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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
2章 救罪矛償:あなたの足が訪れる

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49 ものごとはいつもふたつみっつ重なる

 どうぞ。

 パフォーマンスが終わって、近くにあった建物で事後の話し合いをしていた。


「いやー、飛び入り参加してくれてありがとう! みんなすっごく喜んでくれてたよ」

「いえいえ。ちゃんと演技できて、ちょっと満足してます」

「ごめんね。四大ギルドの人に渡せるもの、持ってないのよ」

「あ、えっと……チャリティーっぽかったですし、何もなくても……」


 今回はカード以外ほぼノーコストで、カードを作るのも難しくない。そう説明して、なんとか「チャリティーだからみんな持ち寄りボランティアでなんとかしている」という方向に持っていった。


「いやぁ、あのフィエルさんがね。そういや自由なんだっけ」

「私は別に、運営に関わってないので……。止めないと思いますし」

「自由ね」


 楽器を演奏していたアイシャさんは、ふんわりと笑った。もふもふ召喚でみんなと遊ぶぬいぐるみたちを呼び出すファイバーさんに、ギルド「そよ風楽団」の皆さん。


「なかなか、ほら……即興パフォーマンスできる人っていないのよ。そういう経験のある人って、あんまりゲーム方面には来ないから」

「そういえば、そうかも。NOVAの方で踊ってるグループの人はいますよね」

「そうそう、現実でやる気合い入りまくりのグループと、メタバースでやってるちょっとゆるっと感のあるグループ。相対的に、現実の方が価値が高まってるんだけどね」

「やっぱり、そうですよね?」


 今の私の白バニー……というかチーズケーキ風道化師はかなり目立っているけど、それはバニースーツを着ている人が少ないからだ。でも、美男美女や帯剣している人は「相対的に多い」からか、あんまり目立たない。


「でも、そうね。お知らせは見た? この街の周りにも「進化モンスター」は出てるの、倒してみたら?」

「強いやつ……! 探してみます」


 ジョブに使えるかどうかは分からないけど、封印するだけでもそれなりには使える。強敵だとリスクの方が大きいから、ジョブ用に倒すか変身用に封印するか、ちょっと悩みどころだ。


「それじゃまた」

「ええ、また」「いってらっしゃい」


 苦笑する皆さんに見送られながら、私はベルターの門をくぐった。


 転送ポイントから飛んできたせいで見ていなかったけど、第二の街ベルターは、遺跡の上に建てられた“取り戻された街”である――と記念碑に書いてあった。人類史上もっとも多く滅び、そして何度も復興した街は、今ふたたび滅びから再生している。すごいところだなぁ、と思っていると、ふいに視界の端に光が映った。




 とっさに避けた頬から赤いエフェクトが飛び、何かが飛んできたのが分かった。


「ん……ヤバめかも」


 濁った金色のような、へんな色の人型が立っていた。飛ばしたカードで飛んできたカードを撃墜し、空中に七色が弾ける。さっと取り出した飾剣をすすすっと振って、空中に〈粋彩牙凝〉……残る斬撃を置く。機関銃のように食い込み続けるカードたちに、蒼いボールを取り出して備えた。


 そして〈ウィ・ザード〉を使って三体の悪魔を呼び出し、ハープが出す音圧の壁で相手の攻撃を止める。機械人形らしいそれは、「レクストリガー」という名前――


「あれ? なんか、名前がダブってるような……?」


 文字の表示が微妙にブレていて、しかも二つあるように見える。悪魔が撃つ魔法から大きく跳んで逃れる敵を見ながら、必死に名前を追う。


[共生モンスター のヘルプが追加されました]


「え、共生?」


 頭上に表示されるはずの名前が、胸あたりにもある。つまり、胸あたりが「頭上」に来るような位置に何かがいる。動きまくって見えにくい名前をちゃんと見ると、「ダブルデッカー」という名前があった。


「こんなのいるんだ……!」


 正体はぜんぜん分からないけど、機械人形が強いことは分かった。様子見で立ち止まった敵を、しっかりと確認する。


 板をたくさん並べた、バーコードのような外装。それを人型に並べて、隙間にいろいろ詰めて人形らしい体裁を整えたような、すごく不思議なモンスターだった。隙間にいるらしい方はよく見えないけど、大きさの限界はかなり小さいはず……少なくとも、私が手刀の形を作ったより小っちゃいくらいだ。


「ダブルデッカーって……“二階建て”だっけ?」


 ぜんぜん二階建てっぽくない、というか小さいの極みみたいに思えるけど、何か他の意味があるのかもしれない。どう狙えばいいかもわからないから、とりあえず音圧攻撃をしてもらうことにした。


 剣を持った悪魔と拳で打ち合い、隙間時間にカードをいくつも撃ちだしている。遠近自在、考える速度も精度もすぐれた強敵だ。かなりの密度で攻撃を受けているのに、ぜんぜん傷もついていない。外装のバーコード鎧が本体なのか、固すぎるから通らないのか。敵が何をしてくるか備えていると、急に「パンッ」と音がして悪魔が吹き飛んだ。


「えっ、なに!?」

『次をご用意なされよ。杯を用いた方が良いのやもしれぬ』

「そんなに……?」


 取り出した杯をすこしだけ傾けて、マスカット色のお酒をさあっと巻く。突撃してきたバーコード鎧は、追いすがってきた悪魔に殴り飛ばされて転がる。稼いでくれた時間を使い、立ち昇った酒気を剣で巻き取って、帽子の中の空間に投げ込んだ。


「〈ウィ・ザード〉!」


 玉華苑に来た虫から落ちた直剣は、もともと青緑のメタリックな輝きを放っていた。なんか虫っぽくてちょっとだけ気持ち悪かったけど、悪魔になるとより不気味だった。開いた穴から、ツタや葉っぱが飛び出ている。つやつやした果物が目や口を形作っていて、異様なものを感じる。


『恐れ、か。それもまた悪魔の糧』


 くつくつと笑う騎士は、煌剣を構えた。

 書き溜めが尽きました。次話はなんとかなるけどその次はわからぬ……やりたい話がめっちゃあるので、このまんまやっていこうと思います。

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