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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
3章 噴血いと烈しきは生まれ出ずる折の

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99【最強の一撃】ブレイブ・チャレンジャー!【3000vs5】(3)

 どうぞー。

 作戦会議は、いつも通りそれほど紛糾も長引きもしなかった。ブレイン二人と下っ端三人、といった組み合わせの五人は、それほど複雑な作戦も立てず、ノリと楽しみを重視している。


「つまり、暴れ回ればいいってこと?」

「シェリーさんは、ゆっくり進んでくだされば問題ありませんぞ。レーネさんとコンビを組んで、露払いをしてもらいますので」

「バフをいつでも受け取れるのですね。いつもより多く斬れそうで、とても楽しみです」

「よ、よろしくね!」


 シェリー・ルゥは、【使徒】の義務として課される毎日の強制クエストで経験値や装備を集めている。そのため、戦闘における勘や経験では、「水銀同盟」でもひときわ劣る立場である。


「あ、そうだ。これ」

「えっなに、魔法?」

「魔法使うなら、シェリーがいちばん強いでしょ? アンナ、これも計画に入れられる?」

『らくーに、できちゃうよぉ。とは言っても、別に作戦は変わんない。二人ともに、たったひとつだけタスクが増えるだけ』


 二人いるブレインのひとりは、たったひとことだけを告げた。




(うひゃあ……レーネちゃん、やっぱりヤバい子だ)


 悪鬼と見まがうほどの恐るべき笑顔で、集まった中でもトップ層に近い猛者を切り伏せている。


「どうにか“聖女”を堕とせ!!」「届かないんだよ!」

「届きませんよ、そんな魔法は」


 シェリーの身に着けている装備は、銀から金等級で統一されている――


 毎日のクエストをこなしたことで、グノーシア正教会への貢献度が大きいとされた彼女は、市井でも“聖女”と呼ばれていた。救貧院や治療院での治療や、浮浪者の請け負う救貧クエストの支援、復興の手伝いなどなど……「さっとこなせるから」と毎日繰り返されてきた無意識的な慈善は、彼女の地位を確固たるものにしている。ゆえに、教会や市井の人々からの感謝は篤く、たくさんのアイテムを受け取っていた。


「らッ……ぐぉっ、固ったァ!?」


 レーネの護衛をかいくぐって、背後から振るわれた剣に、旗竿を合わせる。火花すらほとんど散らないほど、棒は恐ろしく固い。固いということは。


「えいっ!」

「ごぶぁッ」


 子供が長い棒を、そうとイメージする何かカッコいい武器として振るったかのような……あまりにも稚拙な攻撃は、しかし男を捉え半身を圧潰させた。平均的に高いステータスは、装備品の補正も合わせて、すべて四百を超えている。ジョブが〈治療師〉だけであるにもかかわらず、【使徒】の補正だけでそこまでにたどり着いている。


(うぅ、たぶんフィエルちゃんに追い越されてるよね……)


 いくつかの同系統ジョブを合わせて強化すれば、耐性の偏りこそ出るものの、彼女は今よりはるかに強くなることだろう。学生としてそれなりに真面目にやっている彼女は、そこまで熱心にゲームをやってはいない。それほど強くならないのも、当たり前といえば当たり前だった。


『聞こえていますか? あちらの合図があり次第、すぐにお願いします。わたくしを巻き込んでいただいても、まったく問題ありませんので』

『ダメージはないけど、前みたいに目が潰れちゃったりとかしないかな……?』

『順応ができない剣士などいませんよ。心配しないでください』

『リアルファイトできそうな子は違うなぁ、すごいね』


 数の暴力と殲滅力という戦いは、彼我の戦力差によって成功率が大きく変動する。そして何より、二人のブレインが言っていたこと……「ダメージを出す工夫」をしているか否かで、命運は大きく分かれる。


(玉華苑、フィエルちゃんはお花多めで編成してるんだろうな。攻撃が途切れないから「残響」がすごい起きるし、アイテムがよく壊れるし壊されるから「花火」と「砕焔」の悪用コンボも出てるし)


 ダメージが起きる回数を増やし、属性スペクトルを広げ、植物の数や種類を調節する。幸い【使徒】のそれには害虫が発生しないため、完全に狙い通りの現象を起こすことができる。シェリー・ルゥの調整した玉華苑は、いわゆる「きのこ編成」=魔法主体の戦闘を強く補助するものだった。


 状態異常も使えず、害虫も発生しない。アイテムを多く消費することもなく、HPはいくらでも回復できるが減りもしない。【使徒】は、こと付加ダメージを出すことにおいては非常に不利な立場にある。しかしながら、【使徒】が戦いにおいて苦戦することはない。それは、そんな小細工に頼らずとも強いからである。


『……音が止みました。備えてください』

『了解だよ!』


 事前に打ち合わせをしていた作戦はたったひとつだけだった。



――フィエルには徹底的に、ぶち壊しまくってもらうよぉ。その音を合図にして、砦を落とされたから本隊を狙って逆転! な人が集まるよね。

――クラスタルにこの魔法を登録して、同時発動できるいちばん多い数で。

――「光」が見えたら、自分たちの周りを撃って。



『見えました!』


 夜の森から、光の槍が立ち昇る。恐るべき数の消滅エフェクトと、赤と青のイナズマが駆け抜けた。


 森の上を浮遊していた、石ひとつずつに分割されたクラスタルには、誰も気付かなかった……そもそも、夜空を見上げて、数センチ程度の石ころを発見できる目の持ち主などいない。それができることは知られていても、たとえ以前まったく同じことをしたとしても……「聖女さまの直接戦闘が見られる」という事前情報と、レーネ=〈彼岸花〉が踊るように敵を蹴散らす光景に、思考という思考が圧殺されていた。


「〈スパイラルっ……〉!」


 レーネがやや遠くに離れたすきを狙って、数十の攻撃が殺到する。その暴威よりも、自らの力への信頼が勝る。


「〈……ブレーザー〉っ!!!」


 その数、五つ。


 天より降り注いだ光の螺旋は、「守られる少女とギリギリの護衛」というカバーストーリーに集った蠅たちを灼いた。


「やった……! ほんとに上手く行ったよ、レーネちゃん!」

「うまく相手を騙せましたね。二度引っかかるのは、どうかと思いますが」

「や、別に騙してたわけじゃないよぉ……」

「そうでしょうか」


 戦いに怯えていたのは事実であり、レーネの護衛が少々甘くなりがちだったのも本当のことである。しかし、MPを貯めに貯めてから魔法を放つ作戦が、本体から行われる……あるいは防衛のためだけに行われる、という推測は誤りだった。


「進みましょう。わたくしは、まだ斬り足りません」

「だと思った……」


 無数の死を思わせる〈彼岸花〉の二つ名を得た少女は、微笑みながらシェリーを先導して歩いた。

「光芒」

 玉華苑によって励起される付加ダメージのひとつ。樹木を植えるとキノコが生えてくることがあり、これらキノコが存在することで、消費MPの200%ダメージを2回発生させる。「MPを消費する攻撃」はほとんどのジョブに存在するため、どの意志・ジョブでもとても使いやすい。湿度設定を高くして樹木を植えまくり、キノコを多く生やして「光芒」の発生回数をひたすら増やす「キノコ編成」はかなりオーソドックスで、とても強力。




 トリガーにデッカーときたら? そうだね、ブレーザーだね!(ウルトラマン)

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