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電脳狂戦士 現代ダンジョンに挑む  作者: saikasyuu
電脳狂戦士 強敵と共に
31/893

最強と模擬戦

イベント開始は来週。それまでの間は基本そのイベントの為の準備をする。

制限がかかる系のイベントならその制限を踏まえて自分が全力で戦うためにどうするべきかを考え、装備を調整し、アビリティを構成する。

だけど今回のイベントの内容だとあまり俺たちが考えるところは無い。

隠密系のスキルも、遠距離攻撃の誘導アビリティも普段から使わないから調整の必要が無い。


では戦い方を合わせてコンビネーションを、と一瞬思ったのだが、これもいらないだろう。

何せ大抵の敵なら多対一だとしてもまず負けない。

パワーによるゴリ押しと圧倒的な技巧の押し付け。

この二つを正面から超えることは、今回のイベントにおいて言うなら効率が良くない。

それをするくらいなら戦っているところに背後から奇襲した方が良い。

その為には隠密だったり遠距離攻撃が必要。だがルール制限で使えない。


こうして改めて考えると思うが、今回のイベント随分と俺たちに有利だな。


『待たせた』

「ん?いんや。そこまで待ってねぇよ」


イベントの事を考えていたら、待ち人来る。ムサシなんだが。

街を見下ろせるほど高い一室で、ぼんやりとしていると時間が経つのが早いな。


『こんなところがあったのだな』

「あ~お前いるの見たことなかったけど知らんかったのか」

『ここで待つ意味が無い』

「だろうね」


ここな街の中心部にあるコロセウムの施設の一部。

マスターランクだけが使用できる特殊なロビーだ。


マスターランクのプレイヤーというのは、基本的に大勢のプレイヤーに狙われる。

自分より高いレートを持っているから下の連中が大きなポイントを求めて街を歩くだけで戦いを申し込まれる。

これではフレンドを待つようなことすら出来ない。

それが煩わしいという要望があり、その要望を受けて実装したのがこのロビーだ。


先ほども言ったが街を見下ろせるほど高い塔の最上階にあるそこは夜になると絶景を見られる。

マスターランクじゃなくても招待すれば二人までは入れるから、デートで来た奴もいたな。


まぁ街を歩くようなことをせず、待ち合わせもしないとなるとここを知らなくてもおかしくないんだが。

ムサシとかログインしてすぐにレート潜るから他の奴が申し込む暇が無い。


後はランキングにずっと乗ってるような奴らも比較的利用しないことが多い。

そういう連中は、下の奴らがワンチャンを狙う気にもなれないレベルであることが多いのが理由だ。

俺を含めたランカーは全員、妨害にも等しいそれを超えたうえでランカーになっている。

それでも全くそういうやつらがいないというわけじゃないらしいんだが・・・俺には来ないからなぁ。


ちなみに今日ここを使ったのは先日の様な人だかりを作るのを避けるためだ。


「んで?何でまた時間指定までして呼び出し?別に準備することも無いと思うが」


先も言ったが、今回のイベントは俺たちに非常に有利だ。

なので事前準備とか、打ち合わせとか一切要らない。

あるとすれば、当日あまり距離を離れすぎないという程度か。

そのくらいならその日に一言いえばいいだけだ。


それくらいはムサシも分かっているはず。

なのに呼び出されたので理由に見当がつかない。


『一つ、確かめたいことがある』

「はぁ?」

『戦い方が変わったと聞いた』

「あ?・・・ああ、ロメか」


正確には戦い方じゃなくて武器が変わったんだがな。

戦い方自体は前の物も使うから、追加されたという方が正しいのかもしれない。


その辺りの話をロメから聞いたのだろう。

何か気が付いたら師弟関係になってたらしいからな。

俺よりよっぽどちゃんと教えていると思う。


「武器のサイズを変えられるようにしただけだぞ?」

『間合いの変化は大きな要素だ』

「まぁそらそうなんだけど・・・結局何をしたいんだよ」


結論を話すように促すと、ムサシは何かを言いそうになって呑みこみ、また何かを言いかけて呑みこんで


『・・・確かめるために、戦ってほしい』

「・・・いや、それくらいなら良いけどさ」


明らかに言いたかったことそれじゃないだろ?

相変わらず何というか・・・コミュ障とは違うんだけどなぁ。

微妙に遠慮がある感じか?その方がしっくりくるか。

たしかに二人っきりで話すことは今まであまりしてこなかった。

こればかりはもっと時間を掛けないとダメか。


「でも俺変えたばっかりだから、多分今は前より弱いぞ?」

『構わない。見られればいい』


爪を大きな状態で固定すれば前と変わらない戦い方が出来るので同じだけ戦える。


だがそれでは武器の性能を変えた意味が無い。

元々こいつに勝つ為に必要だと判断して変えたんだ。

外ならぬこいつ自身がその状態でも戦ってくれるというなら試さずにはいられない。

戦いを見られ、経験されること自体はマイナスだが、それを補って余りある。


「んじゃやるか」

『ああ』

















「・・・そういやお前とやるのって地味に久しぶりか?」

『一月以上か。待ち望んでいた』

「そらまた。てか言い方どうにかしろ」

『む?』

「わかってねぇんかい・・・」


ムサシは顔が見えないし、声も機械音声だから常に冷静なイメージを保っている。

だがこうして前の前で互いに構えているとわかる。


こいつ・・・めっちゃうっきうきだ。

自分で言った通り待ち望んでいたってのは嘘じゃないらしい。デート前の彼女か。

だけど自分のセリフが結構恥ずかしいものである自覚は無いらしい。

本当にこいつは・・・


「てかお前、俺以外にもランカー連中とはやってたよな?」

『彼らが弱いとは言わない。だが・・・やはり足りない』

「・・・」

『私を満たせるのは貴公だけだ』

「お、おう」


俺とムサシで戦った場合、勝率は大体4:6。つまりは十回やったら六回は負ける。

しかもこれは調子が良い場合の成績なので数をこなしたらもっと落ちる可能性がある。


ではほかのランカーとムサシならどうか。

アーサーの場合2:8。それ以外では2割を切る。

もちろんムサシと相性の悪いプレイヤーもこの中には含まれているから仕方ないともいえる。

マナなんかはその代表だろう。あいつの戦い方だと現状ムサシに勝つのは難しい。


だけどこの数値は、いかにムサシというプレイヤーがこのゲームにおいて突出しているかを示している。

大会に出れば優勝は確実視され、負け知らずの最強剣士だからこそ二つ名で無双なんて付けられる。


「変わんないな本当に・・・」

『うん・・・?』

「何でもないよ」


だからこそ、退屈になる。

戦いにおいて並び立つ者がいないということの悲しさはきっと誰にも分からないだろう。

俺の場合、分かろうともしなかったのだが。

でもそれでやらかした今でも、分かろうとは思わない。

そこに関しては分かれば良いとは違うのではないだろうか。


それに、分かったところでやることは変わらない。


「んじゃ行くぞ」

『来い』


俺とムサシの戦いは基本俺が攻めて、ムサシが受ける。これは絶対に変わらない。

それは俺たちの能力と勝ち筋を考えれば仕方のないことだ。


俺は相手に何もさせずに押し潰したら勝ち。

ムサシは攻撃を見切って隙をついて斬れば勝ち。

何があってもこの二つは変わらない。変えれば絶対に勝てないなんてことはもう分かり切っている。


俺が爪を構え飛び出すと、それに合わせて半歩分下がり構えるムサシ。

慣れていないならば反応すら許さない俺の動き。

コンパクトを心掛けて放つ一発に対して、ムサシは刀を攻撃の軌道上に置くように動かし弾く。


爪と刀がぶつかり合う。

自身に直撃する軌道の攻撃のみを受け流し、それ以外は体を僅かにズラす。

一秒で数十回という爪の連撃が最低限の動作のみで受けきられる。


それをされ、俺の中でスイッチが入る。


「クッハ」

『む』


攻撃に緩急を挟む。

振るうのではなく、サイズを変化させる事で爪を届かせる。

それに対して極僅かな一瞬だけ動きが鈍るが、即座に修正して対処される。

だがやはり普通にやるよりはまだ通用するようだ。それでも決定打にはならないか。


「しゃーねぇな!!」

『ッ!』


爪が刀にぶつかる瞬間に爪を元のサイズに巨大化させる。

すると二つの衝撃が重なり瞬間的な攻撃力となってムサシの体を吹き飛ばす。


一旦距離取って仕切り直しだ。


『・・・器用だな』

「嫌味か貴様」


ぶつかる瞬間に爪のサイズ変更。いうだけならこれだけだが難易度は高い。

俺たちの動きは早く、それに合わせるとなると高い集中力と、それ以外の動作を妨げないだけの慣れが必要になる。

しかし決まれば強い。今もムサシは俺の一撃を流すのを失敗して距離を離されている。


そして何よりこれの厄介な点は、対策が出来ないことにある。


『常に警戒は出来ず、されとて放るには厄介が過ぎる』

「良いだろこれ」

『誰もが使える業ではないな。それに・・・そもそもがかつてを上回るか』

「あん?」

『流しの際に間を作れなかった人は初めてだ』


何度も攻撃を受け流されればその分流された側の体幹がぶれる。

さらにそれを戻そうと無理やり動くので体勢も崩れる。

するとどうなるか。絶え間ない攻撃でも、その中に間が生まれる。


ロメが俺に対してやったあの受け流し、あれをさらに洗練させて連続で出来るようになれば至る技術だ。

今の今まで、何度もムサシにやられたことだ。


足を止めての連続攻撃、機動力を活かしてのヒットアンドアウェイでも変わらない。

それを初めからやらせなくなったというのは・・・確かに成長だ。


『何があった』

「ハハッ。まぁ色々良い経験が出来てるんでな」


一つ、俺の負け筋を潰せたな。

だけどそれだけで勝てるのなら、俺はムサシを超えるべき壁とは思わなかっただろう。


「んじゃ別のも見るか?」

『ん?』

「・・・俺の今の戦いを見たいって話だったろこれ」

『・・・そうだったな』

「俺も人の事言えねぇけど、お前さんも大概あれだよね」

『おそろいか』

「いやなお揃いだな」

『・・・そうか』


どうも最初の目的を忘れていたらしい。

俺も俺で一瞬マジになりかけたけど・・・似た者同士だよな俺達。


しかし今回はマジでやるって気ではなかったので、これから入るとなると時間が掛かりすぎる。

楽しいのは分かったが、それはまた今度にしたいところだ。


「戦いたいってんなら、メッセージでもくれれば都合つきゃやってやるさ」

『ならば、そうさせてもらう』

「まぁ今ダンジョン行ってるからあれなんだが」

『・・・ほう』

「っ!?」


一瞬、背筋に寒気が。

それに気のせいか。見えないはずのムサシの目が光ったような・・・?


『どうかしたか?』

「あ、ああいや。何でもない」


だが今見てもやはり顔は見えないし、当然目も見えない。

気のせいだったか・・・?

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