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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
1章 情華咲き、月にしぶき映す

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8 おうちをつくろう(1)

 どうぞ。

 目の前で進化した〈ダイナ・キプルス〉は、ぐりぐりと首をかしげて、ドンッと踏みつけ攻撃をした。さっと出したボールに乗って〈ギガントスケール〉を使い、玉乗りの状態で〈は図み軽魔ジック〉を使う。連続で踏みつけや尻尾叩きつけをした敵は、どうやら足元を地震状態にしてまともに戦えなくするタイプらしかった。


「怖いなぁ、玉乗りできてなかったら詰んでるよこれ……」

『前衛崩してから後衛もまとめて、だねぇ。やっばいね』


 銅色の恐竜たちは、投げたカードをまとめてはたき落としている。銅はめちゃくちゃ柔らかいと聞いたことがあるけど、さすがにカードで切れるほどではなかったようだ。


「〈セット・スタンダード〉……あれ、効いてない!?」

「なんですかあれ」

『時間止める結界だよぅ』

「制限は厳しそうですね」


 急遽〈ホット・アラーム〉と〈ターミナル・ベル〉に切り替えて、〈リンクボルト〉を使った。三体チェインはしたけど、ボールをきちんと配置していないから、威力はすこし低い。念のために〈アクセルハート〉も使っておく。


『何種類くらい武器持ってるの?』

「六種類だよ。カードボールステッキハット、時計に飾剣」


 すべて装備してはいるけど、いくつかは飾りに見えていたらしい。白バニーなんてかなり凝ったデザインの衣装だから、相当ハイディティールだと思われていたようだ。


『しょっけん……? あ、剣舞に使う切れないやつ?』

「そうそう。ベリーダンスとかの」


 震動が通じないと見るや、恐竜はこちらに接近してきていた。乗っているものとは違うボールを使って陣を敷くが、震動攻撃で地面が荒れているせいか、うまくつながらない。


「ゴゥゴ、ゴ」


 さっき付与した〈ターミナル・ベル〉のカウントダウンは、まだひとつも減っていない。そして〈ホット・アラーム〉が発動して、雷が炸裂した。さらに動きが鈍った敵は、その場でどんどんと足踏みをする。ちゃんとしたリズムを刻んでいて、ただの地団駄のはずが、太鼓のように聞こえた。


 そして、地面がもっと揺れ始める。


「なになになに!? 震度5くらいあるよこれ!?」

「落ち着いて、ゲーム内だからこれ」


 地面が割れて、ドリルが出てきた。ずるずると上方向に伸びたそれがぱっくり割れて、牙だらけの口がのぞく。いわゆるワームのようだ。


「毎回新登場するなぁ、もう!」

「なるほど。フィエルさんといれば、このような不測の事態がつねに」


 すごい速度でやってきたレーネが、楽しそうに刀を抜く。


「いいですよね、フィエルさん」

「うん、いいよ。めっちゃお願いしたかったし」


 ワームが伸ばす触手をさっと切り払い、私が恐竜に集中できるようにしてくれている――けれど、そんな必要はなくなった。三体いた〈ダイナ・キプルス〉が何かにぶっ叩かれたかのように吹き飛び、そのまま停止してさらさらと砕け散る。


「ゴガッ、ガ」

「あら、今のは?」

「〈ターミナル・ベル〉。カウントダウン分のダメージ受けるの」

「面白いものですね、時計も」


 言いながら振るった刀が、ワームの頭部をザックリと両断する。あまりにも強烈なダメージを受けたせいか、死体が光になって大爆発した。


「これでいい、よね?」

『だいじょーぶ、とっこってすごく頭いいから』

「そうなんだ……」

「疑っておられるご様子ですなー。これでも名のある配信者なのですぞ」


 みんながどのくらい戦えるかを見て、みんなで戦う相手を選ぶということだった気がする。どんな評価なんだろう、と言葉を待っていると、満足げに目を細めている。


「最っ高でした。これなら最高難易度だって行けます、お約束できますぞー!」

『やったねみんな! レーネは信じてたけど!』

「なんとなく分かる。この子強いわ、ほんとに」

「凡人組だね、私たち」


 違うと思うわ、とシェリーは握手しつつ首をかしげていた。




「というわけで、ここを第一キャンプにしますぞ!」

『いぇい!』


 街からずいぶん離れた森の中、拠点にしてくださいと言わんばかりの、ぽっかりとウロの空いた大木があった。秘密基地感があって、すごくいい雰囲気だ。


「何か建てるんですか?」

『じつは、セーブポイントって作れるらしいんだよ。でっかい拠点じゃないけど、木のウロから通じる洞窟! みたいな?』

「アリババのような、ですね」

「たとえが古典だよ!?」


 ウロは思ったより深いけど、洞窟というほどでもない。


「掘るの?」

「すこしね。そこに種を植えますとホームにできるのですがー……」

「もしかしてですが、まだないんですね?」

「そうなのですなー、じつは……」


 テストプレイのときには、そういう方法であちこちにギルドホームができていたらしい。どうやって種を入手するのかと思ったら、アンナが手を挙げた。


『パーティークエストの〈虚空の芽の間伐〉ってやつがあるんだぁ。そこでホームの種みたいなやつ、交換できるんだよぅ』

「五人で挑むの?」

「え、この五人の敵になるようなやつ……?」

「いやいや、そこまでではございませんぞー。あ、フィエルさんが参加していますから、そちら少し気になるところではありますな」


 毎度のように進化したり強敵を呼び出したり、バリエーションは少なめだけど強化幅はすごい。複数人で挑む前提の敵がさらに強化されたら、いったい何が起こるのだろうか。ちょっとだけわくわくしている自分がいる。


『ささ、結成記念にさくっとクリアしちゃおう!』


 初めてのパーティークエストが始まった。

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