46 記憶の片隅にない、その小さな砂粒の名前を
投稿ペースが落ちます。就活しなきゃならぬ……
どうぞ。
「なあ、これってどういう状態なんだ?」
ジョブの名前にときおりノイズが走っている。
アマルガム派閥・ギルド「OH! HO! オオトリー」所属の「ケツァーゴ」は、目の前にいる怪しげなNPCをにらむ。どうやら【使徒】らしい男性は、顔を袈裟にばっさりやられており、とてもカタギとは思えなかった。
「ソレぇは、我らの施した術式が、きちんと効いている証デス。トテぇも特殊なクエストですから、決して命を失わないよウニ」
「あ、ああ……でも、ほんとにこの街に「偽神の遺骸」なんてあるのか? どこにも亀裂は出てきてないぜ」
世界観紹介に書かれていた「偽りの神の亡骸」は、世界に亀裂を生み出し「外なるもの」を呼び寄せる厄災の元凶である。埋まっていたり隠されていたりと、クエストに用意されたシナリオによって傾向は異なるが、混乱の原因であることは間違いない。
しかし、街中で亀裂が発生したという情報はなかった。
「アルぅ男が、地下にあるものを少しずつ、地上に運び出しているのデス。イズぅれ、地上でも混乱が起きることでしょう……地獄に、なりまスネ」
「そのために、ここまでしてくれるのか」
「ソウぅです、我らはあなたがたを導く使命がありますカラ。キタぁいしていますよ、応えてくださいまスネ?」
「あ、ああ……」
肩にヒヨコの刺青をしたケツァーゴは、あごひげのキマり具合をひとつ撫でて確かめつつ、男をもう一度、そして自分のステータスウィンドウをさらにもう一度見た。
(やっぱアヤシイよなあ。そもそも「ホブゴブリン」なんて、ラインナップにいたっけ)
モンスタージョブ「ホブゴブリン」、物理性能と武器の扱いに長ける亜人の力を持つ――「特殊条件を満たすと習得できる」と書かれているが、その文字自体が奇妙なノイズに覆われている。自分にしか見えないが、自分には解析・読解・鑑定といったようなスキルはない。彼はずっと友人たちと遊び、勧誘合戦からは一時離脱で逃げ、「ミルコメレオ」のようなアーカイブ系ギルドの情報を利用したことはない。
あまり活発ではないが少しずつ更新されている攻略サイトにも、亜人系はほとんど書かれていなかった。もとより、VRゲームにおける「亜人」は、人間と同等の装備や武術・魔術を使いこなす強敵である。彼らの力を使うことが即、強くなることにつながるのかと問われても、ケツァーゴの頭では答えを出しようがなかった。
だが、無償でジョブに就けるうえに、クエスト報酬も豪華で前払い分もあった。これほどの厚遇を断れようか――前払い分を受け取った後では、なおさら。
「あ、そうだ。その男って、名前とか顔とか分かるのか?」
「アノぉ男の名前は「グレリー」、【愚者】デス。トテぇも胡散臭い……肩に龍の仮面を付けた男と、報告されていまシタ。ドウぅやら露天商を装っているようでスガ」
手配写真はないのか、特徴が軽く述べられただけで終わる。
「よし。計画開始、だよな?」
軽くうなずいた傷の男に、ケツァーゴはうなずき返した。
◇
■告知情報
・「進化モンスター」実装!
これまでフレーバーテキストにのみ記載されていた「モンスターの進化」が、ゲーム内イベントとして起こるようになりました。テイムモンスターがより強力に独自性を持った進化を遂げ、クエストやフィールドでこれまでにない力を持ったモンスターと戦えます。
・街の「状態変化」実装!
さまざまな勢力がひしめき合うこの世界では、街にもたくさんの危機が訪れます。街がイベント状態に突入したとき、成功率・イベント進行度によって街の状態が大きく変化することがあります。この状態変化はリセットされません。ご了承ください。
・「陣営クエスト」実装!
意志に基づいて集まった陣営が、旅人の力を必要としているようです。信頼を得た旅人たちは、陣営のために助力を求められることもあるかもしれません。このような「陣営クエスト」を請けて成功させることで、旅人全体が信頼されるようになったり、あなたの存在を知るものが増えていったりといった変化が現れます。この広いハーダルヴィードに、あなたの名を轟かせましょう!
・「マスタークラスNPC」イベント実装!
特殊な条件を満たすことで、武具やスキルを指南するNPCのうち、特殊なスキルやより強力な性能を誇る武器スキルを教えてくれる「マスタークラスNPC」と出会うことができます。事前に縁を紡ぐことで、いくつかの条件を突破できるかも? 街のあちこちに潜むかれらと出会い、より厳しくなる戦いに備えましょう!
ゲーム内告知という形でイベントのネタバレをぜんぶやっていくスタイル。2話からさっそくぶち込んでいくからね♡




