いざ合戦
奥多摩ダンジョンはまだギリギリ放課後でも行ける。
だけど戦場ダンジョンはちょっと遠いので学校終わりには行けない。
なので休日に行くことになる。
でも週末は引率が・・・と思うだろうが、実は今部活は停止してる。
理由はこの間のドラゴンの出現だ。
最近は『ドラゴンの氾濫』と呼ばれているあの事件。
あれのせいでダンジョンの安全性がーとかで協会がキチンと安全だと確認するまで部活は止めてくれというお達しが来たのだ。
通常の冒険者だって活動範囲に制限を掛けられているような状態だ。
例外は当然の様に俺みたいなタイプの実力のとびぬけた冒険者。
ちなみに事件での活躍で雨宮さんもこの例外に入ったようだ。
とにかく。この週末に引率は無い。
なので俺にも時間が出来たというわけだ。
「やってきました戦場ダンジョン・・・のある岐阜県」
「岐阜のお土産って何かなぁ」
「飛騨牛って千尋に言われました」
「買って来いって催促された?」
あとは五平餅と水まんじゅう、明宝ハムだ。全部聞いた。
今回も一日泊まることになる。
地味に岐阜って遠いんだなって。
戦場ダンジョンはあの有名な関ヶ原にある。
正確にはその場所にあるわけではないが。
戦場ダンジョンの難易度は高め。
とにかく戦い続けて倒し続ける必要がある関係上、まず長い時間戦えるだけのスタミナが必要になる。
更にモンスター自体もそこそこ強い為ただスタミナだけあっても意味がない。
報酬の決定は一時間にどれだけモンスターが倒せたかどうか。
しかも範囲攻撃を用いたか用いなかったかでも変わる。
使うと評価が落ちるらしい。その為俺は魔法による範囲殲滅を今回は使えない。
そして今回すぐにここに来た理由だが、実はここは金策が出来るのだ。
とはいっても大量に倒すと言う前提だが。
大量に倒して評価を上げ、オリハルコンを狙いつつ金策用のあれこれも狙う。
まさに一石二鳥の素晴らしいダンジョンだ。
問題は巡さんが中に一緒に来れないこと・・・大問題だ。
「どうする?一時間だからもう行く?」
「そうですね。何回か挑戦したいんで」
「何回も行くものじゃないよ??」
多分一時間くらいなら余裕何だよなぁ。
それにどれくらい倒すと何が出てくるのかも気になる。
なので最後の一回は本気でやる。全力でやる。
その為それまでは準備運動みたいな感じで使わせてもらう。
戦場ダンジョン入り口の隣にある協会施設で巡さんに見送られて文字通り戦場へ。
入り口のよく分からん穴を通り、階段を下る。
中から硝煙の香りがする。この時点で相手に何がいるか、一部だけ分かる。
「火縄銃・・・海夏で濡らしちゃうのはありかな?」
「キュ?」
「一回は試すか。まぁ最初は俺だけで」
スキル使用の有無は流石に無いと思うが・・・いや一応確かめてみるか?
スタミナ的な余裕を考える必要があるが、色々確かめた方が後々有利になるだろう。
もしここでオリハルコンが出るなら、かなりの数の協会冒険者がここに来るだろうし。
階段を完全に降りると、ここに来るまで見ていた光景に近いものが広がっていた。
「へぇ。そこも再現なんだ」
この戦場ダンジョンは、ただの戦場ではない。
装備なんかは全く似ていないと思うが、状況的には関ヶ原の戦いが再現されているらしい。
ただし、陣営が二つあるとか。どっちかは味方になるとかは一切ないけど。
だからぼーっとしてると。
「おっと」
銃弾を爪で弾く。火縄銃の癖にとんでもない距離から狙って。
「ああいやそこか」
近くの草むらに隠れていたモンスターを尾で串刺しにする。
見た目はまんま雑兵って感じ。名前もそのまんま『足軽骸骨』
他にも『小物骸骨』『骸骨大将』とかがいる。
その辺りは戦国の日本の軍隊の階級が元になっているそうだ。
足軽骸骨を振り落とすと奥からどんどん骸骨たちが出てくる。
装備はばらばらだけど、やっぱり全部戦国風。
その中には強そうなのはいない。やはりある程度倒さないと武将級は出てこないか。
「んじゃやるかぁ」
手始めに一番近くにいた骸骨を砕く。
それが開戦の合図となったのか、遠くから法螺貝の音が鳴り響く。
するとあちこちから矢が飛んでくる。
こりゃあちこちに潜んでるな?
ここに留まると蜂の巣にされるのでとりあえず前に出る。
迫る雑兵共に対して、爪と尾を駆使して道を拓く。
モンスターだから相手は味方を巻き込まないようにするとかいう意識はない。その為容赦なく味方を巻き込んでくる。
「これはこれでえぐいな・・・」
近くにいた骸骨を盾にして刀を防ぐ。
その間にも容赦なくあたりから攻撃が飛んでくる。
銃弾を弾き防ぎ、刀を砕いて逆に斬り返す。
一切止まらずに動き続ける。
思っていた以上に攻撃の密度が高い。
だがそれでも対処できない程じゃない。
あと多分、これ食らってもダメージにならない。
ドラゴンに比べても全然弱いのが伝わってくる。
まぁ流石に試しに食らってみよう!とはならんけど。
後さらに言うと予想よりこいつら弱い。てか脆い。
軽く掠っただけで砕けてしまう。
無双ゲームっぽくて楽しくはあるけどなぁ・・・お?
何となく気が抜けた一撃が防がれた。
「何だこいつ」
やけに装備が整っているのが出てきた。
一人だけフル装備だし。
再度、今度は多少真面目に攻撃するがそれも止められる。
だが完全に受けきれなかったのか大きく体が弾かれる。
それを追いかけて上から尾を叩きつけると、ようやく倒せた。
「へぇ。これは良いかも」
まだ弱いが、それでも雑兵共に比べると遥かにマシだ。
準備運動って考えた上で、これより上があるなら期待感も上がってくるというものだ。
「ならさっさといっぱい倒して上位個体を狙わなきゃな!!」
ギアを切り替えていこう。
本気になると俺の姿はかなり変わる。
イフリートの腕は俺の体を治す魔力に消費してしまったからもうない。
だから今の俺の鎧はまた変わっている。
とはいっても通常モードは前と同じ闇夜のガントレットに魔力の爪が出ているだけ。
これが本気になると鎧の腕と脚の形が変わる。
複数のプレートが重なるような形になり、重なっている部分からは闇が蒸気の様に噴き出す。
今まで背後からのみの放出だった闇ブースターが腕からも出来るようになったと思えばいい。
まぁあんまり使わないけど。
もともと闇夜の鎧は非常に動きやすいものではあった。
それがさらに柔軟性を兼ね備えるようになり、俺の動きの自由度はさらに増す。
具体的には、俺がゲームでやる空中機動が完全に再現した。
闇を足場に宙へ跳ぶ。
そのまま急降下。落下地点にいた骸骨たちを纏めて薙ぎ払う。
再度跳躍。急降下。今度は着地と同時に右へ。
俺の空中機動は、他のプレイヤーが行うそれとはわけが違う。
なにせどの体勢からでも、どの方向にも跳べるのだから。
本来ならば体に掛かる負荷などで急な角度での軌道変更は出来ないし、やってはいけない。
ゲーム内ならそこは無視できるが、それでもあまりやりすぎると平衡感覚を失う。
そして戦闘フィールドが制限されている関係上、上手くやるには短期間に軌道を何度も変化させる必要がある。
使いこなすためのハードル。それが高すぎるせいで他のプレイヤーはやらない。というか出来ない。
俺がこうしてやる様になっても、中々後追いが出てこない技でもある。
これをやり始めると一気に殲滅速度が上がった。
まぁそらそうだわな。何せ敵を倒してから他の敵がいる地点に向かうまでの速度が段違いだ。
そして十分以上これで戦ってたら見つけた。
一際豪勢な、大きな刀を持った奴だ。
「見つけたぁぁぁぁ!!!」
地面スレスレを飛んで奴へ向かう。
相手もこちらに気が付いたようで、巨大な刀を振り上げる。
「シャァァァ!!」
「ァァァァ!!」
声になっていない雄たけびを上げ刀が振り下ろされる。
こちらも勢いそのままに爪を振り上げる。
刀と爪がぶつかり合う衝撃で広い範囲に衝撃波が広がる。
それにより周囲に迫ってきていた骸骨たちが吹き飛ぶ。
「パワー感は俺のが上だな!」
一瞬の拮抗の後、勝ったのは俺だった。
刀は大きく弾かれるが、目の前の骸骨の手から離れることは無かった。
意外と根性あるな?
何とさらに、骸骨はその状態からでも刀を振り下ろしてきた。
どうやら我慢比べがしたいらしい。
何度もぶつかり合うが、中々相手は崩れない。
姿勢がしっかりとしている証拠だ。
ムサシにも見られる特徴だ。まさかこんな所で見れるとは。
だけど、少々不足だな。
何度目かのぶつかり合い、また刀が弾かれる。
そしてまた振り下ろされる・・・より前に俺が一歩前に踏み込む。
爪を短くして突き刺す。
骸骨系のモンスターはただ胴体を砕いただけだと即死しない。
だから脚を振り上げる。
すると股下から首までが両断された。
「良いね。やっぱり足にも刃が無いと」
斬った時の感触を実感して考える。
やはり今の俺には、手と尾だけでは足りないな。
本気を出せるようになったお陰か、俺には心理的な余裕がかなりできた。
そのせいか普通に戦おうとすると色々持て余すようになったと思う。
俺もまさかの弊害だったが、これだと勿体ないと思うようになってしまった。
そこで何か他にないかと考えるようになっていた。
そのうちの一つが尾の活用。
これ自体はスキルが手に入ったからと言う理由だけど。
そしてこれが恐らくゲームの方でも影響が出ると気が付いたのは、ムサシとリハビリを兼ねて戦っていた時だ。
余計なことを考えるわけではないが、もう何手か取れるなら勝てたみたいな場面が出てくるんだ。
何回もそれがあるもんだから無駄に嫌になる。
思いついたのが脚を使うことだ。
脚に刃を付けること自体はゲームの中ではもうやっている。
しかしあれはあくまでもサポートとしての側面が強く、システム上それ以上が出来ない。
でも慣れれば十分武器として使える。その為に現実で試す必要があった。
「でもやっぱりもうちょいちっこくていいかこれ」
脚に出した刃を縮める。
というかこれ、何かの動物の足をそのまんま真似した方がいいのか?
「おっと。その前に倒すか」
考えるのは後にしよう。
今は数を倒さなければ。
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