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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
1章 情華咲き、月にしぶき映す

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24 スイート・スウィート・ケイク

 どうぞ。

 事前に聞いていた通りテレポートすると、けっこう深い森の中、ウロの空いた大きな木の前にいた。視界に入った瞬間タップすると、ホームに入る。


「やーやー、お待ちしておりましたぞー。下世話なお話ですが、おいくらほど?」

「五十万ディールくらいあるよ。いいとこも見つけたし、また行くつもり」

「えっなにどういうやつ……? 大丈夫なのそれ」

「海に入れるとこがあってねー、海鮮とかいろいろ買い取ってもらったんだよね」


 体育館のような木製のホールに、五人が集まった。


「お待たせしました。すこし遊びに興じすぎまして、お金は用意できておりません……」

『大丈夫だよぉ、私もぜんぜん儲けられないからねぇ』


 アンナは『それじゃ』と切り出す。


『この五人、「水銀同盟」でギルド申請出すねぇ。いい?』

「いいよー」「賛成ですぞー」「はい」「うん」


 ホロウィンドウをタップした瞬間に、輝かしい音とエフェクトがぱあっと流れた。


「アンナ、おめでと。やっと一緒に遊べるね!」

『えへへぇ。ずーっと、楽しみにしてたんだよ?』


 ぎゅーっと抱きつかれて、私も抱き返す。わりといつもこうして寝ているけど、ゲーム内だとまた違った感覚だった。


「それにしても……みんな、ちょっと見た目変わった?」

「フィエルさんは、お菓子に見立てた服装でしょうか」


 そうだよー、と察しのいいレーネにウインクを決める。レモン色の燕尾服に白バニーと真っ白タイツ、チーズケーキ風だ。


「レーネはどうしたの……なんか、落ち武者一歩手前じゃない?」

「これはその、刀があれば防御は要らぬのではと……」


 薄い和装に薄い鎧、明らかに初期装備から下位互換に差し替えられたやつだった。心配そうにしているシェリーは、青いイヴニングに肩掛けが追加されている。


「私のは、クエストでみんなを癒してたらもらえたの。強制クエストなんてって思ってたけど、案外堅実にやれるものなのね」

『なるほどねぇ。ところでとっこ、それ何なのかなぁ』

「いやー、あはは……ご、ご勘弁を! 呪い装備センサーをすでに持っていたのですが、これがなかなか」

「なかなかなの……?」


 荒削りな拘束具にへんな光り方をしているブレストプレート、足元はサンダル、なんか頑丈そうな籠手。ここまでは前に見たときと同じだった。インナーの薄いレオタードがちゃんとしたレオタードに変わっていて、そこに――


「規制とか引っかからない?」

「すこし、淫らすぎる気がします」


 おっぱいの下に輪があって、そこから背中と股の方に鎖が伸びていた。ストラップのないブラか、バニースーツにもちょっと似ているかもしれない。とくに、股に鎖がぴったりくっついているところは、かなりアウトだなと思ってしまった。


「もともと、配信のレーティングは高めにしてありますからな……。しかしこの鎖、なかなかに便利でして」


 籠手の手のひらから、真っ黒い鎖が出てきた。


「巻き付けて剣を握れるうえ、盾も持てるのですなー。とても便利ですぞ」

「確かに強いね。それはいいけど、呪いの効果は大丈夫なの?」

「えー、今の効果一覧は、と。戦闘開始時ランダムなデバフを獲得、強制的に踊りを使う、バフ倍率が不安定になる、両手が一定時間ごとにじゃんけんの型をとる……ふむふむ。とくに問題ありませんな!」

「いや、あるでしょ……」


 シェリーはかなりの慎重派のようで、かなり気にしている。


「デバフ解除……は、できないんだ。呪い強すぎない?」

『世界観上、万年単位で残ってるアイテムがふつうにあるみたいだからねぇ。生まれたてのひよっこが解呪できるものじゃないんだよぅ、たぶん』


 そのへんはちゃんと読んでいなくて分からないけど、呪いのアイテムはプレイヤーにはどうしようもないものらしい、ということは分かった。


「これ以上装備して大丈夫なの?」

「うーむ。あとは頭装備とアクセサリー枠なのですが、配信をやっている手前、顔が隠れるものは装備できませんな。ほかは、ゴテゴテになってでも!」

「わかった、アクセサリーね」

『解呪はしようねぇ……』


 いろいろ分かったことはあるけど、このままでいてもいいことはなさそうだ。何かしらクエストとか、別のアイテムと組み合わせるとかもあるのかもしれない。とりあえずはこれでいいか、ということになったところで、思い思いのことをやることにした。


「んー、私はとくにやることないし……またダンジョン行ってこようかな。また同じように儲かる、とは思ってないけど」

「強い敵がいるのですか?」

「あそこ固いのばっかりだったから、レーネの刀にはよくないと思うよ」

「う……。また、装備を更新したら教えてください。行きますので」


 いいよーと笑って、私はホームを出た。


 次の瞬間、どこからかカードが飛んでくる。


「わっ!? なに!?」


 ウロの中に刺さったカードには、仮面のマークがあった。大きく開いた口、そしてその中に収まった、豪華な食事の乗ったテーブル。


『アンナ、なんかカード飛んできた』

『ん? 陣営の勧誘じゃない? 開けてみなよぉ』


 タップしてみると、空中に「スヰートパレヱド」という文字が浮かび上がった。そして、モザイクのかかったような声が聞こえてくる。


『やぁやぁこんばんは、美味しそうな【愚者】のかた! わたしたちは「美味」を追い求めて歩く行列〈スヰートパレヱド〉。この招待状が届いたということは、あなたという【愚者】はすでにわたしたちの一員ということだ。出そうとしたとき、このカードはいつもあなたの手元に現れる。同じマークのあるところに入るために使ってほしい』


 一方的に言うだけ言って、声は途切れた。


『聞いてた?』

『聞こえてたよぉ。有名な陣営だね、究極の美食と見立ての美学、あとヴァンダリズムで有名なんだって』

『ヴァン、なに?』

『街中にとつぜん絵を描いたりする、……破壊的芸術っていうのかな? そういうやつ』


 微妙に理解できない。さっと調べてみると、思想の書き換えを目的にした破壊行為、と書いてあった。


『悪い方じゃない、これ……?』

『かもねぇ』


 微妙に納得できないけど、私は陣営に入れた。

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