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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
3章 噴血いと烈しきは生まれ出ずる折の

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98【最強の一撃】ブレイブ・チャレンジャー!【3000vs5】(2)

 どうぞ。

 玉鋼陣営「刃亡哭(カタナキ)」「鮮血紅夜」統合拠点前。五階建ての要塞を背にして、四十人を超えるメンバーが集っていた。


「遊撃は前と同じ、白バニーと刀持ちだ。早いが、」


 時が止まった――


 空に描かれた、流れ星の橋のようなものから、白いバニースーツの少女が飛び降りる。ひとりが飛び降りて地面に着地したかと思うと、空中にいたまったく同じ姿の少女が、自分よりもはるかに大きなボールを思い切り蹴る。ボールは、時間結界に当たって停止した。いくつもの角度から繰り返されたそれは、数秒で終わる。


 さっと集まってきた少女たちは、燃えるようなオレンジの斬撃を飛ばす。その斬撃も結界に止められ、ほんの数秒のちに続いた斬撃も同じように止まった。


 指示を飛ばしていたリーダーの背に、指鉄砲をすっと近付ける。


「さーん、にー、いち……」


 内部が薄青くなっていた時間結界が、ぷつりと破れた。止まっていた巨大なボールが、十八連撃が、要塞とギルドメンバーを蹂躙していく。


「なんッ」「動いちゃだーめー」


 背中に当てた指鉄砲が、びくりとリーダーをのけぞらせ――


「なんちゃって?」

「ぐわあっ!?」


 放った〈プリズムスパーク〉と〈リンクボルト〉が、生き残りを蒸発させた。


「略奪権は私にあるんだよね。何も獲らないから、安心してね!」


 自分の身長と同じくらいにまで潰れた要塞に手を振って、少女はスキップで去っていった。




『初手時止めはズルくないか?w』『ガチで本気出したらこうなるのか……』『反則を堂々と使うあたりマジのガチっぽいな』『温情あるぶんエグさ増してる』『ひどくて草』『鬼やんけwww』『戦ってるやつは配信見られんのがキツいな』『↑そっちのが反則じゃろ』


「悪くないコンボだな。〈プリズムスパーク〉と〈リンクボルト〉、耐性貫通効果を付けてから複数ヒット。玉華苑がかなり調節されている……」

「あらら。うちで買ったスクロールは、まだ使こてくれてはらへんね」

「いいものが見られるなら、俺たちも金を使うぞ」

「……そういう使い方は、推しのためにならへんで」

「ならやめておこう」


 ちょろい人やわぁ、と涼花はあえて口に出す。


「それにしても……Tier表ではそれほどじゃなかったが、なかなか使えるジョブだな」

「あの子がミルに売った情報だと、六つの武器全部使いこなしてようやく、七つ目の武器が使えるそうよ。それにしても、別に火力は出てないけど」


 フィエルが使っているステッキは、中確率で魔法のヒット数が一回増えるTTの試作品だ。そして、エフェクトを見る限り「光芒」ダメージが六回出ている。属性スペクトルは全色、装備の強化エフェクトからして偶然できあがったものだろう。


「いちばんの課題は、マルチタスクが面倒すぎるところだな。順序立てるのは得意だが、あんなに並列はできん」

「ボールでトランポリンしながらカード投げて分身して杖で魔法使こて、分身はオート操作やけど飾剣はちゃんとコピーして、ハットで召喚やら時計もちょくちょく入れて。なんべん練習しても上手くやれる気せぇへんわぁ」


 最低でも、つねに三種類の併用が前提になっている。画面の派手さはいちばん上だが、あれでも「水銀同盟」では最弱とされ、ふだんは封印している技もほぼ使っていない。ようやく〈セット・スタンダード〉を公開したが、あれは初期技である――疑似時間停止への対処こそできないものの、その間に出せる火力などたかが知れている。何より、モンスターの回避ルーティンは人間のそれよりはるかに優れているため、使用するアドバンテージはほとんどないに等しい。


「これが【愚者】かぁ。愚者ってか素直鈍感って感じだけど」

「ブレインは、手綱をずいぶん上手く握ってるなぁ。ありゃーすごいじゃじゃ馬だろ」

「ほうやねぇ、買い物はしてくれはるけど要求はえげつないで」


 画面を見ていたディリードは、「片っ端からやっていくな」とつぶやく。


「何が狙いなんだ……?」

「何もないんちゃう? 強いて言えば、やけど」

「やけど、何だ」

「新技の披露、したいんちゃうやろか」


 控えていたメンバーたちが、徐々に集合しつつある。よく使う〈リンクボルト〉に備え、雷耐性防具やジョブまで変えたものが集まっているが……そんなものに意味はない。


(映っとる範囲やと、「知恵の木」と「喫茶もふわんこ」がいちばん頑張ったはるねぇ、あそこは生き残るやろけど)


 スクロールを売った当人である涼花は、その詳細を知っている。しかし、そこから先のこと、それをどう使うかは知らない。広範囲を狙う攻撃魔法である以上、人数を集めて使うのだろうが……何かが間違っているようにも思われる。


「――あのカード、赤かったな?」

「せやねぇ、うちの子は魚介系ちゃうか、て言うてたけど」

「だいたい読めた。よりによって、“あれ”か」

「逆に、あれって封印できたんだなぁ。このぶんだと、「ミルコメレオ」にも隠してたか。ってことは、ここ数日姿が見えなかったのは」

「ははっ、かわいいとこあるね。努力家なんだ」


 ロッコンの言葉に、察したオメガは笑った。


 画面の中の少女は、ぴょこぴょこと跳ねながら空中を歩き、拠点を破壊しながら参加者を誘導していく。


(みんなが見てるんはフィエルはんやし、ハイライトもそっちやけど……ま、守秘義務に反するし、言わんといてあげよ)


 フィエルは、あの魔法のスクロールを二本(・・)買っていった。「全員が新技を習得している」「フィエルはTTから魔法のスクロールを買った」、ここまではBPBの面々も知っている情報である。つまり、ミステリにおける遵守すべき原則=公正な情報開示(フェアネス)には反しない。


(ギルドホームの映像ないっちゅうことは、そういうことやんなぁ)


 お互いに別々の真実にたどり着いた代表ふたりは、静かに笑っていた。

 頭いいみんなはもう分かったかな?(いつものクソ高ハードル) ディリードの推理はちょっと難しいんですけど、魔法の方はちゃんと分かるようになってるので、当たってたらひゃっほいしてくださいな。

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