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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
2章 救罪矛償:あなたの足が訪れる

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58 【白バニーさん登場】即興PTで未攻略踏破計画! メノイ病描穴(4)

 どうぞ。

 張っていた糸が溶けて、キノコ王は地上に降り立った。


「みんな、私は壁からやるね!」

「相分かった」「了解です!」


 古代魚と夕焼けの海、そして流れ星。「月泳流星のおもて」は、結界を展開する解を持つ。腰にはさっきまで付けていた「潜靴堂裏」がある。意志の証が増えるほど、経験値が分けられすぎてレベルアップが遅くなる……このキノコの王も、ここからはほとんどレベルアップしなくなるのだろう。


 けれど、仮面にはそれぞれの解がある。


「マッシュッシュ、もはや力の差は歴然ッコ」

「そりゃあどうかね……こいつはリアルでいくらでも撃てるから、と思ってたが」


 ふつうの銃を出したダンさんは、一発撃った。


「ああ、やっぱりなァ。みんな、仮面は本物だぞ!」

「ハハハハハ、そりゃあいい! やっと俺の本領発揮じゃあないか」


 取り出したカードを示し、シューク・リイムは歪んだ笑みを浮かべた。


「さあ〈バレットストーム・ワスプ〉。やってくれ」


 カード使いのほとんどは、モンスターを封印して使役することで戦う。ハットで防ぎ、ステッキで魔法を撃っていたけど、彼はあんまり火力を出していない様子だった。弱点を狙い撃ちにするハチたちは、嬉しそうにブンブン飛びながら針を連射する。


「マッ、シュ……!? ワレはこれほど強くなったというのにッコ――」

「ほんとですかぁー? とっくにわたしに“堕ちてる”のに」


 振り下ろした拳が、ぐ、ぐ、ぐっと恐ろしいほどの勢いで減速していく。道中で聞いていたけれど、〈夢魔〉の能力は本当にすごかった。


 こつぶちゃんの防御力は、ふたつのジョブを習得していてなお、私と大差ない。〈踊り子〉も〈夢魔〉もバッファーだから、本人が前線に立つようなステータスをしていないのだ。身に付けているものも、初期装備に毛が生えた程度のもので、防御は固めていない。けれど、スキル〈腐堕絡塗戒〉は、「自身が攻撃されるとき、現在ステータスで受け止められる程度の威力になる」という力がある。


 防御補正のない【愚者】でしか習得できないモンスタージョブだけど、こういうふうに巨大で力の強い敵には抜群の力を発揮できる。


「この力も、ワレのものにしてやるッコ……!」

「あははははっ! あなたがわたしのものになるんですよ?」


 上半身にはいくつもボールがぶち当たり、壁で跳ねるそれはぐらぐらとキノコ王を揺さぶり続ける。


「ちょこまかとッコ! ええいッ!」

「どうだい王様、道化や踊り子に翻弄される気分は」

「マッっシュ……! 王の怒りを甘く見るなッコ!!」

「お前さん変わってるねェ、素敵な女のコに囲まれる夢から醒めたいのかい。オーケー、そいじゃあ気つけをくれてやる」


 放たれたネイルガンが、撃ち抜いた仮面を粉々に砕いた。


「マぁあアアッシュ!! なぜッ、なぜこの完全な力が通じんのだッコ……!?」

「某は、この世に“完全”があろうとは思っておらん。神は指針、教えは箱」


 ブルさんは、いかにも僧侶っぽいことを静かに語る。キャラ付けでも何でもなく、本人は心からそう思っているようだ。


「足りぬものを埋めたとて、穴埋めにすぎぬ。足りぬものばかり見るから、何を補えばよいか見逃すのだ。分かたれた虹をひとつに重ねたとて、見えぬか濁るか」


 能力の方向性も、ステータスの方向性も……確かにボールを一撃で破壊できるし、部位によっては攻撃を弾き続けているけど、「すごい部位がすごい」だけで、バラバラだ。すでにほころびが見え始めた巨体は、攻撃を受け続けている。


「みんな、解使っちゃおう!」

「「「「おーっ!!」」」」


 バイオリンの奏で始めのような音がして、夢のような薄紫色の結界が展開された。バフアイコンや地上のフィールドがいくつも現れて、場は混沌と化した――最後の抵抗をしようと、キノコ王は攻撃や爆発をいくつも繰り出す。


「マッっシュ!!」

「言ってなかったねー、このボール」


 また分身して、飾剣で弾力のある色彩を空中に張る。そして、〈サイオウクワガタ〉からドロップしたボール……「明星エントロピー:ターミナル次代」を、さっと投げた。敵に当たるとバウンドし、色彩の糸に当たるとまた壁までバウンドして、壁にもバウンドして――いちおう一定の高さで収まるようにしたからか、敵の体がぐわんぐわんと揺れる。


「壊すと強くなるんだよね」

「こんな、はずでは……ッコ」

「あなたも【愚者】でしょ? 搦め手の方が本分なのに」

「あぁ……ワレの力が、消えていくッコ……!」


 肩をすくめる。まじめにコツコツ貯金するなんて、ちっとも【愚者】らしくない。財貨をすべて吐き出して、けれどそれより大きなものを――もっと楽しくハジケればいいのに、何かを忘れてしまったような物悲しさがあった。


「愚を冒すときは“あえて”そうするからこそ面白い。引き際を見誤っちゃあ、本物の馬鹿じゃないか……」


 さらりと撫で切った刀と、吹き過ぎる剣が交差した。


「コォオあああーっ!!」

「南無三」「閉幕っ!」


 おぞましい巨体がはじけ飛び、外装が剥がれたキノコ王もまた大爆発した。

 楽しんでいただけましたら、いいね・ポイント評価、感想などもらえますとモチベーションが上がります。ぜひよろしくお願いします。

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