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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
2章 救罪矛償:あなたの足が訪れる

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56 【白バニーさん登場】即興PTで未攻略踏破計画! メノイ病描穴(2)

『ゆゆゆ』が配信されてるゥー!??!?!? いやでも1話だけだと面白さがじゅうぶんに分かんないんで、2話待ってもいいかな。じっさい本放送だと二話セットだったんですよね、あれ。ぜひ観てほしいんですが、もうちょい待ってもいいかもしれん。


 あ、どうぞ……

 進むにつれ敵が増えて、一体ごとの強さは下がっていく。でも、ときたま強敵が混じっていて、対処しきれなかったパーティーは崩れていったんだな、と想像できた。薄暗い洞穴の中、ちょっと広くなったスペースで、休憩がてらコメントを追った。


『恐竜をふつうに倒せてるあたりヤバいなこのPT』『回復使ってなくね?』『なんだかんだ対応してるのがつよい』


「だねー。みんな強い」


 私もなんだかんだ負けたことはないけど、この人たちはパーティーとしてすごく強い。前衛とアタッカーだけで組んでいるように見えて、みんなが別の役割も兼任しているから、過不足がない。


「みんな溶けるのって、壁画だからかな?」

「ダイナロックスは溶けないだろ。こいつらは被造物、召喚モンスターだと思うぜ。壁画が魔法陣扱いなのか、ほんとに壁画がモンスターなのかは分からんがね」

「へー……じゃあ、絵を書いた人がいるってことだよね」

「そうなるな。推測が当たってるとするなら相当特殊な敵だ」


『はえー』『あ、正体分かったわ』『あれか』『壁画系?』『ダンジョンだし亀裂できてんのかな』『外なるものなんちゃう?』


 コメント欄にある情報は錯綜していて、ちょっとよく分からなかった。


「けっこう進んだから、そろそろもうちょっと強いの出てくるかな?」

「充分だったと思うがねェ。ぜいたくを言いなさる」


『ほんそれ』『そうだよ(便乗)』『※すでに未踏破領域です』『比較級なんでしょ(鼻ホジ)』『白バニーさん強すぎて退屈しとるやん』『これでも武器縛りしてるってマジ?』『半分使ってないぞ(古参並感)』


「あ、うん。武器七種類あるんだけど、三つしか使ってないよ」

「そこですね。レベルの違いを思い知らされるな……」


 もうレベル50くらいに来ているけど、「銘菓ラヴィータ」のみんなもレベル40後半だ。武器を何種類も同時に扱えるのは〈道化師〉くらいのものだけど、全部使っている人はあんがい少ないようだった。


「みんなは六種類ぜんぶ使わないの? たしかにチュートリアルは長引いたけど……」

「問題はそこじゃありませんよ、まともに火力が出る武器がないんだ。バッファーになった方が役立つ、サモナーになるのが丸い。ジャックナイフは食器じゃあないんです、そう使えたとしてもね」

「なんというか、突き詰めますよねー。フィエルさんが相棒連れてるところも見たいです」

「あとで〈サー・プライズ〉使う? いい人だよ、悪魔だけど」


『ちゃうわー!w』『道化師の相棒って何がええんやろか』『インスタント召喚を相棒呼ばわりはなんか違うでしょ』『特定の相棒がいない……ハッ!?』『↑クソ固いかクソ早いじゃないと無理やぞ』


「そうだよね……テイムモンスター選ぶとしても、相当強くないとなんだよね」


 立ち上がって、もっと奥に進む通路を見た。ここまで進んできたからには踏破したいけど、このダンジョンで経験値がもらえない理由……何かすごく危険なものが、この先に潜んでいる。


「よし、いざってときは本気出すね。縛り解除する!」

「あ、ああ。俺たちの邪魔にならないようにだったから、構いませんが」

「見たい見たい、〈ラフィン・ジョーカー〉の本気! 視聴者さんも見たいよね!」


『これは期待』『ここマジでおかしいから謎だけでも解き明かしてくれたら助かる』『ここらでもっぺん伝説頼んだ』『他がわりとすんなりで終わりそうだし、トリ飾ってほしい』『なんか武器増えてるくさいからそれも見せろ』


「おっけー、やるよー。強敵だったら、だけど」


 そこからの道は順調で、壁画らしきものもただの絵だった。というより、さっきまでの壁画はぜんぶモンスターだったのに、こっちは純粋に……原始的な技法で描かれた、人々の生活の様子だ。こっちの方が本物の壁画だったのだろう。


「ッ、〈ゲー・ティア〉!」


 何かがぶわりと吹き荒れて、視界の色が文字通り変わった。


「なにこれ、煙!?」

「これじゃ一発も撃てないぜ! ボウガンの出番か」

「対処できるんだ……」

「世の中、火気厳禁の場所も多いんだぜ」


 無駄に常識人なダンさんに諭されつつ、杯から大量に水をぶちまけて、煙をできるだけ晴らした。


「なるほど。察するものが早かったのは、知っていたからであろうな」

「キノコ……! 「パレットキノコ」の進化系だよっ、あれ!」


 確か、一回だけ出会って速攻で封印カードにしたモンスターだ。まともに戦っていないから、まったく印象に残っていなかった。


「マぁーシュッシュッシュ! よくここまでたどり着けたッコねぇ! きちんと分け身を配置しておかなかったのは、すこぅし油断だったッコか……」

「なにこの口調」


『本物エアプで草』『なんやこれwww』『どこから持ってきてなんで音声にしてんだよw』『悪ノリも本気でやるとふつうに笑える不思議』『なんぞこれ』『引いてるやんけ!』


 ボス部屋にいたのは、毒々しいまでに色彩が迷子なキノコだった。赤に白の水玉模様とか、かさが茶色で軸が白とか、キノコはそういう配色で描かれがちだけど……まるで、幼稚園児に絵の具を渡した結果を全国巡りしたかのような、すごいカオスだ。


「マッシュッシュ、この洞窟はワレが力を高めるのに最適な場所だッコ。湿度、魔力、どれを取っても素晴らしいところだッコ。ニンゲンは石ころを拾って満足しているッコが、あんな魔力の抜けたゴミなんてなぁんの価値もないのだッコ!」

「言うねェ、おたくは何をしたいんだい」

「マッシュッシュッシュッシュ……!! 無論、ワレの版図を広げることだッコ。ワレらはみな総て、世界を染め上げたいという衝動を抱えているッコ……」


『キノコって森も染めてるよね』『見つかって倒されてるだけで案外被害規模デカい』『成功したらこうなるのか……』『キノコの本音とか初めて聞いたわ』


「こんな狭っ苦しい洞窟なんぞで収まっていたら、王の器にふさわしくないのだッコ……ワレは世界の覇を握るものであるッコ! オマエらを蹴散らし、世界にとどろくキノコの王となるのだッコ!!」


 大昔の緑っぽい液晶で、モールス信号を表示するような顔が光る。同時に、頭上に「マージメイジ・マッシュローフ」という名前が浮かび上がった。


「〈マージ・スリー〉!!」


 ホロウィンドウの表面に浮かぶ、囲碁のようなマグネットのようなものがさささっと激しくスライドする。パズルゲームのように、ピコピコッといくつかの色が揃って、丸いものが実体化した。


「マッシュッシュ……〈アニマ・ドロー〉!」


 エフェクトの絵筆がするすると動いて、ジュエルドールとクモが二体ずつ召喚される。


「ほかの配信終わっちゃったみたいだけど、私たちはここからスパートかけていくよー。みんな、見ててね!」


 合図でみんなが構えて、戦闘が始まった。

※すべてプレイヤーが習得できる技です

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