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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
2章 救罪矛償:あなたの足が訪れる

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55 【白バニーさん登場】即興PTで未攻略踏破計画! メノイ病描穴(1)

 どうぞ。

 飾剣のスキルは、味方の属性ダメージを上げられる。


 杯の力を使って、「出た属性エフェクトを空中に配置する」能力を与えた――全身にばらばらと弾けた火花が、ドールをがっちりと拘束する。強引に破るために、敵はゴリッとめちゃめちゃに削れた。


「これほどとは……!」

「まだ動くぞ、攻撃を緩めるな!」


 威力の代償に、改造銃は弾をこめるのに時間がかかるようだった。その代わりに、クリームがステッキやカードでごりごり攻撃している。私も斬撃を飛ばしたりみんなを加速したりで支援して、頑張って火力を上げていた。自分が動き回らない戦いは、初めて経験する……ような気がする。


「くっそー、あんまし切れないんだけどー!」

「ごめん、杯でも無理そう……」

「ですよねっ!」

「代わりに属性上げるから!」


 切れるからとなんでも切れるようにはならないし、相手の力と拮抗することもできない。たぶん相手の解は干渉力とかそういうやつで、体のパーツをいっぱいに広げて振り回す、すごくシンプルなものだ。たぶん【常人】の意志、あの宝石がコアだろう。


「あなたもそう思いますか」

「ひゃっ!? 声漏れてた?」

「視線でだいたい読める。相手の暴れ方も読んでいたでしょう」

「うん。それじゃ、胸の宝石一点狙いでいいよね?」


 全員に伝わったらしく、中心近くにある宝石の、ひときわ強く輝く部分に攻撃が集中する。固い宝石がゴリゴリと削れる音がいくつも響き、光がだんだんと弱くなっていく。


「スパートかけてこー! もうすぐだよっ!」

「おー!」


 五人分の火力が集中して、宝石が砕け散った。バラバラと地面に落ちた水晶が、ドロリと溶けて地面に広がる。


「え、あれ……? なんだろ、これ」

「なんでしょうこれ、水じゃないですよ?」


 倒したのに経験値も入っていない。まるで、あれは防衛システムか何かだったかのような、かなり違和感のある敵だった。




「どうやら、仕掛け人がいるようですね。ボスか強敵に出会ったら配信を開始するように、と言われていたが……始めますか」

「やっちゃおーぜ、みんなもいいでしょ?」

「だなァ。銃のプロモーションになるな、やってくれ」

「みんながいいならいいよ。今回は私、めっちゃ外様だし」


 アンナのチャンネルを横に開いて、コメントを追う。


『お、白バニーさん映った』『待ってた』『ほかの人は初見?』『また個性的なメンツで……』『ここかぁ……』『無理ゲーなとこやってるんか』


「クリームさん、これ私の声って聞こえてるのかな?」

「ん? ああ、俺たちは知名度がないんでね、解説と実況はあなたにお任せします」


『マイク白バニーさんのとこやで』『聞こえてる』『虚無僧は見たことあるな』『愚者はヤバいのしかおらんのか?』『裸コートがいちばんマシに見える恐怖』『蓑は露出ゼロだろ! いい加減にしろ!』


「あ、よかった。確かにだよね、バニースーツみんな着てないなって思ったらもっとすごいもんね」


 初期配布の衣装は、無難にまとまっていてそれなり以上に魅力的だ。必要最低限の性能はちゃんとあるし、下位互換があるともっとすごく見える。でも、店売りやドロップ品、プレイヤーメイドの装備は、いろいろとすごい。今いっしょにいる「銘菓ラヴィータ」のみなさんの装備は、たぶんドロップ品と製作品の混成だろう。


「ん、あれ。ここ無理ゲーなの? そんなに敵強くなかったけど」


『敵が無限湧きするんよ』『ジュエルドールが弱い……??』『JDはJDに強かった説』『メンバー紹介はせんの?』『アマルガムか』


「無限湧き……、あ、紹介する? 手下です! でもいいよー」


 さっとダンさんが手を挙げた。


「よし! じゃあ俺が名乗ろう。俺はダン三式、リアルでも銃を扱ってる者だ。チューンや改造をしてほしいやつはいつでも来い、楽しませてやるぞ」


『WOW』『外国の人?』『自己紹介が強すぎる』『CMで草』『仮面が気にならんレベルの衝撃をぶち込んでくるこの……』


「銃が撃ちたくてあっちに渡ってな。あっちでも店をやってたし、倉庫にいろいろ収まってるぞ。VRで、しかもファンタジーでここまでやれるこのゲームは、実に楽しいなァ」


『リアルスキル持ちね』『アサルトライフルベースにマグナム撃てるようにしたやつ? デカすぎんか?』『できるんだそういうこと』『ヤバない?』


「ははは、興味があるやつは後で店に来い。露店を間借りしてるんでな、銃の相談は受け付けてるぞ」


 浮遊マイクをさっと私のところに戻して、ダンさんは満足げにもとの立ち位置に戻った。


「じゃーわたしも! 萩目こつぶです、フィエルさんに憧れてアマルガム陣営に入りました。前衛〈踊り子〉でやってます!」


『元気っ娘たすかる』『ちょうど不足してた』『風邪治ったわ』『あんがい顔に仮面付けてる人珍しいんやな』『太もも仮面だいぶフェチい』『あれは憧れるよね』『色白に紫髪はだいぶ神』『俺やっぱ愚者推すわ』


「人気だねー、こつぶちゃん。次は……」


 それまで沈黙していた全身蓑藁の虚無僧が、すっと前に出た。こつぶちゃんが浮遊マイクをスライドさせて、ブルさんが受け取る。


「では。某はブルーベ・リーパイ、〈司祭〉と〈僧兵〉を修める者である。迷える身ゆえ、こうして導くものになぞらえた姿を取っている」


『メンツが濃すぎる(n回目)』『アッハイ』『こんな真面目な理由でクソつよビルド使ってる人初めて見たわ』『名前カタカナなんかい!?』『真面目にいちばん強そう』


「わかる、漢字の名前だと思うよね。じゃあトリだよ」


 チョコレート色の紳士が、うやうやしく一礼する。


「了解した。俺はシューク・リイム。一介の道化だ、大したことはできない。これからもっと面白いことができるよう、研鑽を重ねている」


『仮面シュークリームじゃなくてエクレアやんけ!w』『内容なくない?』『わりと常識ありそうで安心する』『濃いメンツで固めてると胃もたれするからね、しょうがないね』


「と、こんな感じの面々です」


 さっと飛んできた浮遊マイクを受け取って、宣言する。


「アンナが信頼してくれてるみたいだし、このままクリアするよー。無限湧きする敵と、あとこれ……倒した敵、溶けちゃった」


『そうそれ、経験値入らんのよ』『あれマジで害悪、稼げないから入る意味ない』『入り口で宝石ちゃっちゃと拾ったら終わりやんね』『火力じゃなくてマジで溶けるんか』


「男性陣、私よりめっちゃ頭いいんだよねー。頭脳面をお願いしちゃいます」


『丸投げで草』『ええんかそれでw』『前より頼ってるからセーフ』『協力してるな、ヨシ!』『んっ……ええ友情しとるっ……!』


 じゃあ、と一言を置いて洞窟の先を見据える。妙に明るいから奥まで見えるけど、横道やくぼみが多いから、敵の姿は見えない。


「戦力担当、頑張らないとね!」

 ラスボスがあんまりにも強いので、それより前にクッソ強いのを出して「こんなのもいる、か……?」と思わせる、描写のライフハック。配信回にはいろいろ一般人の反応を散りばめているので、そういうとこもディティールとして面白くなるようにしております。小っちゃいとこにも目を通していただけたら嬉しいなと。

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