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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
2章 救罪矛償:あなたの足が訪れる

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47 いつか思い出す昨日になる日のこと

 どうぞ。

 大学の図書館でパソコンを借りてレポートを仕上げ、用意されていた箱に提出してから帰ってきた。たまにアンナがやってきて待っていることもあるけど、今日はいない。駅から電車に、電車から乗り継いで駅に自宅に――慣れきったルーティンの中には、そんなに感慨もなかった。


「ただいまー」

「おっかえりー!」


 ふんわりいい匂いのするアンナが、玄関から飛び出てきた。


「お菓子焼いてたの? ……ジャムの、クッキーだね」

「あたり! やっぱ鼻いいなぁ」


 お母さん監修なのか、発酵バターの独特な匂いとジャムの強い甘みが香っている。この時間にちゃんとリアルにいてお菓子作りをしているのは、すごく大きな成長だ。


「いま食べられる?」

「だーめ、まだ冷ましてるとこだよぅ」


 私は、冷蔵庫の残り物をちょっと温め直すくらいの料理スキルしかない。お菓子作りはそういう「適当」があんまり通らないみたいで、あれこれの道具に触れる気も起こらなかった。元から向いていないのかもしれない。


「夕食のときに食べましょうか。それまで二人でゲームしてて」

「あ、うん。じゃあちょっと、行ってきます!」

「ありがとぉ、お母さん!」


 二人で部屋に引っ込んで、十八時のアラームをセットする。まだ西日が差し始めた頃合いだから、二時間は遊べる。


「今日は何する?」

「配信企画はまた夜にね。説明だけしとくねぇ」


 ふだんのダンジョン攻略も、難易度次第では挑むこと自体がコンテンツになり得る――ゲームはあんまりやらないけど、「難しいチャレンジ」はけっこう流れてきている、ような気がする。


「アップデートがあってねぇ。ゲーム内のお知らせで出たんだけど、強いモンスターがどんどん出始めたんだって。目撃情報が挙がってるとこに行って、倒しに行くんだぁ」

「ふむふむ。レーネがいれば大丈夫だね」

「数がいたらアカネが頑張るんだよぉ?」

「えー……今の私、そんなに強くないよ」


 うそつけー、とほっぺたを突っつかれる。


「上位陣の中堅なんだから、もっと自信持って。さ、行こっかぁ」

「おっけーれっつごー、だね」




 ログインすると、いつものギルドホームにいた。自室を確保したけど、とりあえず買ったベッドとチェストしか置いていない。ほとんどホームにいないから、インベントリにしまっておくとふと失くしそうなアイテムを預ける、くらいしか使っていなかった。


「えーっと、絶対なくしちゃいけないアイテムは……」


 いつも使っている【ひどい手癖】は、「消費アイテムを使用可能アイテムに変換できる」という、テキストだけ読むとよく分からない性能をしている。このふたつの違いは何かというと、素材になるものとすぐ使えるもの……たとえば薬草とポーションのように、自然物と加工品の関係にある。


 モンスターから取れた素材アイテムは、意志アビリティで消える可能性がある。これまではカードを使い捨てるために使ってきたけど、何かをキープするにはまったく向かない、改めてとんでもなくデメリットの大きい力だ。たくさん確保して余ったものを売ればいい、というスタイルでやってきたけど、絶対に失くせないものも増えてきた。


「鉱石と、売ったら高いやつと、……」


 みんなが使う武器はだいたい金属製で、金属は鉱石からできている。アマルガム陣営のみんなにはいいものを使ってほしいから、「タイトルタイルズ」の涼花さんにもいろいろとお願いしていた。あとで使う機会もあるかもしれないから、いろいろと貯めている。


 チェストに入れておいた方がいいものをだいたい全部移動して、戦いに使うものを残しておく。これでまた、余裕を持ってたくさん何でもできる〈ラフィン・ジョーカー〉の完成だ。


「配信にも出るし、いろいろ新しい動き、詰めとかないとだよね」


 前に配信に出たとき何をしたかというと――たしか、飾剣でクラブの演技をやっただけだった、と思う。ボールはちゃんと出せなかったし、カードのちゃんとした魅せ方はまだない。考え込んで出た結論は、ひとつだった。


「よし。ボールのお手玉、もっと頑張らないと!」


 見ていて面白そうな絵を作るなら、とインベントリにあるボールの数を見る。〈ウィ・ザード〉でお手本用の悪魔を呼び出すと、武器がなくなってしまう。このあいだの魔王虫みたいに、「倒したそばから武器ががちゃがちゃ落ちる」なんてないだろうから、召喚のコストは人より何倍も……それだけで称号をもらってしまうくらい、重い。たくさんの武器を用意していかないといけない。


 廊下にいたシェリーにひとこと言ってから、ギルドホームの転送ポイントに触れる。


 二つ目の街「ベルター」は、最初から行けたらしいけどまだ行っていない。面白いところみたいだけど、拠点は足りていたから、行く必要がなかった。道なりに歩けば着くみたいなので、モンスターを狩りがてら行くのもいいか、街をひと通り歩いて買い物をしてからというのもいいだろうか。


「よし、とりあえず行こう!」


 光に包まれて、私は第二の街「ベルター」に降り立った。

 街の名前はABCの順番にするね……(凝るのやめた)

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