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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
3章 噴血いと烈しきは生まれ出ずる折の

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95 キャンディーは呑むとあぶないから先に砕いておきます

 どぞ。

 ボールの攻撃は物理で打撃だから、もろい敵には強い。けれど、属性特化の敵を倒すなら飾剣の方が強い。対多数戦だと火力が跳ね上がるバッファー、というすごく微妙な立ち位置の私は、ボス戦より雑魚処理の方が向いている……けれど、こういう状況には逆に弱い。


 スクロールを買った魔法はいくつもあるけど、対多数ならやっぱり〈リンクボルト〉か〈ウェザーフレア〉だ。敵をめちゃくちゃ集めれば強いのもあるけど、ほぼ魅せ技なので、あっちは温存しておく。


「まずは、ばん! だねー」


 ゴォウンッ、と連鎖する雷が弾ける。すさまじい轟音がドームにこだまして、アイスキャンディーなのかマジパンなのか微妙な人形が、てろりと溶けていった。そこまで強くはないけど、ボールに向けて氷柱を撃ってくるのがちょっと痛い。ボールはセット運用前提で、セットのうちひとつが壊れるとどんどん残りの攻撃力が上がっていく――けど、やっぱり数はあった方がいい。


「フィーネ、そっちはどう?」

「かなり削れています。そちらが進めば、何か……」


 凍ったクリオネは、また笑い声をあげる。すると、アイスキャンディー人形が縦にバキッと割れる。中に入っていた光球がパキパキと凍り付いていって、ぐわっと開いたクリオネの口に飛び込んでいった。


「回復!? 配下食べるのはズルでしょ!」

「これはひどい……」


 いつもブーメランを飛ばしているせいか、初めて私の言ったことに「お前もだ!」みたいなことを言われなかった。成長を感じてどやー顔をしながら、クリオネに解の持つデバフがもうひとつかかったのを確認する。


 最初にかかった耐性ダウンと同士討ちを受けるようになる【群喰み】に続いて、幸運が下がり続けていく【凶ツ星】も増えた。こうなったらもう勝ちのように思えるけど、基本ステータスの「幸運」は戦闘にはあんまり関係ない。


「敵の運が悪くなっていく、はず? だから、そういう攻撃してみて!」

「あいまいですね。構いませんけれど」


 いつもの「水銀同盟」で戦うときも、幸運デバフはほとんど見ないから、具体的に何が起こるのかはよくわからなかった。カードを投げ、ボールをぶつけ、魔法で焼き尽くしたアイスキャンディー人形たちは、敵の笑い声ですぐに追加される。魔法職がいないと地獄だろうな、と思いながらも、ガンガン減らしていく。


「クゥァアッハアハアハハアーハ」

「ざんねん、もう溶かしちゃったよー?」


 食べようとしても、もうキャンディーは砕けて溶けたあとだ。クリオネが開いた口に、フィーネが宝石の爆弾を投げ込む。ズドンッ、と体内に爆炎が光り、敵は身をよじって悶える。


「カァア、カッガ、ァアーガ……」

「喉が焼けたようですね」

「……ちょっと悪いことしちゃったなー」


 ものすごく苦しそうな声を出すクリオネは、フィーネの回し蹴りで粉砕された。


「ふー。思ったより長引いたね」

「言いつつ何とかできるのはさすがです。目的は達成できたのでしょうか」

「アンデッドと精霊を捕まえに来たから、これでいいかなー。フィーネは? 完成に近付けそう?」

「この程度では足りませんが、錆落とし程度にはなりました」


 そっかー、と笑いながら帰還用ゲートをくぐって、港に戻った。




 テイム用の空間に戻ったフィーネを見送って、手近な箱に座った。いつもなら売る封印カードだけど、今回はテイムするから、カードデッキを増やして専用のデッキを作った。


「スケルトンかー……下級だと育てるのが楽しいとか、クリームが言ってたっけ?」


 あの人も〈座長〉候補だと思うけど、じつはもっと厳しいのか、推薦がないとダメなのかもしれない。クエスト条件の候補は、ただのガイコツである「スケルトン」と、雪の結晶みたいなマークのついた角つきマシュマロ「フロスト・エレメンタル」の二種類だった。


「……やっぱり、知ってる人に聞いた方がいいかな」


 ささっと操作して、エーベルに戻る。


 まだ破壊の痕が残っているけど、かなり復興が進んできていて、以前の街並みの形が取り戻されつつある。魔法もスキルもあるし、プレイヤーが資材をガンガン補充するから、ほんの数日でここまでできたのだろう。


「素材ごとの魔力浸透率の比較検証はかなり進んだな。より時間がかかるはずだったところを、作業を肩代わりすることでデータをもらえるなんて……」

「属性魔法もいいが、汎用魔法の方がより重視される理由もわかった。生活をするだけならこちらの方が便利だ。彼らにとって、戦いは避け得るものなんだな」

「あ、前の頭いいひと!」


 筋肉ムキムキの眼鏡コンビは、前に「ミルコメレオ」のカフェにいた人だった。


「……その最高に頭の悪い言い方、もう少し直してもらえないか?」

「フィエルさん……「白バニーさん」だったな。何か用かな」

「転職条件のためにテイムをやるんですけど、いろいろ聞きたくて」

「「なにっ!?」」


 声が重なって、顔を見合わせたあとこっちに向き直る。


「語らせて、くれるのか……?」

「データベースならある。全行程を説明できるぞ」

「えっと、……できるだけ、手短かにお願いします……」

「「ああ!」」


 長くなりそうだった。

 テイムモンスターがどうなるかは育成方針と適性次第なので、たまに「これやだ!」って言って自分で方針を決める子もいたり。

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