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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
3章 噴血いと烈しきは生まれ出ずる折の

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93/166

93 最大公約数はみんな見慣れてるから怖くない

(2025/10/14 内容差し替え)


 どうぞ。

 道化師系統のジョブは、三つに分岐する。より戦いに特化してたくさんの武器を使える〈血濡れ道化師(キラークラウン)〉、さらに種類・数を増やしてモンスターの使役を極めた〈座長〉、幻惑とバフをより強化する〈夢現霧歩(ドリーマー)〉。


 どれも悪くないとは思うけど、キラークラウンだけにはなりたくない。転職条件は「NPCを殺害して血を浴びること」――そのキャラのメインジョブが固定されるのも良くないけど、恥とか人気取りとかじゃなくて、絶対にやりたくなかった。


「……このへん?」


 盆地にあるエーベル、山の中腹にあるベルターに続いて、第三の街「カンデアリート」は谷川を見下ろす崖にある。霧が多くてちょっとした穀物しか育たないけど、風が吹くから粉挽きはすぐにできる。エネルギー源の鉱石もたくさん算出するし、モンスターから食材も落ちるから、そこまで生活は大変ではない、らしい。


 とはいっても、ここから見えるのは風車だけだった。


「飾剣を差し込むと開く、斜め向きでねじらなくていい鍵穴……」


 高くけわしく切り立った崖は、〈面歩〉スキルがあってもちょっと怖い。けれど、今回用があるのは山に登って村に入るルートではなく、崖そのものだ。ダウジングみたいに飾剣をかざしながら、何か反応がないかを探してみる。たまにきれいな石ころを見つけて拾いながら、角度的に村がいっさい見えなくなるあたりで、剣先にぼうっと鬼火みたいな光が宿った。


「んーと……? あ、あった!」


 崖の方に歩み寄っていくと、アンナに聞いた通りの鍵穴があった。まるで何かのハンコみたいなマークの中心に、斜めのスリットがある。念のため、予備の飾剣を差し込むと……すっとスムーズに入っていった。


 魔法なのか科学なのか、まるでホロウィンドウのような円形が出てくる。SF映画で見る、手でつかんで回転させる何かのようなものが、自発的にぐるっと回った。


「これ、何の技術なんだろう……」


 ファンタジーにはだいたい何でも登場するけど、からくりや呪術も登場するから、見ただけだと技術体系は分からない。ぽっかり空いた穴をくぐると、そこはすぐ、アンナの言っていた通りの光景になっていた。


 ひどく大きな洞穴と、ちゃぷちゃぷ音がする廃港のような場所。地下に隠し港を作っていたようで、設備はかなりしっかり揃っているけど……港の半分は凍り付いていて、船のほとんどは氷に吞み込まれていた。そして、ボロボロになった帆船だけが、氷の上に座礁している。


「入り口、……あった」


 ボロボロになった船底にはいくつも穴が空いていて、人が通れるサイズのものもいくつもある。あちこちから入るのもいいんだろうけど、今回の目的はかんたんなものだから、とりあえず入れればいい。


 歩くたびにきしむ木の床は、ところどころ抜けている。めちゃくちゃ乱暴にすれば壊れそうだけど、私くらいの重量なら床が抜けることはなさそうだ。


『フィーネ、今日は幽霊船に来てるから、お留守番ね』

『床が抜けてしまうのですね。承知しました』


 ひとこと告げてから、船室をひとつひとつ見ていく。明らかに入った船の大きさより大きい気がするけど、部屋ひとつずつは思ったより小さかった。


 宿舎らしい部屋、食堂らしい広いスペースに、事務室なのか作業室なのか、詳しくないと分からない部屋。ワンフロアすべてを回り切ってもいないけど、モンスターが何も出てこない。ジャンプスケアなのかな、と思っていると、階段が目に入った。


「あそこかな」


 カードデッキを用意して、下に降りていく。ぎし、ぎしと鳴る階段と、ハイヒールの鳴らすコツコツという音が不思議にマッチして、へんに面白かった。


 そして、妙に軽い足音が聞こえてくる。


「来た……!」


 ちっとも灯りがなくて、光を放つ氷がこびりつくところ以外は、光量がちっともない暗闇。かこっ、かこっと妙なつくりをした何かが、寒い洞穴の中で古びた床材を踏む音。ぼう、と赤い小さな光が灯る。


「あーぁああ……」


 それは、まぎれもなくガイコツ――


「〈シールバインド〉!」


 ――私が捕まえに来たモンスターだった。

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