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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
2章 救罪矛償:あなたの足が訪れる

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88 手放す満足もまた喜び、育てるのも喜び

 どうぞ。

 まるでゲームのキャラのような――というとおかしな言い方になるけど、それなり以上の売り上げを期待してデザインされたような、ものすごく凝ったデザインのNPCだった。


「まだ、スキルレベルは6くらいですよ」

「いいよ。一度にできる仕事が少なくって、時間がかかるだけだろ。レベル上げに使ってくれればいい」

「ずいぶんと穏やかじゃないか……ほんとにジェロゥか?」

「奪って手に入らないなら、真っ当に買うよ。で、どうなんだいフィエルくん。こっちの注文通りにやってくれれば、それなりの額を渡せるんだけど」


 じゃあ何かな、と一瞬も待たずに続けられてしまう。


「ボクが作った〈石臓魔術〉を教えてあげようか? 旅人は好きそうだと思ったんだけど、どうかな」

「なんですか、石像魔術って」

「石を彫ったもののことじゃあないぞ。人形や器械に石のハラワタを仕込んで、成長する命に作り替える魔術だ」

「すごいじゃないですか!」


 さっと割り込んだ影は、グレリーさんとルイカさんだった。


「騙されちゃだめ。こいつは街をいくつも滅ぼすくらい、欲望まみれなの」

「贖罪のつもりですか? こんなことなら呼ぶんじゃなかったな……」


 前言撤回……というほど直近の言葉じゃないけど、「悪い人じゃなさそう」というのはけっこう間違っていたようだ。やっぱりヤバめのやらかしをしていたり、本物のテロリストがいたりもする……「我慢より享楽」という言い方もものすごかったけど、その我慢の利かなさの到達点が「欲しければ殺す」なのだろう。


「あまりボクを苛立たせるな。あの連中も、ボクが帰ってくるのが早ければ、一人で片付いていたんだぞ」


 杖をとんとんと叩き、ジェロゥは苛立っているようだった――「受けます」と言った瞬間に、「よし!」と一瞬で機嫌が直る。


「仕方ない、約束を守るところを見せておかないとな……おまけにジョブも付けてやる。おや? おぉ……君は〈座長〉になれる素質があるのか」

「あ、見えるんですね」

「何のために千年生きたと思ってるんだい。クエストにしておこうか」

「ヴぇっ」


 ジョブに〈傀儡師〉、スキルに〈石臓魔術〉が増えて、クエストに「座長を目指せ」というかんたんな名前のものが追加された。


「本当にいいんですか? 機嫌を損ねても、死にはしませんが」

「これも縁ですから。もらえるものはもらっておきたいですし」


 オヤジさんにお礼を言って、食事を切り上げる。


「ひとつずつ仕上げてくれればいい。まずは十二個、それぞれ指定した形に仕上げてほしい。時間は……まあ、受け取りに行くから、順次渡してくれるかな」

「わかりました。そういえば、他にできる人いないんですか?」

「二百年くらい前にはいたが、水で磨く宝石はここ七十年で集めたものばっかりなんだ。もともと人間の技術じゃあないからね」

「それもそうでしたね……」


 何なのかよく分からない、水のモンスターを倒して手に入れたスキルだ。二百年前にいた人も、同じ方法で手に入れたのだろうか。


「じゃ、ボクはこれで。助けが要るときは言ってもらっていいよ、これでもグレリーよりは強いからねえ」

「えっと、はい……?」


 酒場の扉を開けて、ジェロゥは去っていった。


「強い人、多いんですね」

「そりゃあ、自分より強い敵と戦う機会が多いわけですから……。自然と、強者と戦う方法も身に付いてくるというものです」

「それでほんとに強くなるんですね」

「フィエルは違うの? 敵が強いぶん、人が弱く見えるでしょ」

「それは、けっこうありますね……」


 基本的に、一回二回攻撃してもぜんぜん意味がないし、渾身の攻撃を十いくつ連撃・再発動させても相手が倒れないことはそこそこある。でも、プレイヤーと戦うとかんたんに吹き飛ぶし、攻撃にぜんぜん耐えてくれない。ふだんのモンスターが強くなりすぎていて、考え方があっち基準になってしまっているのだろう。


「さて、そろそろお開きにしましょうか。それにしても、あなたたち旅人は……さもしい真似をしない。信頼してよかった」

「さもしい?」

「バスケットもお菓子も、盗まなかったでしょ。少しは持って帰ってもよかったのに」

「そんなことしませんよー。預かりものを自分のものにするなんて」


 えらい、とルイカさんに背伸びなでなでされてしまった。


「どちらかというと、【愚者】は信頼されなくて当然の人間ばかりでして。僕らのようにまともな生活をしているものの方が少ないくらいです」

「私は真っ黒。まともな生き方なんてしてない」

「聞きませんから、言わなくていいです」

「うん」


 こっちの住民にも来歴や生活、仕事が設定されていて、性格もある。設定だけ調べている人は楽しいだろうけど、ちゃんと人として生きているんだな、と思うと少しだけ尻込みしてしまいそうになった。


「では、いくらかお包みしますから、お腹が空いたときに食べてください」

「おっ、そうだな。どれがいい? 補給に食うもんだから、腹に溜まるもんにするか」

「それじゃ、これとこれと……」


 簡単なお弁当セットをいくつか受け取って、私は酒場を出た。

 実はあちこちにこれまで読んできたラノベのオマージュが仕込んであってぇ……って言っても伝わんないと思いますので、言って面白そうなときか設定集で言うことにします。

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