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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
1章 情華咲き、月にしぶき映す

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26 ここがおうち(1)

 ちょっとアレなサブタイトル。


 どうぞー。

 武器が強くなったなら、と思ってちゃんと新しい武器を買って、スキルの検証をしてとあれこれやっていると、もう夕方になっていた。ログアウトして、両親の帰りを待つ。


 お父さんはサラリーマンでお母さんはパート、アンナも配信やバーチャルインテリア販売で稼いでいる。そんなにお金いらなくないかな、と思ったこともあるけど、お母さんはなんとなく動いていないと落ち着かないらしい。


「ただいまー」「ただいま」

「おかえり!」


 途中で合流したのか、二人で帰ってきた。


「アンナは、また作業か」

「みたい。どうする、おやつ食べる?」


 そうだな、とお父さんはリビングに向かった。お母さんはソファーに落ち着いて、とりあえず感覚でテレビをつける。いいタイミングだから、ここでお風呂のお湯を入れる。


『リアフラはあと三十分くらい大丈夫だから! そのくらいでお風呂だよぉ。それまでは取材旅行と称してぇ、インスピレーションを得るための探検をするんだぁ』

「やってるわね」

「やってるね……」

「作業じゃないな。まあいいんだが」


 うちのテレビのチャンネルは、いつも『たてわきサフォレちゃんねる あそびばー』に合わせられている。現実の自分があんまり好きじゃない、と言っていたあの子は、バーチャルネイティブ世代だからか、潜りっぱなしになりがちだ。同じ部屋にいる私は、ものすごく高い椅子型VRデバイスをしっかりチェックしている。健康状態が悪化しないように、バイタルがどこにどう出るかも教わって、夏場なんかは塩分を追加したお茶を常備したりもしていた。


 何より、あの子が楽しそうにしているところは、現実だとあまり見られないから……両親はこうして、普段のあの子を眺めている。アンナも「いいよぉ?」と笑って答えてくれたし、私が迎えに来るのもいつものノリとして演出に組み込んでいるくらいだ。こういうメンタルに育ってくれて、喜んでいいのかは分からないけど。


 光る石を組み込んだレンガ造りの地下水路を、ゆっくりと歩いている。


『お兄ちゃんが昔見せてくれた映画がさぁ、お菓子の家をほんとにやっててすごかったんだよ。ちっちゃい銅像飾ってるとこの石材を追ったら、マーブルチョコでコーティングして蜂蜜はさんだスポンジケーキだったり。チョコとグミっぽいよね、このレンガ』


 アンナは……私もだけど、兄が大好きで、あの子の方は特撮もいっしょに見ていた。メタバース内では、精巧なフィギュアが並ぶ「オタク殿堂」をデザインして、公式にファンメイドの博物館として認知されているくらいだ。


『あ、ゲートっぽいところあるねぇ。でも、ダンジョンに潜ってる時間はないかなぁ……最初の攻略はみんなに譲っちゃおうかな? ここでセーブポイント触っといて、とぉ』


 そろそろ潮時かな、と思って二階に向かった。リクライニングチェアみたいな形のVRデバイスには、いつもの謎Tとドルフィンパンツのアンナが寝ている。横にあるボタンを押して、メタバース内に音声が聞こえるコールモードに切り替えた。


「アンナ、そろそろお風呂だよー。おーきろー」

『はーい。座禅の記録、二十六秒でしたぁ!』


 また新しい待ち方をしていたらしく、座禅をしていたというアンナは、ぱちりと目を開けた。いつもの笑顔で、「おはよぉ」と静かにつぶやく。


「毎日美少女に起こしてもらえるなんて、生きてるって実感するよぉ」

「もー。お風呂入るよ、昨日入ってないんだから……」


 どうせ家にいてそんなに汚れてない、汗もかいてない、などなどなどなど多種多様の言い訳で、アンナはお風呂をめんどくさがる。ほんとうの理由は分かっているけど、私やお母さんと一緒なら入ってくれるから、いつもそうしていた。


「わーい、アカネとおっふろー」

「棒読みすぎー」


 着替えを出して、二人でリビングへ降りる。


「アンナ、あのゲームは面白いの?」

「うん。アカネにも薦めてさ、一緒にやってるの」

「あら! アカネもやってたのね」

「けっこう楽しいよ? 経験も活きてるし」


 よかった、とお母さんは心底安心したような……すごく微妙なニュアンスを含んだ笑顔で、言ってくれた。二人は昔から仲良しでそのまま結婚したそうだけど、私たちにはいろいろありすぎた。いじめのことは「逃げただけでもいい、二度と会わないようにしよう」とだけ……すこし和らげて風化するように、してくれた。


「二人とも、ゆっくり浸かっておいで。VRでも疲れはあるんだろ?」

「ありがと、お母さん。また一緒にお風呂入ろうねぇ」


 いつでもいいわよ、と微笑んだお母さんに軽く手を振って、脱衣所に入った。扉を閉めて服を脱ぎ、裸にな――る前に、いつも通りくっついてこようとするアンナを剥がす。


 部活動をやっていたころよりむちっとして、普通くらいの体形になった私と比べて、アンナはもうちょっとふっくらしている。小さいころちょっと太めで、中高では怖いくらいがりがりに痩せていたそうだけど、今はちゃんと家族といっしょに食事を摂って、ちゃんとかわいい体型になっている。


「こーらー、私で遊ぶなー」

「やだー。私は終身名誉エロガキなのだぁ」


 アンナの胸はでっかいけど、私の胸はどっちかというと大きいくらいだ。バニースーツを現実で着てもこぼれるほどはない、と思う。下から持ち上げる遊びは、自分のでやった方が楽しいだろう。下着を付けているときはそんなに動かないから、なおさらだ。


 ぺしっとはたき落としてから脱いで、お風呂の扉を開ける。ぽいと投げられたタオルを受け取って、髪を雑にまとめる。


「さー、洗うよー」

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