表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
1章 情華咲き、月にしぶき映す

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/166

35 Laughin’ Joker(6)

 スティルインラブ実装日。ぜったい当てる、このためにずっと待ってた。


 どうぞ。

 使うタイミングが来た。私は、「潜靴堂裏」――ブーツと聖堂とペンギンの仮面をこめかみの「月泳流星のおもて」と入れ替えて、解を発動する。あたたかなレモン色のバフアイコンが点灯し、左目から強い光が漏れているのが分かった。


「わ、そんなふうになるんだ……!」

「実は初めてなんだよねー。武器の性能上がるだけ!」

『いいねぇ、このパーティーにとっては!』


 ざぁあああっ、とデッキふたつぶんのカードを一瞬で使い尽くした〈ランダマイズ・スロー〉は、マシンガンのようにカブトムシの装甲に弾けた。ぱぱん、と打ち合わせた手が、いま消費したカードを一瞬で補充する。


「こうやって使うのですなぁ。【愚者】でなければできませんが」

「そうだよー。クールタイム短縮しなきゃダメだけど」


 一枚ごとの使い道は、封印やコピーにある。攻撃しようとしても、どうやっても豆鉄砲にしかならないから、「用途を決めれば強い」くらいに落ち着くだろう。どうしても攻撃したければ、こうやって浪費するのがいちばんいい。もっとも――


「ギィイイ……」

「固いなぁ、やっぱり」


 柔らかいところを狙って切っているレーネも、すでに何本目かの刀を使っていた。クワガタに刺さっているものが破損済みとみるなら、四本目だろうか。活躍が早すぎてほとんど分からないけど、呼び出した悪魔よりはるかに強い。


『あのひとたちに指示ってできる?』

「いちおうできるよ」

「全力でボスを狙って、と指示していただきたいのですが」

『ご友人の命とあらば』

「アリなんだ!? じゃ、お願いね」

『御意』


 悪魔たちは、総攻撃を始めた。それまでは配下にバフをかけるだけだったクワガタは、急におかしなスパークを体内で点灯させ始める。


「来ます!」

「防ぐ! 〈ゲー・ティア〉!!」


 空間に穴が空いた瞬間、視界が真っ白になって、真っ赤になって緑になった。[「瞑目」状態になりました]というアナウンスが聞こえて、視界が真っ暗になる。


『失敬』


 たぶん俵担ぎで持ち運ばれて、すごい速度で移動している。ギシャア、と敵の声は聞こえているし、攻撃らしき音も分かるけど、視界がちっとも戻らない。「目が見えなくなる」という状態異常は聞いたことあるけど、体感するとこうなるとまでは思っていなかった。


「見える?」

「どこ?」

「ダメですなー。重症ですぞ」

『ありがとね、配下ちゃん』


 当然のこと、と会釈したらしい悪魔に抱え直されて、また跳躍する。視界に点滅するアイコンが表示されて、3カウントで視界が戻った。


「戻った!」

『では』


 するりと転がって手のひらに乗り、ぽいと投げ上げられた勢いでクワガタに〈ヴォルカナイト〉を叩きつけた。ドゴゴゴガガンッ!! とぶつかったボールを着地に使ったあとすぐ引っ込めて、消えていた分身をもう一度出す。


「ギィガァアア……!!」

『カブトのほう、ラストスパート!』


 レーネの斬撃とシェリーのビームで、カブトムシはだいぶ弱っていた。クワガタみたいにビームを撃つかと思ったけど、トゲの弾丸とビーム以外は何もしてこない。私は、ボールの悪魔といっしょにクワガタを攻撃し続けていた。アンナととっこは、あの便利な鎖を伸ばしに伸ばして両方にガンガン攻撃している。


『フィエル、あれコピーさせて』

「うん、いいよ」


 アンナが拾ったのはハット、「あれ」しか言っていなくても、何をしたいかはすぐわかった。両方の手にデッキを持って〈ランダマイズ・スロー〉で一瞬で浪費し、百回の虹の火花を炸裂させる。


 パチパチ、パチッとクワガタはまた光る。


『今度は私』


 こめかみの仮面をずらして視界をふさぎ、目を瞑る。ゴワッというすさまじい音が耳を圧し、わずかに漏れた光さえまぶしかったけど、今度は状態異常にはならなかった。アンナがコピーした〈ゲー・ティア〉は、敵のビームを防ぎ切ったのだ。悪魔たちが繰り出した攻撃に続いて、レーネの繰り出した真っ黒い一太刀が、カブトムシの角を叩き折った。


「ギィ、シャア……」


 墜落したカブトムシは、はらはらと光の粒に変わって拡散していった。


 怒り狂ったクワガタは、しかし次の瞬間おかしな軌道で飛び始める。


「え、なに?」

「ふっはっはー! あたしの解はっ、ランダムな状態異常、三つまでの移し替え!! あたしがいくつ呪いを背負っているか、お忘れですかな?」

「そのためだったのですね……」

『ただの変態だよぉ、私とおなじくらいのね』


 どうやら〈ソードダンス〉という特技……「一定時間ごとに強制的に踊り系特技を使う」という呪いが、クワガタに移し替えられたようだった。


「シャアアアア……!!」

「はっはっは。いざ戦になれば、王も道化を演じるやも……考えてはおられなかったようですなー。だからこそ、面白みも生まれるというもの!」


 トゲの弾丸を鎖で逸らしながら、とっこは笑っている。


「さあ、究極を受けていただきましょうか!」


 薄くなった悪魔たちが、最後の一撃を叩き込んでは消えていく。


「『〈チェーン・サーキュラー〉!』」

「〈百足割り太刀〉」

「〈スターフォール〉!」

「〈どど怒涛潰終(どとうついつい)エル〉!!」


 斬撃が、光が弾ける。


 すべてのボールを出し、跳ねたボールに導かれるように高く高く跳躍して、思いっきり蹴った。十を超える攻撃が連続でぶつかって、クワガタはついに地面に墜落した。パチパチと弾けたエネルギーは暴発し、体のあちこちの傷から抜けていく。青い光がだんだんと一点に小さくなり、黒っぽくなっていくクワガタは、そして動かなくなり……真っ青な光の粒になって、大爆発した。


 青い空に走っていた亀裂が完全に消えて、光の粒が玉華苑を修復していく。



[魔王虫を退けた!]

[称号〈巨星堕つ〉〈放蕩の女神〉〈物言わぬジョーカー〉を獲得]

[害虫見本に「甲虫種」が追加されました。]



「やっ、……たぁーっ!! ありがとーっ!!」


 飛びついてくるみんなに押されて、私は花畑に倒れ込んだ。

〈サイオウクワガタ〉

零等級

 レイニーチェリーに来る「魔王虫」の一角。恒星のエネルギーを操る災虫の一種で、都市国家を数瞬で蒸発させるほどの熱量を持つ光線を放つ。いわゆる「外獣」であり、ワームホールを通じて配下を呼び寄せ続けるため、かれらが訪れた惑星は生物が完全に死滅するまで食い荒らされる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ