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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
1章 情華咲き、月にしぶき映す

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45 一歩、たしかに

 一章終わり。


 どうぞ。

 ちょうどアンナは暇で、ホロウィンドウをいじっていた。


「アンナ、今って時間ある? ちょっとジョブのこと聞きたいんだけど」

『ん、いいよぅ。変えるの?』

「ううん、新しい武器もらったんだけど、MP足りないかもって言われて」

『りょーかい、じゃあ説明するねぇ』


 そういえば、ティニーさんにもジョブのことはぜんぜん聞いていなかった。いろいろ教えてはくれるけど、あの人は技術を教え込む専門で、座学の方の人じゃないのかもしれない。


『ジョブは枠が六つあって、最初にひとつ埋めるの。もちろん後から変えられるけどねぇ』

「うんうん」


 大きく分けて二種類、ふつうのジョブと「モンスタージョブ」がある。どちらもランクがあって、ランクが上がるほどステータスも上がる――


「あれ、ふつうのジョブもランク上がるの?」

『ジョブクエストっていうのがあってねぇ……そのジョブじゃないとできない仕事をやるの。妙にエスパー発揮して話しかけてくる人がたまにいるから、分かるよぉ』

「エスパー……「あなた道化師だね?」とか言うんだ」

『言うよぅ』


 ジョブを変えたりジョブに就いたりするためには、ギルドに登録する必要がある。そして、モンスタージョブに就くためにも登録は必須だ。


『見る人で中身が変わる魔導書があってねぇ、いまのジョブとの組み合わせの良し悪しも分かるの。最初から枠埋めるのもいいけど、いろいろ模索するのもいいかなぁ』

「モンスタージョブの方はどうやるの?」

『モンスターを倒したときに「魔石」ってアイテムが落ちるんだけどぉ……あれを三つくらい集めると、くっついて「魂の魔石」になるの。それを持って行って転職するのが、いちばんいい方法かなぁ』


 外法として「意志の証に魔石を埋め込む」「料理に混ぜ込んで食べる」「カードを取り込む」なんかがあるそうだけど、一時的だったり種族が変わったり、体の形からして人ではなくなったりするらしい。


「あれ大丈夫だったのかな?」

『スキルでジョブ変えたときは「仕様の範囲内」ってことになるから、だぁいじょうぶ。おかしいことになるのは、ほんとのバグみたいなことだから』

「そうなんだ……」


 持ってないの、と言われるままにインベントリを探すと、いくつか魔石はあった。でも、きちんと三つ揃っている魔石はない。


『MPが足りないんだっけ? まだあんまりいないけど、……あ、そうだぁ』

「ん、なになに?」


 こことここなんだけど、と地図が送られてきた。


『沈没船のダンジョンと、ミステリーハウスのダンジョン。入り口をちょっと触っただけの人が、いちおう魔石落ちるって言ってたよぉ』

「MP上がりそう?」

『うん。避けながら魔法撃つ幽霊とか、壁を走り回るピエロ人形とか……けっこう魔法も使うみたい』

「ふむふむ……あ、私いったん落ちるね。今日、お出かけしようと思ってて」

『へっ!? ひとりで!?』

「ちょっとねー。気分転換」


 本当に何物でもない時間を過ごしたいときがある。部屋にいても同じような気分にはなるだろうけど、ちゃんと外の空気の中で過ごしたかった。


『いってらっしゃぁい。また夜にやろうね』

「うん、夜に」




 ログアウトしてすぐに立ち上がると、ふらつきやすくて危険だ。いったん目を閉じて意識を慣らして、ベッドから起き上がる。リビングに降りていくと、お母さんがテレビを見ていた。


「あら、アカネ。あの子またテレビに出てるわよ」

「あ、あいねちゃんだ。そうだよね、大会のけっこう前とかでもテレビ来るんだ」


 世界大会もあちこちで何回もあるから、彼女……烏野曖音選手はかなりの有名人だ。ローカル局でも「まきしおスポーツクラブ」にカメラが入る機会はけっこう多くて、私たちが練習している風景も背景程度に映ったことがある。


「私が勧めなかったら、あんなことにもならなかったのかしら……」

「いいよー。色々あったけど、もう吹っ切れたし」


 インタビューを受ける烏野選手の後ろを走り去って、元の位置に戻って歩いていく影があった。同級生で同じクラスだった、あの事件の元凶だ。


「あの子?」

「鋭いね。ちゃんと話したから、だいじょうぶ」


 お母さんには何も隠せないみたいだった。トイレを済ませてから部屋に戻って、いつものお散歩コースを歩くときの服を、クローゼットから取り出す。あの潮模様が目に入ったけど、体感温度も脈拍も感情も、とくに変化はない。


「いつか、あんたの方が有名になる日……私は待ってるから。忘れろ、私のことなんて」


 あの場所でいちばん頑張っているのはあの子だろうけど、どこの大学にいて何をしているのかは知らない。どうしてあのスポーツクラブにいるのかもわからなかった。日々練習を続けていればいつか芽が出る、なんて信じてすらいないけど……何もしていない私が表舞台に出るよりも、彼女がテレビに映る方が早かった。


 窓の外を見る。四角に収まった風景の中でも、空はちゃんと青い。VRデバイスの内蔵ファンの音はあくまで静かで、静寂や沈黙とちっとも変わらなかった。自分の衣擦れの音だけを聞いて、お出かけコーデに袖を通した。


「いってきます」


 いつもの優しい沈黙を背に、私は部屋を出た。

 書き溜めがないのと就活で忙しいので、ここからの毎日投稿は確約できません。できるだけ続けるつもりなんですが……。あとスタレの次のシナリオが気になりすぎるのと、ブーケちゃん育成来るまで永らえたい。愉悦の運命が楽しみすぎて死ぬ気で石貯めてるからね、使う前に死にたくないのだ。


 いちおう二章の予定も立てているので、執筆はがんばります。書籍化のお話来くるとかそっち方面で生き長らえたりしないかなあ……()。あと二章からは楽しいお話増やしますね、そっちのがウケてるってよーくわかった。

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