誰似?兄姉似
「よ、四位って」
「アーサーの一個下っすね。実際勝率もそんなんですし」
「相性良かないんだから仕方ないだろ・・・」
それはその通りなのだが、それに甘えるのは良くないな。
アーサーと舞戸の勝率は大体7:3。
直接の戦いでも割としっかりと格付けが済んでいる。
これは確かに相性が関わっているのは間違いない。
アーサーの防御を・・・正確には防御のためのアビリティが舞戸にとって天敵なのだ。
まぁそれ抜きの全体的な戦闘力でも負けてると思ってるけど。
舞戸の武器は二丁拳銃。
腰のホルスターに銃をぶら下げて攻撃時に引き抜く。
その引き抜いた瞬間にだけ攻撃力が上がるアビリティを装備することで火力を底上げ。
弾幕を張るのではなく、ただ一発のみを使い相手を撃ち抜く。
アルチャ氏が狙撃トップならば、こいつは早撃ちのトップ。
そしてだからこそ、そのアビリティを対策されると急に戦いづらくなる。
アーサーにはそこを突かれている感じ。
「へぇ・・・。でも四位だから強いんだよね?」
「そらもちろん。他の連中とか相手なら勝ち越してますしね」
「いや。俺マナさんとかは微妙に苦手なんだけど」
「それでも五分には持ち込むだろ」
マナ相手の場合、動かないと拘束されて魔法ブッパでKO。
だから動かないといけないんだが、そうするとこいつの早撃ち精度が落ちるからな。
そのせいで微妙に相性が良くないけど、撃てれば勝つんだからまだアーサーよりマシって所。
「宗次君だったら?」
「近寄ってドーン」
「こいつ弾避けるんで・・・」
「宗次君なら出来そうだね!」
「でしょ?」
ちなみにムサシは弾を斬る。
だから他のプレイヤーからはアーサーの立ち回りが一番参考にされている。
ランカーにしては珍しく基本的な立ち回り方が確立しているタイプだ。
それでもちゃんと四位にはなるんだから、まぁ地力はあるんだよなこいつも。
それでこいつが冒険者にならない理由だが、まぁお察しの通りだ。
「そっかぁ。銃が使えないから」
「そういうことっす」
「文字通り使えないって状態だからなぁ。どうしても」
使えないとは、許可が下りないとかそういう話ではない。
もっと根本的な部分の話。ダンジョンの仕様とも言える部分の話だ。
ダンジョンでは、銃が機能しない。
正確には火薬が意味を成さない。なので弾が飛ばないのだ。
よって銃が使い物にならない。
ダンジョン出現当初、世界中の軍隊を困惑させたクソ仕様だ
その影響を舞戸も受けている。
まぁそれ以外にももちろん理由はあるんだが。
「ほら。どうせなら戦いなれた道具使いたいじゃないですか」
「あー。宗次君も前にそんなこと言ってたね」
「そうですねー。アーサーも同じ理屈で剣と盾ですし」
ま、そんなわけでこいつは冒険者じゃない。なろうとも思っていない。
もしなるとしたら、それこそ来年千尋が冒険者になるって時くらいじゃないかな。
そんな話をしていたら、隣に座っているのにずっと俺達と喋ってるのが気に食わなかったのか、千尋が舞戸の服の袖を引っ張る。
「ん?どうした?」
「・・・」
「あぁ。何食べたい」
「ん」
「はいはい」
そんな何とも言えないやりとりをして舞戸が千尋の口元に揚げ物を持っていく。
千尋も当然の様にそれを食べる。
そしてその光景を見てなんとも言えない表情になる巡さん。
「・・・ねぇ宗次君」
「はい?」
「あの、千尋ちゃんて本当に」
「・・・ゴクン。まぁあれですよ。無条件に甘えられる相手ってこいつくらいなんですよ」
「あ」
俺達の親は、基本的に家にいない。
一年に一回帰ってくればまぁ良い方じゃない?ってレベルでいない。
そういう意味で、俺達には甘えられる人間がいない。
特に年上の人っていう意味なら、本当にいない。
俺が本来ならそうなんだろうけど、まぁ・・・俺は俺で色々あるからな。
千尋にとってそういう対象にはならなかった。
だから千尋にとって、舞戸は本当に特別な相手なのだ。
初対面の時から何を感じたのかは俺も分からない。
ただ千尋は、舞戸には俺やリアに対して感じているものとは違う感情がある。
それは親代わりなのか、別の何かなのか。
少なくともこれだけは言える。
千尋は、舞戸には全幅の信頼を置いているということだ。
ちなみに、これに関しては俺にもそういう人がいる。というか出来た。
「私?」
「イエス。リアはどっちかと言うと庇護対象なんで」
「そうなの?」
「そうでしょ」
「・・・そうかもね」
まぁ俺は千尋程露骨にならんが。
あんま妹に言う事でもないかもしれないけど、今のあいつはメスの顔をしている。
見ていておもろ・・・あいつは幸せそうだから何も言わないけどな。
「そうだったんだぁ・・・でも千尋ちゃんがああなるとは思わなかったなぁ」
「俺もですよ。なぁリア」
「・・・まぁ良いのだけど、彼に会うと暫くポンコツになるのよね」
「それで放置されるから、お前はあいつにアタリがキツイと」
「その分千尋に甘えられるんだからいいじゃない」
「そらそうだ」
そして千尋も千尋でそんな舞戸に構ってもらうのが嬉しいから黙ってる。というかもっとやれと思っている。
それは視線で分かる。今も俺に余計な事言うなって訴えてくるし。甘えながら。器用だなこいつ。流石だ千尋よ。
でもこいつらデートとか行かないんだよなぁ。
行ってもおうちデートっていうの?外に出かけることは無い。
まぁ外に行ったら行ったで千尋がどうなるのかは気になるけど。
あれかな。ハートのストローとか使うのかな。
「いやぁ。でもああやって甘えるのって誰から学んだんだか」
「・・・えーっと。宗次君」
「はい?」
「その・・・多分、二人からだと・・・」
「え」
「・・・」
「・・・ん?」
「・・・」
「・・・マジか」
「無自覚だったの!?」
リアを見たら何か視線逸らされたんだけどまさか・・・
「いやだって。今私と喋ってる間にもアメリアさんのお世話してたし」
「ハッ。無意識でつい」
「・・・宗次」
「はい?」
「あーん」
「あむ」
「あー!」
何か急に焼き魚の切り身を口に持ってこられたのでとりあえず食べておく。
すると巡さんが大きな声を上げて立ち上がる。
「私もやる!」
「・・・んぐ?」
「・・・千尋のこれはお前のせいなんだよなぁ」
「何か言ったか舞戸」
「なんでもねぇですよ」
この後滅茶苦茶お世話された。
「なぁ兄ちゃん」
「どうした陸斗」
「何で兄ちゃんたちは自分でご飯食べないんだ?」
「・・・好きな人に食べさせてもらう方が美味しいから」
「そうなんだ?。よくわかんないけど」
「そのうち分かるようになるさ。あ、そうだ。桃ちゃんとかはお義母さんに食べさせてもらうといいぞ」
「ママー!」
「はいはい」
そっちはそっちで平和な光景があった。
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