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電脳狂戦士 現代ダンジョンに挑む  作者: saikasyuu
電脳狂戦士 仲間が増える
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帰還後、大人たちの話

「・・・どう思いますか」

「ダンジョン内での異性交遊は別に禁止されていないだろう」

「そこなわけないでしょうこの馬鹿が」


冒険者協会の一室。

そこに二人の男女がいた。桜木と佐々木の二人だ。

二人はそういう関係ではなく、ここは彼らが組んでいるチームに与えられた専用の個室だ。


彼らは今、今日の報告書を纏めていた。

だがそれをどう書いたものかと頭を悩ませていた。主に桜木が。


そんな彼女が話を切り出したのは、今日ダンジョン内で見た光景についてだ。


「あの防具、あんな能力があるとは私たちも知らなかったわけですが」

「まぁそんなものだろう。元々、モンスターからのドロップ装備に関しては謎が多い」


モンスターを倒したり、宝箱から手に入る装備については様々なものがある。

特定のモンスターから極低確率で手に入る装備が多いうえに、箱から出てくる武器に関してはもはや際限がない種類がある。


その中でも、佐々木がスキルブックの礼に渡した【赫爪】は一等特殊であった。

何せ二十層ボスの討伐報酬の箱から出てきたものなのだから。

もはやどのモンスターの装備なのか、そのモンスターがどこにいるのかすら分からない。

ただ佐々木が自分に合う別の装備を見つけるまでそれを使い続けていた。

その事実は、あの装備が明らかにもっと下の階層で手に入る物だと示している。

あれを使わなくなった理由は、単純に佐々木には合わないからという理由だけなのだから。


「そもそもドロップ装備に特殊な能力があるというのは、前から言われていたことだろう」

「それはそうですが・・・ではあれを貴方が見つけられなかった理由は?」

「さてな。単純に俺がその条件を満たせなかったか、才能が無かったか・・・或いはといったところか」


ドロップ装備に関してはある説が囁かれている。

曰く、ドロップ装備には通常の装備にはあり得ない特殊な力があると。

身に着けるだけで身体能力が上がったり、魔法に補正を掛けたり。

スキルブックやマジックブックと同じレベルで報告が挙げられていないドロップ装備だが、

確かにそういった報告が各国から集まっていた。


【赫爪】もそういった特殊な装備の一つではある。

ただそれが、力を籠めると爪の形の刃が出てくるというだけの地味な能力。

そうだと今日あの時まで、そう思われていた。


だがそれが誤りであったと認識させられた。

あの時死ぬのは避けられても、間違いなく大ダメージを受けるはずだった一人の冒険者によって。


「鎧蜘蛛の体内からとはいえ、完全に貫通するほどの威力とは」

「それだけの速度で飛び出したのだろう。もともとあれを斬れるだけの切れ味はあった」

「結局人間の握力が足りなくて実戦では通用しないとか言われてる程度でしたでしょうあれ」

「そうだったな。まぁそれも間違いだったのだろう」

「はぁ。これ本当に何て書けば・・・」


協会所属の冒険者には、その日一日の活動内容をレポートにまとめて報告する義務がある。

当然一緒にダンジョンに潜った二人についてもそれに記す。

だが二人のうち片方・・・戸村宗次に関してはどう書いたものかと。


「短期間で問題を起こしすぎです・・・」

「問題では無いだろう。少々厄介ではあるとは思うが」

「それは問題、と言うのですよ。ファンボは黙ってくれます?」

「照れるな」

「褒めてない」


冒険者になりたった一月で鎧蜘蛛を撃破した。

それ自体はまぁこれまでの勢いを考えれば不思議ではない。

明らかに異常だが、彼の経歴とそれがかみ合ったことを考えればまだ納得がいく。


特殊個体の鬼についてもまぁ良い。

本人も運が良かったと言っているし、桜木自体もそう認識している。


スキルブックと新種の魔道具を発見した幸運も良いだろう。そういうことは確かにある。


だがこれらが纏めて約一か月の間で来るのは流石におかしい。

偶然の領域をはるかに超えてしまっている。


「ダンジョンに愛されている・・・そういうしかあるまい」

「彼の目的はダンジョンにはない。ダンジョンはしょせんただの手段でしかない」

「だからこそ、ダンジョン側が彼を見つけた。見つけてしまった。まるで自分に興味のない。ただそこにある便利な場所程度にしか思っていない彼を」

「凡その人間は、ダンジョン自体に目的がありますからね」

「自分から離れようとする人間ほど、目につくということだな」


彼らはダンジョンに意思があるかのように話している。

当然本当にそうだとは考えてはいない。あくまでもダンジョンで様々な事態を引き起こす冒険者に対してそういう表現をしているだけだ。


だがしかし、確かにそうとしか言えない何かが存在しているのも事実。

確かに戸村宗次は、ダンジョンに愛されている。


「それにしても」

「ん?」

「いえ。どこか嬉しそうだなと思ったので」

「・・・そう見えるか?」

「そうですね。赫爪の刃が伸びることを知ったあたりからですかね」

「む、そうか・・・」


佐々木自身に自覚は無かったが、桜木の目にはそう見えた。

赫爪の刃が伸び、鎧蜘蛛から引き抜かれたあたりから。

正確に言えば、刃を伸ばした状態の赫爪を持つ戸村宗次を見たあたりから、だろうか。


それを指摘されたとたんに、佐々木のスイッチが入った。


「当然だろう!!」

「ああ・・・」


そしてその瞬間に桜木は自分の失態を察した。

あ、これ長くなる・・・と


「赫爪を装備しているだけでも思ったが、やはり彼にはああいった武器が似合う!!」

「ゲーム内に近づいていると」

「そうだ。刃が伸びてからは尚更だ。それに、あの最後の腕を斬った動き!」

「・・・見えませんでしたね。少なくとも私は」

「むろん俺も見えていない!これがどういうことかわかるだろう!!」

「赫爪が肉体強化も持っているってことでしょう」


実に雑な返事を返しているとは自分でも思っているが、報告書を書かなければいけないので許せと桜木は心の中で思った。

だがそんな彼女の心中など知ったことではないと佐々木は熱く語る。


「それだけではない!あの動きは完全に我々の理解が及ばないものだった」

「はあ」

「恐らく本能的に、とっさに出た行動だったのだろう。

 あの局面で防御ではなく攻撃を選べる者がどれだけいるだろうか!」

「ヤケクソで攻撃する人はいるでしょう」

「いや!彼のあの動きは確実に出来ると判断していた動きだ!」

「・・・何ですって?」


その言葉は流石に聞き捨てならなかった。

同じ状態になった場合、彼女ですらダメージを覚悟する。

もちろん装備の関係で死にはしないし、逆にそれを利用することだってできる。


だが完全に彼と同じ状態。

武器を失い、防御するための手段すら無いあの瞬間。

その時に相手の腕を斬れると判断していたとは、どういうことだ。


「不可能です。あれを確信して行うのは」

「そうだろうな。だがな桜木、あれは・・・【狂戦士】とはそういうプレイヤーなのだ」

「・・・本能と直感で行われる攻撃は、ありとあらゆる防御と回避を無駄にする」

「そうだ!彼の理のない動きは全てそれらに起因している。だからこそ、彼がそれを疑わない限りそれは確信と変わらない!!」

「つまり貴方は、こう言いたいのですか」


彼は、理性を失った方が強い。


「・・・馬鹿げてる。それではただの獣だ」

「そうだ。そこが彼が【狂戦士】たる由縁だ」

「は?」

「本能と理性のバランスが完璧なのだ。本当に失ってはいけない一線を理性でカバーする。

 だからといって決して本能がメインではない。あくまでも彼自身が本能をリードしている。

 だから彼は【戦士】なのだ。狂っていても、獣のようでも断じて人間以外の何物でもない」

「なるほど。そう解釈すると、【狂戦士】の名はまさに彼の事を示していると言えますね」

「そうだろうそうだろう!俺も初めて聞いた時にはそれ以外にないと思ったぞ!」


彼を初めてそう呼んだ者がそう考えていたとは限らない。

だがどうしてか、誰もがその名に違和感を持つことは無かった。


他のランカー達の二つ名は、定着するまで時間がかかったというのに。

彼だけはすんなりと決まった。それ以外はあり得ないと全員がそう認識したのだ。

それがどれだけのことか。


「まぁ残念なのは、どうせならちゃんとした状態であれを見たかったというところか・・・」

「厄介ファンは嫌われますよ」

「・・・下の階層で見つけたら渡すか」

「やめなさい本当に」


それだけは何をしても止めよう。桜木はこっそりと決意した。

健康診断いって頭痛くなったのは初めてですねぇ・・・

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