コンゴトモヨロシク
「あいつらいつまで走ってるんですかね」
「私は意外と冷静な戸村君に驚きなんだけど・・・」
「ん?どうしてです?」
「いやだって・・・あれって、あの時戦ってたモンスターだよね?」
「そうですね。闇夜です」
「それって鎧の名前じゃないんだ?」
「元からあいつ自身にも使える名前をって考えてたんですよ」
別の名前も考えたが、あいつに合うって所ではこれしか浮かばなかった。
あと驚いていない理由は簡単だ。
俺はあいつがかつての姿で現れることを想定していた。それだけだ。
まぁ他の人には言ってなかったけど。
「てか言ったじゃないですか。またあえるーって」
「あれは生まれ変わったらとかのドラマチックなお話かと思ったんだよぉ」
「あー。確かにあれは言い方悪かったっすかね」
とりあえず、前から分かってたから驚いていない。
ただまぁ流石にこんな事で出てくるとは思わなかったけど。
もっと先のことになると思ってたし。
俺と闇夜の能力。
戦った時点での能力は、ある一点を除いてそこまで差は無い。
だがその一点。魔力だけは差があった。
その魔力も俺は別に闇夜の力を己の物にしたわけではないので俺の体には一部しか来ていない。
なのであいつはその失った分の魔力。自分で生成できない分の魔力を俺から補う必要があった。
それがもっと後になると理由だ。俺ではまだそれだけの魔力をひねり出せないと思っていた。
だけどまさか俺から強引に魔力を引っ張り出すとは。あいつマジで。
「ふぅ。落ち着いた」
「本当に大丈夫なの?魔力が無くなったって」
「ああいや。何でしょう。めっちゃ走って疲れたくらいの感じなんで」
普段あんまり動いてないのにいきなり激しい運動をしちゃったくらいのダメージだからまぁ問題ない。
魔力は肉体面より精神面の方が影響を与えやすい関係か、今めっちゃ帰りたい。帰ってゴロゴロしたい。
でもまだ夏精霊たち帰ってきてないからなぁ。
それにあいつらまだ走ってるし。
「ヒヒーン!!!」
「がんばれー」
「■■■!!!」
「怒ってないあれ?」
「勝手に魔力持っていた罰ってことで」
それにしてもあのイルカ精霊は何故闇夜を追いかけているのか。
声や動きの様子から喜んでいるのは分かる。
何か年上に構ってもらってる下の子みたいな感じだし。
「あ、それは分かるかも。千尋ちゃんに遊んでもらってるうちの子があんな感じだ」
「ただどうしていきなりあいつに懐いたかが・・・いやまさか」
一つ心当たりと言うか、理由としてそうでは?というものはある。
でもそれを今はもう判断できないんだ。
あいつが鎧となって俺の中にいる関係上、あいつが元々何であったかなんてわかるわけがない。
まぁそれの方が分かりやすくていいのかもしれないけど。
「久しぶりにあった親戚のおじちゃんみたいな感じなのかな?」
む。日坂さんもそのつもりは無いんだろうが似たような結論になったようだ。
俺の考えはこうだ。
イルカ精霊は、精霊というモンスターの中の特殊個体。
だからこそ同じ精霊と言えど通常の精霊に完全には馴染めない。
そんなところに、同じ精霊の特殊個体が現れたらどうなるか。
つまり俺の考えは、闇夜が実は精霊だったのではないかということだ。
戦った時は俺側に魔力云々の能力が足りなくて分からなかっただけって理由で判断が付かない。
鎧になってからはその性質がかつてとは違うので今も分からない。
だからこれに答えは無い。
でもイルカ精霊の様子を見るに、それだと納得がいくのだ。
「ちなみに俺は親戚の叔父に会ったこと無いんですよね」
「・・・そういえば私も無いや」
「えぇ」
まぁ別に会わんでも良いでしょ。
暫く闇夜がイルカ精霊に追われているのを眺めていると、足元に一体精霊がいた。
その手には何かが持たれている。
どうやら魔石のお礼を持ってきてくれたらしい。
「何だろうこれ」
「んー?サンゴですかね」
「え?サンゴってこんな丸っこいっけ?」
「丸いのはまぁ本来は加工したやつですね。もしかして丸めてきてくれたのか?」
聞いてみると首を横に振られる。え、もしかしてそのままであるの?すごいなダンジョン。
サンゴを受け取ると精霊はその時初めてイルカ精霊と闇夜に気が付いたらしい。
そちらを見ると一瞬驚いて、そのままそちらの方へ走っていった。
「追跡者が増えた・・・」
「だ、大人気だね」
果たしてそれが闇夜にとって良いのか悪いのか。
まぁ俺には関係ないし、魔力が切れれば勝手に戻ってくるだろ。
そうこうしていると続々と精霊たちがお礼を手に戻ってくる。
その中にはもちろん、今回の目的である水の宝石もあった。
ただ想像してたより大きいものがあった。
「野球のボールみたいなサイズだね・・・」
「これいくらになるんだ?」
水の宝石は魔法の媒介として最高級ランクの素材らしい。
適当に杖にくっ付けただけで水の魔法の性能が跳ね上がる。
大きさ次第で効果は変わるそうだ。俺にはあんまり関係ないな。
でもこれがあまり有名じゃないのは、やはりここの危険度の高さだろう。
気を付けていれば襲われはしないがそれでも完全ではない。
それに魔石を精霊に上げても確実に手に入るというものでもない。
そもそも魔石自体の需要が高く、現時点では魔法にしか使えない宝石は優先度が低いのだ。
協会としては当然皆が求める物を手に入れるのを優先するからな。
魔法に使えるからって欲しがるのは一般の人じゃなくて、魔法使いを抱えてる企業とかくらいだろう
だが間違いなく渡した魔石以上の価値がある。
少なくとも魔石で稼ごうってつもりがあまりない俺からすると、ここを利用しない理由が無い。
渡された物を鞄に収納し終わるのと同時に闇夜が戻ってくる。
背中にはイルカ精霊。体のあちこちに夏の精霊をぶら下げながら。
心なしか奴の背中が煤けて見える。
「・・・」
「ぶっwww闇夜おまっ・・・あはははwww」
「ダメだよ戸村君笑ったらー」
「そういうひ、日坂さんも口角上がってる・・・ふひっ」
「・・・」
もう好きにしてくれとばかりにその身を投げ出した闇夜。
そしてそれを受けて今まで以上に群がり始めた精霊たち。
もはや闇夜は精霊たちのテーマパークだ。
それを見て爆笑する俺。隣で微笑む日坂さん。
ダンジョンとは思えない平和な時間だ。
精霊たちは満足するまで遊ぶと地面に潜って消えていった。
どうやらお終いのようだ。
闇夜も開放されてほっとしたような表情をしている。
「お疲れさん」
「・・・」
「んだよその目はー。お前だって無理やり魔力分捕ってただろ」
「・・・」(ブンブン
「いやそれはお前が鎧のままでいたら追われなかったのでは???」
「・・・」
「でしょ?」
「戸村君。何言ってるか分かるの?」
「いや全然」
「え」
「ただ目が口ほどにものをいうって感じ?ですかね」
目を見れば分かるのだ。疲れたから帰りたいというこいつの意思が・・・!!
「そ・・・それは戸村君じゃ」
「正解です」
ぶっちゃけ魔力抜かれて疲れたから帰りたいよねっていう。
「だからお前も戻ってくれると嬉しいんだけどなぁイルカァ・・・!!」
「キュー!!」
いやなのーっとばかりに今は俺の腕にしがみつくイルカ精霊。
どうも闇夜と離れたくないらしい。
でも闇夜は俺からの魔力供給が無いと今の姿の維持は出来ない。
離れすぎると消えてしまうだろうし、動きすぎればそれだけで魔力消費に俺の回復量が追いつかない。
闇夜もそれは分かっているし、そもそもこいつだって俺との約束の為離れるつもりはないようで。
イルカ精霊に諦めろと、俺の腕から離そうとしているが意外とこいつ力が強い。
疲れた俺と、疲れた(メンタル)闇夜では全然びくともしない。
「戸村君。かわいそうだよ。どうにかならない?」
「どうにかって言われましても」
日坂さんはそんなイルカ精霊の必死な姿を見てかわいそうだと思ったらしくそんなことを言ってくる。
でも俺そういう方面はちょっとなぁ・・・
戦ってどうにかなるもんじゃないし。
いや連れて行くこと自体はまぁ良いんだ。でも多分こいつダンジョンの外に出てこれない。
「モンスターって基本外に来れないじゃないですか」
「あ、そっかぁ」
「キュ?」
「モンスターってのはな?特殊な事例を除くとダンジョンの外には出れないんだよ」
「キュ!?」
どうやらこいつ知らなかったらしい。
基本的に、モンスターは出現したその階層から動かない。
例外は階層を移動してくる特殊個体。奴らは特定の階層に縛られずに移動して暴れる。
だから早急な討伐が必要なのだ。位置が分かる時に仕留めないと、いつ被害が出てしまうか分からなくなるから。
そんな特殊個体でも、ダンジョンの外に出ることは叶わない。
ダンジョンが出現して間もないころにモンスターを研究するために様々な機関がモンスターをダンジョン外に持ちだろうとしたが無理だった。
成功例は僅か一つ。偶然手に入れた魔道具を使用した場合にのみ外へ連れ出せる。
だけどその魔道具はそれ以降見つかっていない。
当然俺が持っているわけもない。
だからイルカ精霊を外に連れ出すことは出来ない。
可愛そうでも何でも、出来ない物は出来ない。
「そうなんだぁ・・・」
「キュゥ・・・」
落ち込むイルカ精霊を優しく抱きしめる日坂さん
それを見て何かこっちが悪い事した気分になって思わず闇夜と顔を合わせてしまうが、どうもこいつも同じ気分らしい。
でも無理なもんは無理だしなぁ・・・
「闇夜君?闇夜ちゃん?」
「性別無しなんでどっちでも良いですよ。なぁ?」
「ブルル」
「じゃあ闇夜ちゃんみたいに、戸村君の中に入れれば良かったのにね」
「キュー」
「そうですねぇ・・・ん?そうですね?」
また闇夜を見る。するとこいつも今気が付いたらしい。
そういえばそうだ。こいつ精霊かどうか知らんけど大本はモンスターじゃん。
鎧になってるけど、こいつ外に出てきてんじゃん。
「闇夜。あれってあの子にも出来ることか?」
「・・・」
た、多分?みたいな何ともしっかりしない。
どうもあの時はこいつもぶちあがってたみたいでノリと勢いでやっただけらしい。
「キュ?」
「ああいやな?こいつ今俺の中に入って鎧になれる・・・ってそれは見たか」
闇夜に声を掛けて姿を鎧に戻して俺に纏わせる。
そうすることで俺達が普段どういう状態でいるのかを見てもらう。
「こいつみたいに、俺の力になる?的な感じなら一緒にいれるk「キュ!!!」おぼっ」
「溶けちゃった!?」
言い切る前にイルカ精霊が俺に突進してきた。
だがそれでぶつかることは無い。直前で闇夜が闇でガードしてくれた。
衝撃は俺に来てしまうが、問題はそこじゃない。
日坂さんが言うには、イルカ精霊が闇の中に溶けるように消えていったらしい。
「え、何これ。どういう状況?」
「と、戸村君?体はなんともないの?」
「なんとも・・・あれ?本当に何ともないな」
いやでも何か違和感が・・・ん?もしやこれは・・・
「キュー!」
「うおっ!?」
「キャ!?」
何か体に、特に足に違和感を感じていると急に胸の部分からイルカ精霊の顔が飛び出してきた。
いやさっきより小さい?魔力が減ってるのか?
「もしかして闇夜と同じ状態に・・・?」
「えぇ!?そ、そんなすぐに出来るのそれって?」
「いや分かんない・・・お前ら本当にどうなってんの?」
「キュー」
「あー・・・まぁ良いか。これからよろしく」
「キュッキュキュ」
闇夜と違って、イルカ精霊はまだ感情が分かりづらい。
でも多分。今はこう言ったと思う。
これからヨロシク!ってね
「しかし黒狼の方も把握出来てないのにまた増えんのか。てか何だ俺は歩く動物園か」
「あははは・・・まだ増えそうだね」
「それはそれでどうなんでしょうね・・・」
あんまりこいつら増えてもゲームじゃ強くなれないからなぁ。
でも経験は詰めるか?それは活かせるな・・・じゃあいいか。
感想で何でイルカ精霊が寄って来たか本編内であると言ったんですけど無かったんで補足。
イルカ精霊は主人公も話してましたが精霊というモンスターの特殊枠です。
なので価値観や行動基準が通常の精霊と違います。
そうなると微妙にその場にいる精霊たちとは馴染めない。だけど嫌われるわけでもない。
中途半端な位置にいた中で現れた強大な魔力を秘めた特殊モンスター(闇夜)の存在を感じ取り近づいた、という感じです。
本来主人公の方が表に出ているので感知するのは難しいのですが、それでも闇夜の存在に気がつけたのは階層難易度から来るレベルの高さが原因です。
補足終了!多分本編でもどっかで書くので読み飛ばしてOK




