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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
3章 噴血いと烈しきは生まれ出ずる折の

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97【最強の一撃】ブレイブ・チャレンジャー!【3000vs5】(1)

 次は赤くなる!


 どうぞ。

 配信企画「ブレイブ・チャレンジャー」前哨戦。三千人の猛者が集うエーベル近郊の森は、大層にぎわっていた。


「おーおー、大盛況だなあ。強いヤツだいたい揃ってるじゃあないか」

「俺たちが出てきてよかったのか、リーダー?」

「今回は参加しない、と明言してあるからな」

「うふふ、たまにはだらっと視察だけの時間もアリよね?」


 そういうことだ、と――ディリードはレジャーシートを広げる。


「お弁当セットを買ってきた。食材ごとの味を覚えておこう、これからの攻略に役立つ」

「おい、ディリード! 俺と戦え!」


 居並ぶ猛者どもの中には、“最強”の称号を奪わんとするものもあった。無表情に不快をにじませる青年を無視して、ギルド「ビッグバン」の男たちは剣を向けた。ところが、そこに狼の耳と尻尾を持った和装の美女が現れる。


「あらら、えらい人気者がいはるなあ。主役はあっちにいるんやから、本番に温存しとかなあかんでぇ」

「お前、涼花か! ちょうどいい、まとめ」


 バァアアンッッ!!! と――真っ黒い手が上空からやってきて、地面に掌の跡が深く刻み込まれた。ざわめく周囲をよそに、涼花はディリードの方へ進み、高下駄を脱いでレジャーシートに座った。


「あーあ。こんなんも避けられへんのやったら、“最強”には勝てへんやろなぁ」

「……何をしに来た」

「たまには商売抜きで、おんなし配信見ぃひん? 配信てそういうもんやん」

「あらぁ、涼花ちゃんったら。アタシはいいわ、一緒に見ましょう?」


 るるラ♡ヴは、正座を横に崩した淑やかな座り方で、上品に笑った。


「……まあ、いいか。配信に映っていた、あのカード。お前はどう見る」

「あれ、うちとこで買うてもろたやつと違うやつやわ。ここ数日ぜんぜん捕捉できてへんから、カンデアリート近くを通ったくらいしか分からへんで」

「注目してるのは分かるが、そこまで追うか?」

「あんたの方が戦うんやから、情報買うてくれてええのにね」


 ディリードには絶対の自信がある。


「……フィエルの投げるカードの速度が、敏捷にしておよそ七百相当。八割程度あれば対応できるなら、敏捷が五百後半あればすべての攻撃に対応できる」

「思ったより考えてはるんやねぇ。意味なさそうやけど(・・・・・・・・・)

「言っちゃうなよ、キツネさん。それ込みで考えるものなんだ」

「オメガはんはガチロマン勢やもんねぇ……」


 そのとき、かわいらしい文字で「待機中」と表示されていた『たてわきサフォレちゃんねる あそびばー』と『とっこのゲームを歩こうCh.』のホロウィンドウに、同じ面々が映った。顔つきが変わったディリードに苦笑しつつ、涼花もまた、口を閉じて画面に集中する。


 白いレオタードを鎖で縛り、要所に鎧をつけた変態「とっこ」。そして、青い衣服と白い鎧で固めた男装の少女「たてわきサフォレ」。後ろに控えるのは、赤いミニ丈、ややゴスロリ風の浴衣を着た「レーネ」に、チーズケーキ風と言っていた白バニーの「フィエル」、青いイヴニングに顔を隠すベールをつけた「シェリー・ルゥ」の三人だった。


『みなさんどうもこんばんはー、徒歩で来ちゃったとっこでございますよー』

『やほやーほー、今日はサブキャラ! こっちを「たてわきサフォレ」って名前にしたよぉ。いつものあそびばーに来てくれてありがとね』

「待ってた」「口に出てるよリーダー」「すまん」


 前にも聞いた説明を続ける二人の配信者は、そうしてメンバー紹介に映っていく。敏捷のステータスで許される限界を攻めたキーボード操作を横目で見ながら、涼花は内心で思考を整理していた。


(過激化しかせぇへんような企画を次に進めるなんて、配信者としてはよぉない判断やと思うんやけど。PVPを一手に握りたいとか思てるんやろか)


 千人を五人で相手取る、そのインパクトこそが「魔王チャレンジ」のキモだった。ほかでは使えないネタになってしまうほどに、ギルド対抗戦の見栄えは「それ以外にない」ものと化している。


(どっかで負けといた方がええんちゃうやろか。それもそれで、どっちに転ぶもんか分からへんけど)


 グダグダっぷりを笑いで流せる段階なのか、絶対に勝つという期待を背負ってしまっているのか。視聴者がどちらに傾くのかは、いまだに分からない。そして何より。


(みんな、ちゃんと強ぉなってきてるんよね。いつまでも無双できるとは思えへんのやけど、どういう見せ方になっていくんやろ)


 懸念に応えるように、画面の向こうの少女が笑った。


『さて、いつメンの五人。今日は全員、新技を引っ提げてきております!』

『よく噂になってる、白バニーさんの変身も! ちゃぁんと映るよぉ』


『うおおおおおおお』『見たいすぎる』『全員……』『え彼岸花も?』『あの人あれより強くなる余地あるんか』『聖女さまのバトル本邦初公開ってマ?』『ゆーて白バニーさんはもう見せるもんなくない?』『↑武器的にまだ見せてないの多いよ』


 カタタタタタタッッ、とすさまじい表情でキーボードを叩き終わったディリードに、オメガとロッコンはつい噴き出していた。


「リーダー、知らない人に噛み付くのやめなよ」

「俺はあの人にエンタメを期待してる。メスガキ道化師の大幹部ロール、意識してはいないんだろうが……似合っているんだ」

「語り出したなあ。もしかして自分で戦わないのも」

「ファンは推しと一線を引くものだろ」


 最強と並ぶと言われてはいるが……フィエルはディリードには決して勝てない。人気配信者に絡んでただ負かす、そんなつまらない画は誰も望んでいない。ほかならぬ彼自身もまた、それを見たくない筆頭であった。


『うんうん、みんなの拠点がセーフティー解いたのを確認できたよぉ。ちなみに、ここにいる全員ちゃんと本人で、分身置いて先に攻めたりとかはしてないからねぇ』

『それでは始めましょう、「ブレイブ・チャレンジャー」。開幕ですぞー!!』


 カメラの前から、三人の姿がかき消えた。

 ディリードの強さをきちんと見せられそうな相手がいねぇ……(設定が強すぎる)と思ったので、ちょっと活躍してもらう。


 これまでのフィエルは〈道化師〉(白)→アステリス・ランドドラゴン(蒼)→イデアイドラ・ヴァイン(紫)。次は赤、そして黒になる予定です。黄色と緑も欲しいよね……また情報整理して設定集に置いとかないとですね。

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