水の中の宝箱
海夏から力を得ること自体は、ずっと前から考えていた。
だけど今までそれをしないといけない様なモンスターはいなかったし、いたとしても貰う前に俺がやられていた。
なので後回しではないが、何だかんだで無かったことになっていたのだ。
それを改めて認識し直したのは今日。
桜木さんから精霊の話を聞いた時だ。
「なんで頼めば水の中とか行けるかなぁって」
「なるほど・・・ねぇ宗次君」
「はい?」
「それでも水の上を滑るのは違うと思うの」
「そうです?」
「キュー♪」
「あ、あと何でこの抱え方なの?」
「その方がロマンチックかなって」
海夏の力を端的に言うと、水を征す力だ。
水の中でも呼吸が可能。沈むも浮くも俺の意思一つ。
その応用で今俺は水の上を滑る様に移動している。
巡さんをお姫様抱っこしているのは、この方が良いかなって思っただけだ。
別にボスがあんまり好みじゃないモンスターだった分のストレスを解消しているわけではない。
決してない。
「それにしても見つかりませんね」
「そ、そうだね//」
一応これをやってることの理由もある。
ボスを倒したことで出てくる宝箱。これがどこにもないのだ。
陸地の部分にぽんっと出てくるもんだと思っていた俺達はいつまで経っても出てこない宝箱を探しているというわけだ。
ボス自体は間違いなく倒しているから、まだ何かあるってことはないはず。
そうなると宝箱はもう出てきているが、陸地ではない場所にあるってことになる。
つまりは湖のどこか。
でもこの湖は結構広く。あちこちに岩がある。
なのでそのどこかにあるのではないかと探しているのだが・・・
「うーん。そろそろ一周しちゃいますね」
「そうだね。やっぱり水の中なのかな?」
「みたいですね。しゃーない潜るかぁ」
これがさっぱり見つからない。どうも水の上には無いらしい。
相手がセイレーンってんだからまぁ不思議ではないのかもしれないが。
それにしたって随分と不親切な仕様じゃないか。改善を要求したい。
じゃあ一旦巡さんを陸地に置いて・・・いかない。
「え?」
「このまま行きますよー」
「え、ちょっと宗次君!?」
「海夏潜るぞー」
「キュー!」
急速潜航・・・とはいかないが、それなりの速さで水の中に沈んでいく人間二人とイルカ一匹。
水の中で俺達以外の人が俺達の姿を確認したら驚くだろう。
何せ今、俺達の周りには膜が張られているのだから。
「巡さん。目を開けても大丈夫ですよ」
「うぅ・・・う?あ、あれ?」
「驚いたでしょ」
「ふわぁ。すごい・・・」
湖が綺麗なお陰か、とても神秘的な光景が水中には広がっている。
先ほどまでここで死闘が繰り広げられていたとは思えない程に。
今俺がやっているのも海夏からもらった力だ。
これは俺達が濡れない様にしている。
それを応用すれば、膜とすることで水の侵入を阻むことが出来る。
しかも精霊の力だから水圧とか一切関係無しという地味にとんでもない仕様らしい。
これは戦闘中に気が付いた。どんだけ無茶な軌道をとっても俺に負担が掛からなかったことで気が付けた。
まぁ高速機動自体には海夏の力全く関係なかったのは後で気が付いたけどな!!
「ここ魚も泳いでるんだね」
「まぁ何か鮮やかっすけどね」
「・・・何かすっごく毒っぽいね」
「紫っすからねぇ」
「あ、でもあっちのは熱帯魚っぽくて可愛いかも」
気分は水族館に来た気分だ。これがデートか。
とはいってもそれだけに気を割かれるわけにもいかない。ちゃんと宝箱探さないと。
巡さんはお目目をキラキラさせながら景色を眺めているから、海夏に頼んでそちらでも探してもらう。
「宗次君宗次君!あっち見て見て!」
「見てますよー」
「む?宗次君私ばっかり見てるでしょ」
「見てますね」
「もー//」
何かすっごいテンションが高くなってる巡さんが可愛い。
「でも俺も水族館なんて行ったことないなそういや」
「え?そうなの?」
「ええまぁ。俺達がそういうのに興味持たなかったってのもありますけど」
「あー」
俺も千尋も、魚とかって基本食料としか見れないからな。
観賞魚の扱いならまぁ別に食べようとは思わないけど。
あ、そういや昔家に金魚いたっけ。
「私は学校で飼育当番やってたよ!」
「ああ。何かありましたねそんなの」
「ウサギがいてね。可愛かったんだー」
「へぇ。うちには何もいなかったからなぁ」
懐かし話に花を咲かせていると海夏が遠くから戻って来た。
そしてイチャイチャしてる俺達に対して一言。
「キュー・・・」
「ごめんごめん」
「ごめんね海夏ちゃん」
人に探させといて何いちゃついてんねんって怒られました。
でもそれを言うだけあって、ちゃんと見つけて来たらしい。
どうも湖の中にある一番大きな岩。その根元にあるんだとか。
少し探ってみた所、そこはどうも岩が水面から飛び出しているようで、上から中に入ってこれる構造なんだとか。
つまり別に水の中に入らなくても見つけられたと。
本当にただのデートになったな。
「今度はアメリアちゃんにもやってあげてね」
「リアに?」
「うん。だって私だけじゃずるいでしょ?」
「・・・巡さん」
「何?」
「大好きです」
「みゅ//」
この人が俺を好きになってくれたことが、俺の人生で最も素晴らしい事なのかもしれない。
どうせならと水の中から海夏が見つけたルートから入っていく。
洞窟みたいな穴が開いていて、これはこれで神秘的。
そしてここがダンジョンだと思い出させてくれる物もあった。
洞窟部分を抜けると同時に魔力のカーテンみたいなものがあり、それが水の侵入を防いでいた。
その為中は綺麗な砂浜みたいな状態で、上から日の光が差し込んでいた。
「ここ本当にすごいですね」
「そうだねぇ。皆で・・・は無理かぁ」
「流石に面倒ですねぇ」
皆って多分家族ってことなんだろうけど、それをするにはちょっと課題が多いかな。
宝箱は砂浜の中心に、日の光を浴びながら置いてあった。
箱自体はいつもと変わらないのに無駄に価値がありそうに見える。
あとここって破棄された海賊船とかあっても雰囲気的に合ってる気がする。
「こんだけ探させたんだから期待したいけど」
「開けるよー」
「お願いします」
巡さんが箱を開ける。
中身は・・・ん?何だこれ。
「何か、刺さってません?」
「刺さってるね。何だろこれ」
剣の柄だけが飛び出している。覗き込んでみるが暗闇で底が見れない。
巡さんが引き抜こうとするとびくともしない。かなり深く刺さっているのか?
「お、おもい」
「変わりますよ」
「お願い」
少し手にしただけで分かる。成程これは重い。
それに刺さってるんじゃないなこいつ。単純に重くて立ってるだけか
剣かと思ったけど、これもしかして剣じゃないのかも。
まずは片手で持ち上げようとしてみる。
かなり重いな。これはもしかしてもしかするか。
「すみません巡さん。下がってください」
「え?う、うん」
巡さんが下がったのを確認して闇夜を展開し直す。
そして今度は両手を握って背中を向けるようにして・・・一気に引っ張る!!
「オラァ!!」
引き抜いた感覚が伝わる。間違いなく引き抜いた。
ただ思っていたより長くなかったのか、意外とすぐに自由になる感覚があった。
だが引き抜いた瞬間に、何かとんでもない音がした。
具体的には色々な物を壊す音が。
巡さんの方を見ると、口を大きく開けてぱくぱくしている。
ああうん。これやっぱ、何か斬ったな?
背後を振り向くと、そこには真っ二つになった宝箱と大きく斬られた壁が。
幸い魔力のカーテンのお陰で水が浸入してくることはなかったが、もしそれが無かったら確実にここは水の中に沈んでいただろう。
「こっわ!」
「そ、宗次君その爪・・・」
「爪?」
『手』を見てみる。そこには見慣れない刃が。
俺の今の腕は、イフリートの腕に闇夜のガントレットが付いている状態だった。
爪は魔法で生み出した闇の爪と、イフリートの爪の両方。
その為怪物みたいな・・・というか怪物そのものの腕みたいなことになっていた。
その腕に強烈な違和感を感じる。
明らかに内部に何か異物が入り込んだ感覚。
「・・・闇夜?」
「ヒン!?」
「は?マジ?」
なるほど。ちょっとこれは不味ったか。
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