59 人脈とお金と知識の総力戦!
どうぞ。
『おつつ』『何あのボール』『愚者はバカじゃないってのは確かにそう』『堪能、致しました……』『ソロ配信見たい』『ほかのボスもヤバかったけどここダンチじゃね?』
コメント欄を見ると、大盛況だった。
『フィエル、お疲れさまぁ。かなり盛り上がってたよぉ』
『うん、今見てる。コメント読みする?』
『ううん、今はいいよぉ。私たちの方で巻き取るから』
『ありがと。じゃあ戻るね』
みんなを促して、ギルドホームに戻った。
「おかえりなさい。すさまじい戦いぶりでした」
「あ、レーネ。そっちは何と戦ったの?」
「こちらはカボチャの群れでしたよ。それなりでした」
「レーネの「それなり」はなんか、わかんないや……」
かなり疲れた様子のシェリーは放っておいて、私とレーネ、とっことアンナで来てくれたみんなを帰した。次々に街に帰っていくみんなを見送ってから、体育館くらいの大きさのホールの、端っこに置いた椅子にそれぞれ座る。
『ありがとね、みんな。めちゃくちゃ急な話だったのに』
「私は良かったけど、二人はだいじょうぶだったの? けっこう長時間、知らない人と」
「思ったより立ててくれてね……イメージと崩れてもお美しい! とか、本気で言われて戦慄しちゃった。戦慄なんて言葉人生で初めて使った、ほんと」
「皆さん、技をすこし指導するだけで喜んでくれるので。リアルで門下生になっていただければと思ったのですが、さすがに住所氏名をお教えするわけにもいかず」
二人とも、方向性の違う苦労があったようだ。
「いやー、みんな面白い人だったね。大選隊みたいだったよー」
『さすがにそこまでじゃないと思うよぅ。コンビネーション完璧だから、入り込みづらかったかもだけど』
さながら追加戦士の二話目、と微妙に分かるような分からないようなことを言いつつ、アンナはぱんと手を打った。
『みんな大人気だったねぇ。さすがだよ』
「いやぁ、本当に助かりましたぞー。写しても問題ない人や、視聴者の好む傾向もある程度まで見て取れましたので……「水銀同盟」が何をすべきか、よく分かりました」
『ふっふっふぅ。結局は私が正解だったんだよ!』
「うむ……間違いはありませんでしたな」
頭のいい二人組は何か答えを出したようで、配信の方向性もはっきりと定めたようだった。
『方針は個別に伝えるからねぇ。あ、でも……フィエルはここで言っとくよぉ』
「えっ、何かしちゃった?」
『逆。ちょっとコメント欄パンクしちゃうくらい、ハイライトになっちゃう』
「……のが、どうなるの?」
文字通りにするのですぞ、ととっこが微笑む。
「普段の配信にはあまり出ずに、辻映りでファンを稼ぐのです。そして! たまーに「水銀同盟」本部の配信に出てもらうのですなー。すると、配信をしている人もお客様にできますし、辻映りを見ていた人も誘導できます。出稼ぎといったところですかな?」
「なるほど! ここのファンになってくれる人を、よそで稼いでくるんだね」
『そういうことだよぉ。がんばってね、切り札』
「りょーかい」
あ、と配信内で言われていたことを思い出した。
「ねえ、アンナ。テイムモンスターって何がいいかな?」
最初の街であるエーベルの大通りから少し外れた場所、アクセスのいい飲食街のはずれ。黒板マークのある喫茶店は、看板にものすごく微妙なものばかり出していた。
「耐性メニューとか、食べる人いるのかなぁ……」
「おきゃ――〈ラフィン・ジョーカー〉ですか。お食事ですか?」
カフェの店員さんのようなメガネの女性が、いぶかしむような顔でこちらを見ていた。
「あ、いえ。食事もいいんですけど、情報が欲しいんです」
「お入りください。できる限りの応対をしましょう」
お店に入るなり一瞬だけ会話が止まるけど、すぐにそれぞれの会話に戻っていく。
「検証によれば、属性のない素材を属性付き素材と組み合わせて装備を作ったとき、割合で属性の発揮値が異なるそうだ。こうなると次は」「生態で進化先が変わるモンスターの情報が新しく追加されたな。地域ごとの死者数とジョブの割合を検証すると、かれらの持ち物を吸収したと思われるスライムがいることが分かる、これは」「感情がエネルギーとして計算されていないのは発見だったな。逆に言えば、パラメータだけですべてが決まるということでもあるが」
すごく頭のよさそうな会話が、あっちこっちから漏れ聞こえている。
「何か興味のある話題が? 聞くだけなら構いませんよ」
「あっ、えっと。そろそろ空腹度も上がってきてるし、メニューください」
「……ええ」
注文したミックススムージーを飲みつつ、ここはあくまでカフェなんだなぁ、とどこにも似合わない白バニーを着替えるべきかとさえ思った。
「欲しい情報は何でしょうか。あなたにとって価値あるものとなると、こちらでご用意できるかどうかも分かりませんが」
「テイムモンスターの情報が欲しくて……リストとかありますか?」
店員さんは、少し首をかしげた。
「【愚者】であることは言わずもがな、あなたはソロ向きの戦い方をしていたようですが。どうしてその発想に至ったのでしょうか」
「もともと、強い敵相手だと長引くことが多くて。攻撃が強い子が欲しいです!」
「……考えてみれば、音と比較して威力は低かったですね。大剣の攻撃があの頻度で当たっていれば、数秒で倒れるはず」
「そうなんですよー!」
ちょっと大声を出して立ち上がってしまって、「すいません」と周囲に誤ってから小さめに座った。
いちばん強いはずの〈熔充送戯〉を十六連撃、〈ホット・アラーム〉でもう一回起動しても、相手を倒せていないことがあった。連発できる攻撃は威力が低い……だけではなく、いちばん強い技も微妙に届かないことがある。ギリギリで決められることも多いけど、決まらなかったりもう一回でなんとか、ということも多い。
「というわけなので! 情報、見せてください。五十万ディールまでなら払います」
「……現在判明しているすべてのリストを持ってきます。少々お待ちを」
ギルマスも怒らないよね、と聞こえたつぶやきを聞かなかったことにしつつ、私は店員さんを待つことにした。
じゃあ亜空間するね……みんなァ! 混合珈柯亜キメろォおおお!(おすすめしません)
あ、レシピを言ってませんでしたね。ほぼ無炭酸エナドリです。
「亜空間会話(以下略)がいつも飲んでるココア」
・ココアパウダー(森永のミルクココア) 大さじ2杯
・インスタントコーヒー(ネスカフェゴールドブレンド)だいたい同量
※味を保てる限界まで、できるだけ少なくすること
・牛乳(濃いヤツはマズくなるのでNG)だいたい300ml
1,350ml程度のマグカップにココアパウダーとインスタントコーヒーの粉を入れる。
2,牛乳を注ぐ。だいたいコップの上端から5mm以内に注ぐ(少ないほど濃くなる)
3,2分~2分30秒程度、電子レンジで温める。季節によって変動。
4,よくかき混ぜる。そのままだとコーヒーが浮いていて味の調和が乱れるため。
※肝臓を著しく傷めるので一日一杯まで、カフェイン・糖分などの依存性を考えてできるだけ薄く作ることを考えてください。健康被害については、こんなバカ飲料を実際に作った時点で自己責任とします。




