるな?俺のせいじゃないと何度言えば・・・いやそうではなく」
「手短にお願いします」
「お前の・・・ふぅ・・・俺は彼女たちを連れて行くことには反対だ」
「理由は?」
「連れて行く理由が無い。彼女のそれは責任ではなくただの自己満足だ」
「っ」
「ちょっと、そんな言い方・・・!!」
「美沙。少し静かに」
「だって!」
「まぁそれはそうなんでしょうけど。これ放っておいても勝手に来ますよ?」
「む」
「ここのダンジョンの構成上、ついてくるだけなら簡単ですからね」
「むぅ」
佐々木の反対に対し、桜木は連れて行かないことのリスクを持って反論した。
そしてそれは確かにその通りで。確かについてくることを止めるのは難しい。
食物ダンジョンは階段の前に階段があり。下に向かうだけなら時間が掛からないからだ。
「ならば予め首輪をつけておこうと?」
「その通りです。それに罪悪感でも何でも、あるなら勝手な行動はしないでしょう」
「ふむ・・・なるほどな」
「ちょっと先輩。良いんすか?」
思わずと言った感じで納得した佐々木に、彼を先輩を呼んだ男性が声を掛ける。
彼も佐々木と同じく反対派である。
「だが桜木の言い分はもっともだろう。見ていない所で勝手にされるよりましだ」
「それはそうですけど。ぶっちゃけ日坂さん以外の護衛が増えるのはそれだけでリスクっすよね」
「そうですね。特殊個体のいる階層に着いた時点で攻撃を食らう可能性は大いにある」
「そこも考えはあるのだろう?」
「はい。日坂さん」
「は、はい?」
「お願いがあります」
「・・・え?私に?」
「はい。これがダメなら正直私も付いてきてほしくないのですが・・・って可能ですか?」
「へ?まぁ・・・出来ると思いますけど」
「ではそれで」
「うむ。では行くぞ。三人とも来るで良いんだな?」
「当然です」
「うぅ。正直めっちゃ怖いけど・・・まひるっちだけ行かせられないっしょ!」
「私も同行します」
「よし」
「えぇ~いいんすか先輩。後で怒られますよこれ」
「その時はその時だ。腹をくくれ村田」
それだけ言うとダンジョンの方へと佐々木は向かってしまう。
それを見て、これ以上は無駄になるなと村田と呼ばれた男は肩を落とす。
どうも桜木と佐々木の二人にかなり振り回されているようで、その様子は妙に慣れた動作に見える。
そんな彼の傍を、遠島達が通り過ぎる。
「はぁ・・・まぁぶっちゃけ無駄足になりそうだしいいか(ボソッ」
「・・・え?どういう」
「三人ともこちらへ!日坂さんから離れないでください!」
「あ、は、はい!」
村田と呼ばれた佐々木の後輩。
彼が出した誰にも聞こえない様なレベルの小声の一言。
本来ならばこれを聞く者はいないはずだった。村田は周囲に誰も聞く人がいないのを確認した上で口に出したのだから。
だが偶然そのタイミングで小鳥遊が近くにいた。
先に行った二人について日坂の元へと向かっていた小鳥遊が、その言葉を聞けたのは本当に偶然だった。
実際村田は小鳥遊が傍にいたことに気が付いていない。
正確にはそばを通り過ぎた物だと思っていた。だからこそ聞こえない様な音量でつぶやいたのだ。
その言葉が、小鳥遊の中に引っ掛かった。
「今の・・・まさか」
「小鳥遊さん?大丈夫ですか?」
「・・・あ、はい。大丈夫です」
「そうですか。じゃあこれからゆっくりあの三人に付いていきます。絶対に、ぜぇーったいに私の前に出ちゃだめですよ!」
「「「はい!!」」」
こうして七人からなる特殊個体の討伐チームがダンジョンへと出発した。
この時、後ろの四人は聞こえなかったが、前の三人はこんな話をしていた。
「ところで。先輩たちはどれくらいの確率で終わってると思います?」
「・・・八割ですね」
「十だ」
「うわぁ。どっちにしろ終わってても不思議に思わないレベルなんですね。どんだけ強いんすかその戸村って子」
「おや?村田は会ったことが無いのですか?」
「ないっすね。何か毎回別の所で仕事あったりで」
「ふむ?隊長は会っているのですから、てっきり会っているものかと」
「・・・すまん。俺のせいかもしれん」
「え」
「ファンとしては成長はしっかりと見たくてな」
「仕事回してたなあんた!?」
「何してるんですか全く・・・」
彼らの会話に緊張感が一切なかった。
まるでこれから遊びに行く集団にも見える。
「はぁ。ま、先輩がそれだけ夢中ならやっぱり無駄足っすね」
「一応まだ確定ではないのですよ」
「そういう桜木先輩もダルダルじゃないっすか」
「チッ。面倒なスキルですね本当に」
「へへ。俺の『緊張感知』は便利スキルっすからね!」
村田の持つスキル『緊張感知』
これは自身の周囲に存在している生物の緊張感が分かるスキルだ。
つまり今この場にいる全員がどれだけ気を張っているかが、村田には手に取るように分かっている。
そのスキルの結果、佐々木と桜木が一切緊張していないことがわかる。
今まで何度も特殊個体の討伐を経験しているが、これほど楽にしている二人を見たのは初めてだった。
特殊個体はその性質上、強さの上限が分からないため油断など出来るはずもないはずにも関わらず。
つまりこれは、どういうことか。
「佐々木、どういう風に勝ってるか賭けます?」
「圧倒・・・は無理にしても無傷勝利は確定か?」
「いやどうでしょうね。私は多少ダメージを負っているに今夜一杯」
「では俺は無傷に一杯だ。村田、お前はどうする?」
「いや。俺会ったこと無いんで実力分からないんすけど・・・無傷だけどめっちゃ疲れてるで」
桜木も佐々木も、一切戸村宗次が負けていると思っていない。
むしろどれだけ余裕をもって勝利しているかだけを考えている。
それだけ彼を信頼している・・・とは少し違う。
彼を何度も見たからこそ、理解しているのだ。
あれが・・・戸村宗次が最も力を発揮するのがどういう状況かを。
そして彼らは、二十層にてその考えすら甘かったことを理解する。
そしてその後で報告書に何て書こうかで頭を抱えることになるのを、彼らはまだ知らない。
感想もらって知ったのですが、皆さん結構先の展開の予想とかしてるんですね。
その展開予想を見るだけでも結構面白いです。どんどんほしい




