終わった後のお楽しみ
上手い事仕事を一月で片付けられそうなのでワンチャン来月在宅に戻れるかも・・・?
モンスターがダンジョンの外に出てくると言う大事件から、早くも一週間が経った。
被害人数は多く、かなりの人々が被害を受けた。
だが死亡者数は比較的少なかった。
それは冒険者協会・・・特に立浪仙波のチームが入り口付近で最初に出てきたドラゴンたちを抑えたことが関係している。
お陰で初期段階での避難が迅速に済んだのだ。
そして冒険者協会は今回の件がどうして起こったのかを素早く公開した。
モンスター捕獲作戦自体、協会は反対の立場だったが外部の企業による圧力があった事も含めて全てを。
さらに復旧に関する動きも早く、それが評価されたことも後押しとなっている。
そのお陰かどうか。冒険者協会への非難は最低限で済んでいる。
もちろん全く無いわけではないが、そのほとんどが圧力を掛けたとされた企業に向かっていた。
そしてもう一つ。ある冒険者の事が話題になっていた。
空を舞い、瞬く間にドラゴンたちを葬った、鎧の戦士。
一部界隈では、某アイドルの反応と鎧の形でそれが誰かに気が付いたが今回ばかりは口を噤んでいる。
その戦いぶりが、二年前の物と似ていたからだ。しかも何か前より凶悪になっていることも分かった。
何があったかは知らないが、とんでもない事をしたなというのが彼らの感想だ。
そんな話題となった彼はと言うと・・・
「・・・ねぇお兄ちゃん?」
「何だ?」
「あーいや・・・そろそろ二人放してあげたら?」
「何で???」
「何で??????」
「あぅ//」
「・・・」
家でまったりしていた。その両腕に愛する女性二人を抱えながら。
そんな兄を見て、妹である千尋はため息をつく。
吹っ切れたと思ったら、どうしてそうなるんだと。
「はぁ。お兄ちゃん、ようやくかと思ったら何でそうなるの」
「いやほら。リアがどっか行こうとしたじゃん?」
「そうだね」
「ならこうしておけばどこにも行かないなって」
「物理的に拘束するのは想定外にもほどがあるってんだよ馬鹿兄」
「良いだろ別に。嫌がられてないし」
「それは想定内だよ。そこのところどうなのお姉ちゃん」
「・・・宗次」
「なに?」
「もっと強くして」
「あいよ」
「かぁーっぺ!何だここは!砂糖で出来た空間か!!」
千尋は既に一週間もこの光景を見せられている。
そら嫌にもなるわな。
辞めるつもりは一切ないが。
「あと何で日坂さんまで!?」
「リアだけだとずるいだろ」
「当然でしょ?」
「それでいいのかこの姉は!?」
「???」
「えぇ分かってないし・・・日坂さんも嫌じゃないんです?」
「え、えっとその・・・うれしいから///」
「もーやだこの人達ー。えーこれが今回の反動なのー?」
「いや別にそういうわけじゃないけど」
「しかも違うんかー・・・」
そもそも今回、宗次はいう程全力を出してはいない。
それを伝えると、かなり本気で千尋は驚いた。
「は、え?あれで?」
「治療とかは全力でやったけど、戦ってる時は全然」
「マジかこの兄」
「本気ではやったぞ?ただ全力じゃなかっただけで」
「え?」
「流石にすぐに全部制御は無理だからな、一部だけに絞ったんだよ」
「・・・そんなことできるの?」
「出来てただろ」
「うわぁ・・・うわぁ・・・」
「ガチで引いてんじゃん」
「私の想定してた範囲を悠々と超えてくじゃん・・・こわ」
千尋が何かを隠していて、何かを目的に宗次を元の状態に戻そうとしている。
それ自体は少し前から何となくだが察していた。
だが文字通り制限が解除された今、宗次はそれが何なのかを理解していた。
その上で放置する。別にそれでも問題ないから。
それ関係でやったことに関してはまぁ一言二言言いたいことはあるが。
言ったところで大して意味が無い事を知っているため、言わない。
かつて千尋は宗次に何を言っても止まらないといったが、それは逆も同じだ。
千尋は、宗次に何を言われても止まらない。
「千尋」
「なによもー」
「やり過ぎたら、舞戸にチクるからな」
「ちょ!?」
またまたガチの驚き。そして焦り。
似た者兄妹だからこそ、どこが弱点なのかも同じ。
特に千尋の場合、弱点が大きい。
「というかお前舞戸とやる事やってんの?」
「本当にダメな方向にも吹っ切れたな!?」
段々と千尋のキャラが剥がれてくる。だがそれも知っているので特に宗次は驚かない。リアと巡は驚くが。
「私中学生!舞戸さん高校生!!」
「俺も高校生」
「あんたは相手が大人・・・大人じゃないねそういえば」
「そうなんだよね」
日坂巡今年で二十歳。だけどまだ十九。
アメリア・戸村。十六歳。宗次と同い年。
なので二人ともまだ成人ではない。
というかリアと宗次に関しては結婚できる年齢でもない。
「でもそういうことに興味は?」
「まぁ・・・人並みには」
「千尋」
「お姉ちゃん?」
「誘う時は一言だけで良いのよ」
「お姉ちゃん??」
「耳元で頂戴って言えば」
「お姉ちゃん!?」
これがあの姉の姿かと千尋は目を見開く。
つい最近まで、無駄なことで悩んで兄とすれ違っていた女の姿かと。
しかも今の言葉通りなら、本当にそれで誘ってしかもヤッたのかと。
千尋は助けを求めるように義理の姉となることがほぼ確定している人を見る。
それに気が付くと、巡は頬を赤くして視線を逸らした。
「こっちもか!?」
「あ、あははは」
「えぇー。何だかんだ手出さなかったのにー。どういう心境の変化なのー」
「死んだらこういう事も出来ないなーって」
「一言がクッソ重くて」
実際死んだ人間の言う言葉は、重い。謎に重い。
千尋は兄が死んだ姿も怪我をしたという姿も見ていない。
ただ帰って来た一目見た瞬間に、前の兄と何もかもが違う事には気が付いていた。
別にどこがどう違うという、具体的な違うに気が付いたわけではない。
ただそう感じ取っただけ。明らかに異常な生物が目の前にいることに対する、本能的な直感ともいえる。
それを成すなら、まぁ死んでもおかしくはないなと納得もしていた。
だけどまさかここまで心理的にも変化が起きているとは。
そこは全くの想定外であった。
確かに千尋は彼が本気を出すための心理的な障害を取り除こうとはしていたが。
まさかこうなるとは、というかなんでそうなった。
そこだけは分からなかった。
「一応避妊はしてるからな」
「あ、そこはちゃんとしてるんだ」
「いや。子供作るにもちゃんと年齢とかは守らないとな。俺の場合二人だし」
「律儀な上に急に理性的なこと言われてバグりそう」
「まぁ邪魔だなと思ったら全部潰すけど」
「ああうん。やっぱ野蛮だわ理性isどこ」
「ここ」
「うそだぁ」
指で自分を指す兄を否定しつつ、様子を観察する。
この様子だと本当に全部吹っ切れたらしい。ちょっとダメな部分まで変わった気もするが。まぁコラテラルダメージというやつだろう。
兄の目的的にはそれが一番都合が良いし、それを見たくもある。
だけどこの様子で大丈夫なのかと不安にもなる。
色ボケして、変に弱くならないかということだ。
ただでさえ一度切れると我慢の効かないタイプなのだから、このままずぶずぶになるのではないかという懸念だ。
しかも無駄に金持ちだから働かなくても良くなってるのが余計に良くない。
でも今下手なこと言うとワンチャン止める間もなくやられることも分かっている。
前までならつけ入る隙もあったが、もうとてもではないが敵わない。
ただでさえこと戦う才能に関しては負けているのに、それがフルで使えるようになったなら勝てるわけがない。
千尋は気づかない。
制限されていたとはいえ、冒険者になった戦いの鬼に対して勝ち目があること自体が異常なことに。
そしてそんな千尋の内心を、宗次は凡そ読み切っていた。
相変わらず無駄に考えてるなぁと思いつつ、やはりこいつ勝ち目があると思ってたのかとも思っている。
伊達に俺の妹ではないなと少し誇らしくも思うが。今後は勝ち目など一ミリも与えないと反省もする。
「まぁ安心しろ千尋」
「何がー?」
「目的は果たすさ。上も見えたしな」
「っ・・・ああ本当に。余計な所まで戻っちゃったよ。それって逸れてるよね」
「まぁ・・・たまには良いだろ」
「そうだねぇ・・・ねぇお兄ちゃん」
「あん?」
「おはよう」
「・・・ああ。おはよう」
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