表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
1章 情華咲き、月にしぶき映す

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/166

28 縮まることでより激しくハジケる土壌ができる

 どうぞ。

 ログインすると、いつもの街にいた。ギルドホームにログインすることもできるようだけど、今のところは買い物や施設や人手などを考えて、街の方がいいと思っている。


「きみ、どこかギルドに入ってる? 零細でもいいんだけど」

「……あ、もふもふのお兄さん。入ってますよ」


 前にもふもふの動物(?)をなでていた、ダンジョンのことを教えてくれたお兄さんだ。


「おれは「ファイバー」。いやぁ、勧誘合戦がすごくて。その零細も、系列系のやつね」

「なんですかその、息苦しい感じ」

「企業系の攻略ギルドとか、初日から結成してるガチギルドとか。あれだね、ブラック企業の企業戦士みたいなのがさ、いっぱいいるんだよ」

「うわー……」


 ギルドは、人数が多ければ多いほど有利になるそうで、真面目じゃない人でもいればいいそうだ。けれど、入ったら入ったで要求は厳しいし、ログインの頻度や時間、人の組み合わせも勝手に言い渡されるらしい。


「ちょっと悪く言いすぎたか。でもね、危ないとこ入るとほんと危ないから。女の子は本気で、気を付けといてね」

「心配してくれてるんですね」

「ゲームはほら、楽しいのがいちばんでしょ。楽しくなくしちゃう人がいるんだ」

「気を付けます。たぶん、倒せると思いますけど」


 勇ましいなあ、とファイバーさんは苦笑した。


「世界の方の陣営が大事なら、「クエスト中です」って断り文句もあるからね」

「ところで」


 だいたいわかったから話題を切ろうと、切り出す。


「そのもふもふは?」

「ぬいぐるみ。初期クエストがちょっと特殊でね」

「そうなんですね。それじゃ……」

「ごめん、長話しすぎた。じゃあね」


 あれね、と大通りの大集団を指さしつつ、お兄さんは去っていった。できる限り迂回して集団を避け、三角飛びと武器を活用して、屋根まで登る。さすがに屋根にまで何十人も配置するのは難しかったようで、まったくやる気のない人がほんの数人しかいない。その人たちも、「行け」と言わんばかりに手をさっさっと払っていた。


 会釈をしてから、テレポートできるのに気付いて、ギルドホームに飛んだ。


「おかえりなさいませー。たった一日で、状況が大きく動きましたな」

「とっこ、これってどうすればいいの?」

「流れを奪い取る、くらいしか思いつきませんなあ。それもそう簡単ではございませんぞ、百人単位をまとめる力を切り崩さなければ……」

「やる気なさそうな人、いっぱいいたけどなー……」


 きっかけがあれば、突き崩せるような気はする。それをどうすればいいのか、そこが問題なのだろう。


「そういえば、次の配信って何やるの?」

「もすこし考えようかと思っていたのですがー……そうですなー、ちょっとやらかしてしまいましょうか? アンナにも連絡しましょう」

「え、何するの」

「題して「魔王大作戦」! ですぞ!」


 ろくなことじゃなさそうだな、と思った通りに、すごい流れになってしまった。




「やーやー、みなさんどうもこんばんはー。徒歩で来ちゃったとっこでございますよー。今日はすこし、企画のお知らせをしたく配信をしております」


 五角形の椅子、それぞれの辺にみんなが座っている。


「きのう今日始めた『ストーミング・アイズ』なのですがー、すでに空気が滞りつつあるようなのですなー。いくつかのギルドが人を集めに集め、藤氏にあらざれば人にあらずのごとくに……とても窮屈になっております」


『ライト層締め付けすぎよな』『自治厨湧きすぎてキツい』『あれやったら人もう集まらんくない?』『勧誘怖すぎてインできてないわ今日』『あんなガチることある?』


 コメントの流れも、おおむね同意のようだった。


「しかーし! 我らが「水銀同盟」は、そんな風潮に反旗を翻したい! よそはよそでうちはうち、個人は個人。我々もただの友達グループでありますからなー」


 アンナの人脈で集まった五人だけど、別の形で出会っていても仲良しになれたと思う。ただのいい子ちゃんではないけど、付き合いきれないほどクセの塊でもない……いやどうだろ、とちょっと疑問を浮かべそうになったところで、言葉が続いた。


『というわけで、宣戦布告をするよぉ。ギルド対抗戦の仕組みを使って、いま主流の四大ギルド……「ブレイブ・パイオニアーズ・バトルフロント」、「擬音盛者」、「ミルコメレオ」、「タイトルタイルズ」。この四つに戦いを申し込むよ。こっちの戦力は五人』


『五人!?』『うせやろwww』『むちゃくちゃで草』『千人超えを五人で……??』『正気か?w』『負担多すぎませんか』『強いのは知ってるけどさぁ……』


「まーまー。遊撃に二人、防衛は三人。これでも勝てると踏んでいるのです」

『うちはみんな強いからねぇ。未開拓のダンジョンだって一発クリア、一人で五十万ディール持ってる子もいるんだ。じゃ、発表はとっこからだね?』

「ふっふっふ。明日の配信は夜九時から、企画の名前は――」


 大きなテロップが、空中に浮かぶ。


『「魔王チャレンジ!」』


 ばばーん、と音が鳴った。


「世界の流れに抗って、ひとつの陣営だけが天下を取れるのか。ちょっとだけ試してみたかったのですがー……これまではなかなか機会がございませんでした。だーがー今回、天下を取っていい空気が吸えそうなのです」

『魔王になってみたいって思ったこと、なぁい? もちろん、戦わずにこっちの軍門に下ってくれてもいいよぉ。負けても敵のままでいてくれておっけぃ。企画がダメになっちゃったら、明日は謝罪配信だねぇ』


 あはは、と二人は笑い合う。


「それでは、明日の夜九時から一時間、ギルドホームを実体化しておきますのでー……木っ端微塵に消し飛ぶ覚悟のある方は、いつでもやってきてくださいなー!」

『待ってるよぉ。ではでは』


 配信停止ボタンを押した二人は、振り向いて微笑んだ。


『楽しもうね?』

「お願いしますぞー」


 私は、それに微笑みで返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ