刀を求めて
ムサシからの課題。
刀を用いて現実で戦う事。
目的と理由もある程度分かっているので、これをやること自体は問題ない。
だがやっぱりちょっと違和感はある。
「ふむ。まぁ用意は出来るが。武器ダンジョンに行った方が早いと思うぞ」
それはそれとしてやる。絶対に。
そこで刀を求めて立浪さんに聞いてみたのだが、俺が自分で手に入れた方が早いと言われた。
成程道理だな。刀って何か一年に作られる本数が決められているって聞いたことあるし。
アーサーが日本の剣術に興味を持った時に調べたのを聞いた覚えがある。
なので今回は武器ダンジョンへ。
刀を求めて三千里・・・は移動しないな。電車で20分くらい。
「人多いね」
「多いっすね」
じゃあ早速とばかりに武器ダンジョンへ行ってみると、そこにはかなりの人だかりが。
魔導書ダンジョンに匹敵するんじゃないかと言うレベルでいる。
この理由はまぁ簡単に想像がつく。
ここ以外で確実に武器を手に入れることが出来ないからだ。
特殊な武器とかそういうのを抜きにしても、普通の武器ですら手に入れるのは大変だ。
それでいてダンジョン外で普通に作られた武器では通用する階層は浅い。
一応の解決策として、ダンジョン産の鉱石を用いた武器ならばかなり深い所に行ける。
だがそういったものは特殊ダンジョン・・・無効化ダンジョンなどの難易度の高いダンジョンにのみに存在する。
その為結局それなりの武器が絶対に必要になる。堂々巡りになるわけだ。
だがこの武器ダンジョンなら話は変わる。
ここで武器を手に入れれば、下層に行く為の難易度がぐっと下がる。
武器ダンジョンはまぁやり方さえ知っていれば難易度は高くないからな。
「宗次君これに並ぶの?立浪さんに頼めば」
「そうなんですけど、よく考えてみれば問題がありまして」
「問題?」
「ほら。俺の課題って、そこそこの刀でって話じゃないですか」
「そうだね」
「多分立浪さんのそこそこと、俺のそこそこって違う気がするんですよ」
「え?」
立浪仙波。俺を除けば日本最強の冒険者。
本人もこれは認めており、もはや俺には敵わないとか言っている。
だが俺自身はこの部分を微妙に疑っている。
確かに立浪さんは強い。そこは疑っていない。
でも微妙に違和感があるのだ。
何というか、本来あるべきはずの何かが欠けているような、そんな違和感。
それが欠けているからこそ、今の実力なのではないかと。
本来ならばもっと上位・・・それこそ、一人で六十階層クラスモンスターを倒したと言うあの謎の大剣使いに匹敵するのではないかと。
もしこれが当たっているのなら、あの人が用意する刀は一般的に言えば名刀になりかねない。
そしてこのあたりの勘は大体当たる。
恐らく立浪さん自体もそこを理解しているからそう言ったのだろう。
「なので俺自身が行かないといけないんですよねぇ」
「へぇー。立浪さんそんなに強いんだ」
「いやまぁ勘ですけど」
事情を説明して二人でダンジョン入場の為に並ぶ。
魔導書ダンジョンではアーサーが前もって取り計らってくれたから並ばずに済んだため、
ダンジョンに入るのに並ぶのは初めての経験だ。
「でも色々な人がいるんだね」
「あー。そうですね。武器とか思い思いで」
「流石に宗次君みたいな武器はいないかぁ」
「いやいたら驚きなんですけど・・・」
はっきり言って俺の武器って変わり種にもほどがあるんですよ巡さん・・・
幸いニ、三十分ほど並ぶとダンジョンに入ることが出来た。
これが一時期に比べたらかなり落ち着いているってんだから怖い話だ。
さて、ここで武器ダンジョンの中について話をしよう。
とはいってもこのダンジョンはそこまで話す事も無いんだが。
まずダンジョンは五十層構成。ワープ部屋もある。
剣、槍、弓、斧、槌、棍棒、刀、鎌、ナイフ、特殊武装。この十種類の武器を持つモンスターがローテーションで現れる。
そして面白いのがここから。
何と難易度の変化が他のダンジョンと全然違う。
難易度が全部で五段階ある。十層毎に難易度が上がっていくのだ。
つまり。一から十までの難易度が一切変わらず、十一層から敵が強くなっていくのだ。
じゃあ俺の場合どこの階層が適正になるのか。
ぶっちゃけ・・・無い!
武器ダンジョンは割と簡単。
五十層まで行っても、通常ダンジョンの四十層程度の難易度。
つまり闇騎士以下。高く見積もってもイフリートと同じくらい?
そうなると難しさとか、敵の強さとかは期待できない。
まぁそこはしゃーない。どのダンジョンでもそこを期待するわけにはいかないからな。
「でも宗次君はどこの刀が欲しいの?」
「あー・・・三十層くらいがちょうどいいですかね」
「人もあんまりいない階層だし、ちょうどいいかもね」
武器ダンジョンで一番人の多い階層は大体十五階層より上の階層。
それより下の階層になると一気に人が減る。
その為俺的にはその方が色々やりやすい。
でも今日だけで刀を数本仕入れる予定なので、出来るならそこまでは一気に行きたい。
一々普通に歩いてたら時間が掛かって仕方ない。
そこでだ・・・
「・・・あ、あの宗次君?」
「何ですか?」
「何でお姫様抱っこなの?」
「その方が早いんで。行きますよー」
「闇夜ちゃんに乗るんじゃだめなのぉぉぉぉ!!??」
闇夜を纏い、巡さんを抱えてダッシュする。
もちろん地上を走ると他の冒険者の邪魔になるので空中を移動している。
邪魔になると言うか、多分ひき逃げみたいになるからな。
武器ダンジョンは洞窟型で、入り組んだ迷路みたいになっている。
なので本来はこの移動法は危ない。普通に壁にぶつかりかねないし。
だけど俺なら問題ない。そもそもこのくらいの速度での移動は何度もやったからな。
今更ぶつかるのはあり得ない。
・・・まぁ俺は慣れてるって話だよね。
「・・・」(ムスー
「・・・あ、あの・・・ごめんなさい」
巡さんはこの速度に慣れて無いから、そら怖いよねって。
遊園地にある絶叫マシーンが比較にならない程度にはぶっ飛んだアトラクションだろう。
ぶつからないと分かっているのは俺だけだし、巡さんは俺が抱えてるから身動きも取れない。
そりゃ普通に考えれば怖いわな。
必然。巡さんは怒る。それはもう怒る。
無言で頬を膨らませてそっぽを向き、私怒ってますって感じで怒っている。
・・・・・・・・・・・・怒った顔もかわ
「宗次君?」
「うおっ!?」
「今余計なこと考えてたでしょ」
「い、いやぁ」
「もー!!」
何故だか機嫌が良くなった巡さん。結果的に良し!!
では早速ダンジョン探索。と言う名の戦闘を始めよう。
今回は三十七層。武器ダンジョンのモンスターは鎧を纏った騎士か木人以外にいない為そのどちらかだ。
一応難易度に差はある。
騎士の方は戦い方が上手いが割と普通に倒せる。
木人は戦い方はそこそこだが、死にづらい為倒しづらい。
良く狙われるのは木人の方だ。殺しづらいが弱い為集団で囲んで殴るらしい。
そしてここの連中は一口で刀と言っても色々持っている。
その辺は前に無効化ダンジョンで戦ったあの鎧のモンスターに似ているな。
「今回狙うのは!」
「狙うのは?」
「太刀です!!」
「・・・???」
「あ、説明しますね」
巡さんが分からない様なので説明しよう。
まず割と最近ではゲームとかあるから有名な話だが、刀には種類がある。
太刀一つ取ったっていくつかあるくらいなんだ。
「使い方とかによっても変わりますしね。居合刀とか長いですし」
「へぇ。あ、じゃあ宗次君が使いたがる様な大きな刀もあるの?」
「ありますよ。斬馬刀って言うんですけど。後は野太刀ですかね」
「それは使おうと思わなかったの?」
「んー・・・まぁあれですね。刀だけは候補にも挙がらなかったんですよね」
「え?ちょっと意外かも」
「そうです?」
「宗次君って男の子が好きそうな武器好きでしょ?」
「・・・まぁ」
使わなかった理由はまぁ、ムサシにある。
あいつが使ってる武器で俺が勝てるとは思えなかったってのが理由だな。
実際これは間違ってないだろう。
刀術と言うある種の聖域みたいなものだな。素人が勝つ為に握って扱えるわけがない。
俺を素人と言っていいのかは議論の余地があるが、ムサシから見たら素人だろうよ。
話を戻して。今回太刀を狙う理由だが、ムサシの課題を考えるとそれがピッタリだと思ったからだ。
扱いが基礎的だが、基礎的であるからこそ丁寧な動きが求められる。
野太刀みたいに刀としては雑に扱えるものを選んでもな。ぶっちゃけ意味無いし。
あと漫画とかに出てくるような本当にバカでかくて分厚い刀だな。
あれもダメだ。あれ何かもはや鉄の塊だろう。爪と変わらんわ。
「あと個人的にはちっこいのも欲しいなって」
「小さいの?」
「いや。巡さん用に。ナイフ代わりにもなりますし」
「ああ!それは欲しいかも!!」
巡さんは戦わないから、武器を持ってきていない。
でも大きな盾だって鞄に入ってるし。完全に無力ではない。
しかしかし。やっぱり何かしら一本刃物は必要だろう。
普段巡さんが使ってるのって、マジで普通の包丁だしな。
あ、この間千尋も貰ったあの元呪いのやつは貰ってるか。
そこでここらで一本もうちょいいい奴を取っておこうかと。
「小太刀はそれなりに使い勝手良いですからね」
「へぇ。そうなんだ」
「あと俺は俺で一本ほしいなって」
「ふふふ。楽しそうだね宗次君」
「まぁ変な物集めるより楽しいですよね」
何だかんだ『武器』だしな。
やっぱり実際に手に持つってなると結構感じる物がある。
ゲームでは色々持ったし使ったが、どうしても現実だと違うな。
ブックマーク登録と評価もお願いいたします!




