お料理コォォォナァァァ
「お料理コォォォォナァァァァ!!!!」
「・・・あの、蒼さん?」
「俺はあの妹は知らん」
見たこと無い発狂の仕方してるんだけど、あれは誰なんだろうか()
会議室から場所を移して、会社の食堂へ。
今日は休日だから食堂自体は休みで、自由に使っていいと許可も貰っていたそうだ。
随分と手回しが良いじゃないか。
「いや私も千尋ちゃんの料理食べたいなって」
「俺のちょっとした感動を返せ」
「そこの二人邪魔だからあっち行って」
「「ア、ハイ」」
厨房は千尋と巡さんの戦場らしい。俺達の居場所は無い。
ちなみにだが、マナはてんで料理が出来ない。
全く、さっぱり出来ないらしい。
「でも普通一回くらい料理しない?」
「あのですね。私の親は社長なんですよ」
「そんなんいったらうち・・・は違うだっけ?」
「何で疑問形なんですか」
「いやあんまり興味無いし。教えてもらえなかったから」
悪いことしてるわけじゃないってのは爺様から聞いてるんだけど逆に言うとそれしか聞いてない。
だから俺も千尋も、親が何をしている人なのかを知らない。
まぁ元気にやってればそれでいいんじゃないですかねくらいの興味はある。
「それ一般的には無いって言うんですよ」
「ぶっちゃけ近しい他人って感じがすごく適格な表現としてある」
「どういう家族関係?」
「こういう」
こんなんだから反抗期とか思春期・・・は今か?少なくとも面倒な期間は無いな。
何せ面倒を掛ける相手がいない。
「あ、でも昔はハウスキーパー・・・でいいのか?それっぽい人はいたな」
「ああ。流石にそういう人はいたんですね」
「結構若い人・・・だったような違ったような」
「そこも覚えてないんですかあなたは・・・」
何やら呆れられた気がする。
一応言い訳しておくと、その人がいたのは俺が七歳の時までの話だ。
そこからはその人じゃなくて、日によって違う人が来ていたくらい。
あとその辺りから爺様がよくうちに来るようにはなったな。
んでそこから千尋がキッチンを庭にするようになってからはそういう人も来なくなった。
「一歩間違えれば育児放棄だよなこれ」
「本人がそう言うんですねそれ」
「まぁ当時も今も困ったとか、悲しかったかと言われると別にって感じだしなぁ」
「・・・」
大人がいなくて不便だと思ったことはあったっけ。
「あ、そうだ。リアがうちに来たのはそのあたりだったな」
「あ、そんな小さいころからなんですねあの人」
「あの人って・・・そっか。千尋と違ってこの間が初対面か」
「千尋ちゃんも面と向かっては初めてでしたけどね」
リアは珍しく家族で旅行に言った時、その時が海外に行った時なんだが、そのタイミングでリアを引き取ったのだ。
今にして思えば、あれは俺が親に言った初めての我儘だったんだな。
妙に嬉しそうな顔をした親父を見たのは初めてだったが、だから嬉しかったのかもな。
「へぇ。その辺りの話は滅茶苦茶興味ありますね」
「残念なことに、そこまで話す内容も無いんだけどな」
「それ話すつもりが無いってことじゃないですか全く・・・ところで何ですけど」
「ん?」
「お二人のご両親って、どっちが二人に似てるんですか?」
「・・見た目の話?中身の話?それとも」
「言い方は悪いですが、才能の話です」
ああ・・・まぁ気になるよな。
俺達を深く知れば知るほど気になる話のはずだ。
ただの天才ならともかく、俺も千尋も特定分野に限っては化け物レベル。
だからこそ、それが親からの遺伝なのか、ただの突然変異なのか。気になる人間は多いだろう。
実際に聞かれたことは流石に無かったけど・・・その初めてがマナとはな。
まぁ別に内緒にする事でもない。
「そうだな。才能ってだけ見ると、俺達は親父に似てる」
「お父さんの方ですか。何か特別だったり?」
「あー・・・さっきも言ったけど、そこまで興味ないって前置きはしておくぞ」
「それはまぁはい」
「そのうえで、俺が知ってるあの人は割と化け物より」
「っ・・・それは、貴方から見てですか」
「ああ。俺より千尋に似てる。んで、年食った分まだ親父が上だと思う」
「・・・いやそれはそれで千尋ちゃんが怖くなってくるんですけど」
「分かる」
でもこれをあいつに言うと、いやお兄ちゃんに言われたくないって言われるんだよなぁ。
俺の場合戦うことに特化しすぎてるからあんまり比較にならんと自分では思ってるんだけど。
「それで?どういうタイプの化け物で?」
「いやだから千尋そっくりなんだよ。何でもできるタイプ」
「その中でも得意な物とかあるんじゃないですか?千尋ちゃんの料理みたいな」
「あー・・・そういう意味なら、人の懐に入るのが異常に上手いわ」
「ほう」
「気が付いたら世界中に友達がいるレベル」
「規模がえっぐい・・・あ、もしかしてアメリアさんも?」
「正解。その繋がりで知り合った人の娘」
そこから俺のお願いでうちの子として引き取られたわけだ。
あ、今話してて思い出したけど一つだけあの人致命的な欠点があるんだったわ。
「あの人、運動できないんだわ」
「・・・は?うそでしょ」
「スポーツが出来ないって言った方が良いかも」
身体能力自体は高い。でも鍛えてないから、そこは俺に及ばない。千尋以下なんじゃないかな。
でもそれ以上にスポーツが出来ない。
チームワークが無いとかそういうのじゃない。むしろそっちは得意分野だ。
出来ないってのは、本当にそのまんまの意味なのだ。
何故か、スポーツとなると急に何もできなくなる。
野球ならまっすぐ球は投げられないし、サッカーだって同じく。
テニスなら返したボールが上に飛ぶし、まっすぐでんぐり返し出来ない。
そのレベルでスポーツ音痴なのだ。
「え、えぇ・・・え?本当に実の親です?」
「普通に失礼で草。まぁ気持ちは分かる」
俺も千尋もどちらかと言えばスポーツが得意。得意と言うか、何でもできる。
千尋とかその気になればその部活でも学生トップとかになれるレベルだと思う。
俺だって身体能力的に考えれば、興味が湧けばいくらでも勝てるだろう。
自信過剰な様に聞こえるだろうが、普通に事実だし、学校の体育でもその部活動をしている連中に負けたこと無いし。
だからそちらの才能だけは母親からの遺伝だと思う。
あっちはあっちで、中々に変わった家系だからなぁ。
「あ、そっちは知ってるんですか?」
「爺様によく聞いてたからな」
なんなら俺達の苗字の戸村は母方の苗字だ。親父は婿入りしてる。
その理由もなぁんか色々訳アリっぽいんだが・・・まぁそこまでは聞いてない。
例にもれず、どうでも良い事だ。
「はいはーい。うちの家族話も良いけど一品目出来たよー」
「あ、じゃあ取りにって早い!?」
千尋の声が聞こえた瞬間に、厨房の入り口でスタンバイしていた巡さんから料理を受け取り済みである。
我が家では基本千尋の料理中は俺達がテーブルに配膳する決まりだからな。
「でも何故にチャーハン・・・?」
「中華鍋もあったから」
「すっごい理由だわ。いただきまーす」
「・・・え?こんなスピード感で毎日食べてるんです?」
「割といつも通りだと思いますよ」
「えぇ・・・」
まずは蓮華で触れてみて確認。
うん。いつも通り素晴らしいパラパラ加減。チャーシューも大きくカットしてあって俺好みだ。
ネギも多く入っている。これは千尋の好みだな。
「蒲鉾無しなのは?」
「リアの好みかなぁ。あいつ魚の切り身嫌いだから」
「へぇ。チャーハン一つで全員の好き嫌いが込められてるんですね」
「千尋がその辺こだわるの好きだからな」
ちなみにこれが巡さんが作る場合はもっと具材が大きい。
完全に俺の好みに寄る為だな。食べ応え重視。
「あと七分で餃子も上がるからそっちもお願いねー」
「ういー」
「同時に作ってるんですか?」
「割と普通だろ。今回は巡さんもいるし」
そもそもの具材切る速度だって速いからな。
それに今回あいつが使ってる包丁は特別な物だろう。
「なんだっけ、ダンジョンの包丁なんだろ?」
「えぇ。まぁかなり曰く付きですけど」
「曰く付き?」
何やら言いずらそうなマナ。何か隠しているようだが。
「あー。蒼は呪い装備に関しては知ってますか?」
「えーっと。武器ダンジョンで手に入る、外れ武器だろ?」
「それくらいは流石に知ってましたか」
「一応はな。人に薦めたこともあったし」
「なるほど。女子校に入り浸ってるとかいう話はそれですか」
「ひっどい言いようだなおい」
入り浸ってはないわ。
呪い装備と言うのは、文字通り呪われている。
武器ダンジョンで手に入るのは『呪われた直剣』という武器だ。
これは非常に厄介な武器であり、持つと脱力感に襲われるのだ。
故にダンジョン探索では使えない外れ武器。
でも性能は他の武器と比べても優秀と言う。
切れ味や耐久性に関して見るなら、手にはいる範囲度を考えれば破格になる。
呪いがなきゃ誰だって使うだろってレベルの武器ではあるんだよな。呪いが無きゃ。
しかしその外れ武器に何が・・・いやまさか。
「あの包丁それを潰して成形しなおしてるんですよね」
「とんでもない包丁だなおい」
それは大丈夫なのかと。
でもマナ曰く、一応大丈夫らしい。
「呪いの解除法自体は分かってますし、それをした上で加工してるんで呪い自体は残ってないんですよ」
「ほうほう」
「でも呪いを解くと切れ味も落ちちゃって武器としては使えないじゃないですか」
「そうだなぁ」
「じゃあ武器じゃなくて包丁にしようって」
「誰だそんなアホな事言い出したのは」
「私のチームメンバーですけど」
「何してんだお前のチームは」
なおこの説明は全部あの会議室にある時に説明が書いてあったらしい。
その上で気に入って千尋は持ってきたと。
まぁあいつなら持ってくるだろうなぁ。めっちゃ気に入りそう。
「何の躊躇いも無く手にしたときは流石に驚きましたけど」
「ちなみに、これでマジで問題なかったらどうなるんだ?」
「まぁ普通に販売されると思いますよ?」
「するの?呪いの包丁を?」
「いや解呪は済ませてますから」
それでも色々問題がありそうな一品だなぁ。
「宗次君餃子持ってってー」
「持ってきましたー」
「ありがとー」
「・・・えっぐいスピード感。というか、良くその速度で動かしてこぼしませんね」
「ん?別に難しくないだろ。気を付ければいいだけだし」
「それが出来る奴がまずいないんだよなぁ」
速度はともかく千尋だって走って落とさないくらいは出来るぞ。
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