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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
2章 救罪矛償:あなたの足が訪れる

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51 準備はまずお腹の中と外から

 反響ありがてぇの極みオブユニヴァースすぎる(意味不明)


 どうぞ。

 ややあってアラームぎりぎりに起きてきたアンナといっしょに、お風呂に入る。最近ずっといろいろと頑張っていたからか、ちょっと疲れている。


「アンナ、だいじょうぶ? 疲れてない?」

「二割くらいアカネのせいだぞぉ。「白バニーさん」、ベルターでもパフォーマンスしてたでしょ。めちゃくちゃバズってるんだからね」

「あ、バレてた。どうだった?」

「よかったよぉ。でもちょっと、余計に「こっちでもやってほしい」って声が高まってるんだぁ。今夜は配信出てもらうからね」


 宣告のように言い切るアンナは新鮮で、すごくかわいい。ぴとっとくっついた状態で言われるから、私でも恋しちゃいそうなくらいだ。


「それで、ベルターから行ったの? あちこちあったけど」

「ベルターが壊滅してるのってもう知ってた?」

「うん。サービス開始二日目くらいかなぁ、プレイヤーが入ってきたときにはもうダメだったみたい。周りのモンスターもやたら強くて、ぜんっぜん何もできなかったみたいだよぉ」


 モンスタージョブをふたつも獲得したことを話すと、「おぉー」と笑ってくれた。


「どんなの?」

「〈レクストリガー〉と〈ダブルデッカー〉ってやつ」

「んー……? 聞かないやつだけどぉ。どんなんだったの」

「バーコード鎧と……中に入ってた、カード出すやつ? かな、たぶん」

「そんなのいるんだぁ」


 アンナ情報にもなかったということは、やっぱり新登場だったのだろうか。


「カード出すやつを体の中に飼ってて、そのカードを使って加速パンチとかしてたの。すごい固いし早いから、悪魔に倒してもらっちゃった」

「そんなに強かったんだ……。〈道化師〉で勝てない速さなら、〈斥候〉とか〈ニンジャ〉でもないと無理だよぅ」

「逆にだけど、〈道化師〉ってそんなに早いんだね」

「幻術とか回避技もあるからねぇ。単純に早いっていうか、厄介って方が正しいかも」


 そういえば、と思い出したことがあった。


「魔石がひとつ余ってるんだけど、プレイヤーに売った方がいいよね?」

「……すぐ転職できるやつ?」

「うん。〈レクストリガー〉の」

「おぉう……」


 ドロップ率が上がる代わりに敵が強くなる【愚者】は、かなり損もするけど、こういうところは強い。


「そろそろのぼせそうだし、上がろ。お母さん待たせちゃう」

「あ、うん。そうだよねぇ」


 お風呂から上がって、リビングに向かう。もういい匂いがしていて、それと別にすごく優しい香りも漂っていた。


「今日は水炊きとお刺身よ。あと、クッキーも用意してあるわ」

「う、美味しいかなぁ……?」

「だいじょうぶ、一緒に作ったじゃない。間違いないわ」

「いい匂いしてたし」


 肩をぽんぽんと叩いて座らせてから、食卓に着いた。まだまだ朝夕が寒い日もあるから、水炊きはすごく美味しい。白菜と白ネギをしゃくしゃく食べながら、お肉を突っつく。


「そうそう、アカネは配信に出ないの? アンナから聞いたわよ、評判いいんでしょう?」

「今日の夜に出るよー。まだ何するか聞いてないけど」

「なーいしょ。みんなにはちょっと負担かもだけど、お願いしちゃうね?」

「いいけど」


 いったい何をするんだろう、と思いながらポン酢をちょっと注いで、水炊きの味変をした。お父さんは「まずは調味料をかけずに味わうのが、作ってくれた人への礼儀だぞ」と言っていた。そのおかげかは分からないけど、けっこう繊細な味覚を身に付けることができた。


「やっぱお刺身美味しいなぁ……タタキも好き」

「美味しいよね。歯ごたえもいいし」


 両親が両方とも美味しいもの大好きだからか、子供の私たちも食べ物を楽しめている。ほんとにいい家に生まれたな、と実感しながら夕食をすこし早めに終えた。発酵バターとイチゴジャムのクッキーも、独特のクセと濃いめの甘酸っぱさが合わさって、不思議なコクが生まれている。


「すっごい美味しいよー。オトナの味してる」

「よかったぁ……やったよ、お母さん!」

「ふふふ。レシピ通りに作れば、お菓子は難しくないのよ?」

「うぇへへー……」


 すごく楽しそうに笑っている。いつでもこんな顔が見られたらいいな、と思うくらい、アンナはすごくいい顔をしていた。


「よーし、気合い入れて行こっか! 今日はお母さんにも見てもらう配信だもんね」

「だねー。期待しててね、お母さん」


 部屋に戻って、お互いのデバイスで『ストーミング・アイズ』の世界にダイブする。ログアウト前のベルターから、いつものギルドホームにテレポートした。


『みんな集まった? 今日は外から人も来るから、私はしゃべらないよぅ』

「え、アンナしゃべらないんだ?」

「今日はあたしが担当しますぞー。残念ですが、【狂妄】は言葉が聞こえませんので」

「そうなのよね……」

「強さの代償なのですね」


 アンナは『しょうがないよぉ』と苦笑している。


『みんなに聞こえなかったら意味ないから。とっこ、お願いしちゃうからねぇ』

「頼まれましたぞ、アンナさん。事前にご説明しておきましょう、今日の企画は――」


 ホロウィンドウを介して、空中に『即興セッション! 派閥タッグで強敵倒してみる』という文字が現れた。


「これですぞー。これからは多人数で戦う機会も増えますから、慣らし運転として、即興タッグで戦う訓練をしておくのです。有名人であればあるほど、知らない人と組むことは多くなりますから」


「なるほどね。ところで、どうやってタッグを選ぶの? 私はみんなより一段弱いんだけど、大丈夫かしら?」

『実はね、今回の企画は三日前から動いててねぇ。アマルガムから私たちと組みたい人を募集してたんだよぉ。ちょっと見る?』

「え、何を?」

「実は、なのですがー……あとで編集して入れようと思って録画しておりました、アツいメッセージの動画があるのです」


 聞いていいのかな、とみんな思ったようで、全員の顔が微妙に困惑で止まっている。

「……伝わらなさそうですが、再生しますぞ?」

 ちょっとボツ案紹介しておきますね。


博徒(ギャンブラー)

 意志や【愚者】について考えが至ったとき、真っ先に主人公のジョブとして浮かんできたアイデア。……なのだが、具体的な能力や戦闘スタイルが「ランダムに何でもやる」といったような、どうやっても作者のさじ加減・ご都合にしかならないと悟ったので諦めた。


 その後「愚者=バカは何をするのか?」を真剣に考えた結果として「目先の浪費など、損得勘定で判断ミスを繰り返す」という結論が出たため、ジョブではなく【愚者の意志】という形に収まり、ステータスを決定する上位概念となった。すべてのジョブは意志の下にあり、噛み合わぬものもビルドのうちに含まれる。中には意志が違う方が強いジョブもあるかも……?

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