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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
1章 情華咲き、月にしぶき映す

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7 エキシビション・バトル!

 どうぞ。

 アンナは城壁のある街には入れないから、村か新しく作ったところに拠点を作ることになる。説明だけ聞くと大変そうだけど、アンナはもともと人見知り気味だから、こういうのも楽でいいかもしれない。


「最初は何するの?」

「まずは、できうる限りの金額を用意します」

「ふむふむ」

「そして、街ではないところにある砦か何かを買い取ります」


 すごく冷静に言うから聞いてしまったけど、ずいぶん無茶なプランだ。


「できうる限りって、どのくらい……?」

「何十万ディールもかかりますね」


 やっぱりポンコツだった。


「私はお金儲けには向いてないよ? 【愚者】の特性って、浪費みたいだし」

「浪費といいますか、財産捨てて笑う感じでしたなー」


 これも呪いかー、ととっこは苦笑している。【愚者】が同伴したそれ以外の意志のプレイヤーは、より質のいいアイテムが入手できるから、たぶんそれなりに儲かる。パーティー内に一人でもいれば、全員がかなり得をするはずだ。


『それじゃーパーティー組んで、危なそうなとこ行こうよ。みんな強いでしょ?』

「あ、さっきダンジョンクリアしてきたよ。もっとすごいとこあるの?」

「おおっ、さすがアンナの親友!」

「なるほど、あなたがアンナさんの周りにいる強者の実例でしたか」


 なんだか過大評価されているけど、訓練の成果だ。


「そーでした、あたし配信とかするのですがー。みなさん映っても大丈夫です?」

「いいよ」『私はいつもと顔いっしょだし』「構いません」「まあ、たぶん……」


 シェリーだけあまりはっきりしない返事だったけど、そこまで問題はなさそうだった。じゃあまずは、といかにもな呪い装備のとっこは言う。


「一人ずつエキシビジョンしてみませんかー? ちょっと強めの敵がいるとこ存じ上げておりまして、フィエルさんを連れてったらもっと強くなりますし。ソロ無理そうだったら助けに入ればいい、とゆーことで」

「えっ、みんな自信あるの? 私ちょっと不安」

「問題ないない、あたしもダンジョンソロできましたぞー。 すーぐ助けに入れます」

「わ、わかったよー……」


 付き合わせていいのかなと思ったけど、移動するうちに不安は溶けていった。どこも強そうに見えないのに、道中で出くわした敵を瞬殺しているのだ。


「シェリー、それどうやってるの?」

「ビーム撃てる武器なの」


 なんとなくコンロセットみたいな、三方向にカギヅメの伸びた宝石と水晶玉のセットを示された。武器カテゴリ〈クラスタル〉……「集合体(クラスター)」と「結晶体(クリスタル)」を合わせた造語で、チャージできるビーム砲みたいなものらしい。すすっと降りてきたクモや飛び出してきたウサギは、びゃっと撃ったビームですぐさま消滅していく。


「これだけ強かったらだいじょうぶだと思うけどなー。ささ、見えてきましたぞー」

「お、おっきい……恐竜?」


 岩山の近くに、その岩山に壁画として書かれたものと同じ、岩の恐竜みたいなモンスターがいた。見ると〈ダイナロックス〉という名前が浮かび上がる。動きはゆっくりで、そこまで強そうには見えない。


「どんな感じのやつなの、とっこ?」

「遅くて固め、弱点が出てきたらすーぐ終わりー、ですな。何回か同じ場所に攻撃当てたら割れますので。危険ございません」

「わ、私でも倒せるよね……たぶん」

『回数が大事みたいだねぇ。無理になったら言って?』


 いつの間にか最低ラインということになっているらしく、シェリーが不安そうに進み、恐竜の前に出ていった。


「……大丈夫なのかな」

「おそらく、それほど問題はありません。一角の武人として、あの方もあなたと並ぶほどかと」

「レーネはそういうの分かるんだね」

「なんとなく、ですが。武術や体術以外の強さも、だんだんと見えるようになっています」


 イヴニングにベールの全身寒色なシェリーが、ダイナロックスの視界に入った。いきなり襲いかかるのではなく、何度も威嚇している。手をかざしたところに旗が出てきて、ちょっと困惑した。


「旗……?」

「〈フラッグ〉とゆー武器がありましてな。陣地を作る系。振っても強いので【使徒】には重宝されておりまして」

「あの子も二種類使ってるんだね」

『〈道化師〉は武器多いんだっけ? たしかに、ふたつ以上出すのは珍しいかもだね』


 ブォンと恐竜が尻尾を振ると、シェリーの旗がゴギンッとそれを打ち返した。まるでホームランのような、気持ちがいいくらいのフルパワーだ。音がちょっと怖かったけど、続いてビームをどばばっと撃つと、装甲がすぐに割れた。


「出たー!」

『すっご!?』


 文字通りの瞬殺と言ってもいいくらい、かなりの早さだった。何か理由でもあるのかなと思ったけど、ステータスがひたすら高いかららしい。ではではー、と続いたとっこもかなりの速さで倒し、アンナもほぼほぼ瞬殺だった。


「どうやってるのか全然わかんないよ……なにこれ」

「うーん。直接戦闘に参加してないと、【愚者】の意志アビリティが発揮されてない可能性がありますなー。ベータで悪用されたか」

「ベータ……テストで?」

「そーそー。パーティーメンバーにいればいいってことは、最悪街に置いてきても報酬がもらえちまうわけで。別行動の稼ぎができちゃうんですなー」

「悪用されてたんだね、この仕組み」


 要するに、仕組みが修正されたらしい。


「じゃー、敵が強くなるところ見せてもらいましょっかー。ほれほれ」

『ほれほれー』

「ぜひぜひ!」

「なんでみんなそんな期待してるの……」


 群れのうちの一体だったのか、恐竜はまたのそっと這い出てきた。堂々と真正面から歩いて近付くと、急に恐竜の目が光を増す。


「ゴゴッ、ゴウウ……!」


 そうして、敵の変化が始まる。尻尾を地面にドスンドスンと叩きつけたかと思うと、装甲の表面が剥がれて銅色の皮膚が出てくる。そして、もう二体同じ姿の敵が、岩山の壁画からずいっとにじみ出るように出現した。


「おー! これが【愚かな賭け】なんですね!」


 実際に口に出されると、すごくバカなことをしている気分になる。けれど、これも私に足りなかったハジケに違いない。


「見ててね、すぐ終わらせるから!」

 ランキングは見るまいとランクイン情報はかたくなに避けていましたが、見たら日間22位にまで登り詰めていました。あ、ありがたいすぎる……!! できるだけこのままのノリで突き進んでいきますので、これからもよろしくお願いします。あ、そうそう。



「クラスタル」

 直径十センチほどの水晶玉と、かぎ爪状の結晶体を組み合わせた魔道具。エネルギーを溜めて強化された魔法を放つ。手に持たなくても操作することができるため、現実でほんとうに何も戦闘っぽいことを経験していない人におすすめ。運営から明言こそされていないものの、配信や紹介ではクラスタル・符・タクトが初心者救済用として語られることが多い。


 元ネタは『崩壊:スターレイル』最序盤に登場したエネミー「ヴォイドレンジャー・改ざん」(ローズオルフェノクみたいで異様にカッコいい)の武器。ビットのように周囲を漂う球体・花びら(?)を合体させて、すさまじい火力のビームを放ってくる。

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