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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
1章 情華咲き、月にしぶき映す

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42 新しい私を探す(他意はない)

 どうぞ。

「ブルーベ・リーパイ!」「萩目こつぶ!」「シューク・リイム!」「ダン三式!!」

「「「「銘菓ッ、ラヴィータぁ!!」」」」


 全員で決めポーズをしている、「スヰートパレヱド」陣営所属の四人がいる。ギルド名は「銘菓ラヴィータ」、仮面にスイーツの要素を取り入れた面白い人たちだった。


「あ、俺たちいちおう「水銀同盟」配下ってことなんで、よろしくお願いしゃっス!」

「構いませんぞー。あたしは来るもの拒まずですからな」


 こういう【愚者】だけで固めたり、特定のジョブだけ、生産だけの活動だったりと、ものすごくいろんなギルドが「水銀同盟」配下=アマルガム系を名乗っていた。それは、どちらかというと「四大ギルドには属しません」という意味で……今や三大ギルドになろうとしているというあちら陣営は、中堅からガチ勢向けの立場がきっちり固まっていた。要するに「ライト勢として楽しみたいので……」という、遠回しな断り文句の一種だ。


「アンナ、結局あっちってどうなったの?」

『んー。「BPB」は戦闘系ギルド最強。「ミルコメレオ」は攻略情報を集めてるだけで、どっちかというとライト寄りだから立場は落としてないねぇ。「タイトルタイルズ」は独り勝ち状態で、一流の職人と使いこなす猛者が集まりに集まってたよぅ』


 何かの隠しジョブらしい「ディリード」さんをギルドマスターに据えた「ブレイブ・パイオニアーズ・バトルフロント」。幹部がレーネ相手に時間切れまで粘ったということで、評価を落とさないまでも「勇者にふさわしいぜー!」とアンナを爆笑させていた。配信のネタかと思っていたけど、あの子はわりと本気で魔王気分らしい。


 すごくメガネキャラしている「アルトマン」さんがギルマスの「ミルコメレオ」は、ひとまず落ち着いた。ちょっと過熱しすぎていたメンバーが反省して、勧誘合戦には参加しなくなった……というか、もとからする必要がなかった。情報収集は勝手に進むし、同士がどんどん集まっていくので、濃ゆいオタク連合ができつつある。


 狼の耳と尻尾を生やした、振袖姿の「涼花」さん率いる「タイトルタイルズ」は、作りたいだけの職人とテスト用の人がいる集団……のままだ。むしろ、BPBの武器はほとんどTT製と判明してから、評価がうなぎ登りに上がり続けている。テストが危険すぎて死亡とか呪縛をもらったりもするらしいけど、マゾさんたちは楽しんでいるようだった。


「じゃあ、「擬音」はもうなくなったんだ?」

『ほぼ、ね』

「潰す必要はあったが、きっかけがあれば自然消滅する状態……ってとこですか。これだからクリームの入ってないやつは……」


 ひとつだけ言及されなかった「擬音盛者」は……強いから好き勝手していた荒くれ者が、負けたからと求心力を失った。野盗か何かみたいな話だったけど、そういう集まり方をしたせいか、そういう共通点もはっきりしているようだった。


 何かしてこないかなと思ったけど、とっこは「引退したようですぞー」と苦笑していた。しょせんゲームだから、とカジュアルに楽しんでいる人たちだから、つまらなくなったらやめる……言われてみれば当然だ。


『防具はいいけど、フィエルの武器ってまだ初期装備混じってるよね? 得意技に合わせた特化とか、した方がいいよぉ』

「あ、そういえばだね。あんまり気が進まないんだけどー……」

「得意属性ごとに一覧表ならミル、職人謹製の品ならTTですなー。どちらも手厚いので、問題はありませんぞ」

「えっと、うん、ありがと」




 ギルドホームから街のセーブポイントにテレポートして、二つのTを図案化した「剣を叩くハンマー」のエンブレムを探す。案外すぐ見つかった大きな店構えに入ってみると、周囲がざわつく。


 狼の耳に尻尾、オレンジを基調に赤や紫を配置した、すごく華やかな振袖の女性。キャラクリエイトでは「種族」のところはいっさい触らなかったけど、エルフとか狐族とか猫族、黄泉人や精霊族なんかもいるらしい。どれかは分からないけど、かなり目立つ容姿と服装だった。


 にんまりと笑う涼花さんは、周囲を制して真正面を向いた。


「あら! どうしはったん、うちのこと探してくれはったんか?」

「偶然ですよー。会いたかったのはほんとですけど」

「嬉しいこと言うてくれはるやないの、もう。さささ、奥行こか」

「ええ」


 振袖とバニーが続いて歩くと、かなり目立つようだった。応接間に通されるまでの間に、ものすごくヒソヒソされていた。


「うちにお話っちゅうことは、なんか欲しいもんあるんやろけど……フィエルはんの手に入らへんもんって何やの?」


 冷や冷やするような威圧感はないけど、言葉がものすごく強い。わざとそれっぽい言葉を使っているんだろうけど、強さはそう変わらない。ポットとカップを出した涼花さんは、手ずからお茶を淹れてくれた。


「いえ、手に入らないわけじゃなくて。とっこに紹介されて、どっちにしようかなって思ってたところで、エンブレムが見えたので。来ちゃいました」

「んふふふ、おもろいわぁ。買うでも買わへんでもええよ、フィエルはんが見に来はったてお話だけでも宣伝になるし。何がええのん、言うてみて」


 これなんですけど、と武器を出していく。


「あら。ぜんぶ初期装備やん、これでアレやらはったん?」

「そうですよー。武器性能、そんなに影響しませんから」


 ステッキ、ハット、時計。ステッキの攻撃力はかなり大事だから、優先度がいちばんだ。時計の固定ダメージもハットの召喚も、初期装備でなんとかなる……でも、これ以外に何ができるのかは気になる。


「うん、ステッキとハットはええんよ。でもねぇ、時計はあかん。高すぎて売れへんのよ」

「もう百万ディールくらい持ってますよ」

「せやったね。あぁ待って、職人が今日らあたりにええもん完成させる! て言うてたわ。調子聞くさけちょぉ待って、ほかのもんは用意させるわ」

「ありがとうございます」


 通話で「まだかいな」と呆れているので、時計は完成していないみたいだ。逆に、ほかはすぐ用意できるみたいだ。


「ほな行こか。お茶どうやった?」

「好みの味でした」

「覚えとくわ。お茶菓子はなんか好きなもんある?」

「スコーンとか……?」


 ええね、とうなずいている。じつはお茶するのが好きなのかな、と首をひねりながら、奥の倉庫へ移動した。

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