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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
4章 ドリームパーク:すべて未来を捧ぐなら

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166【同時視聴枠】白バニーさんを観る会【今日は黒でしたわ!】(9)

 どうぞ。

 パズルがかちゃりかちゃりと組み変わって生まれた神像に、各々が構えをとる。それらは、これまでの配信で見せた最強の武器や技を放つ前触れだった。


 ハイライトですわね、と誘納(いざな)いちごは目を輝かせる――フィエルの服装が、いつもの白いエナメルのレオタードから、黒い振袖に下半身ハイレグという衣装に変わった。その姿が分身して、九足の高下駄がからりと鳴る。


「あっ! 切り替わりましたわ!!」


『っぱ変身よね』『瞬間着替え考えた人マジ天才やと思う』『黒バニーさん!』『うさ耳付いてないからただのハイレグなんでは……』『そも最初にバニーさんって言い出したの誰だよ』『よく考えるとバニー詐欺?』


 いちごは、事前に予告されていたイニーズ・ドリームパーク攻略の同時視聴枠を設けて、フィエル/プロミナの活躍を中心に見ていた。


「先ほどのディリードさんのご活躍も、とっても! とっても良かったのですけれど……ワタクシやっぱり、フィエルさまが跳ね回ってどんどこ暴れ回るところが見たいのです!」


『ズンドコ山不可避』『ほんそれ』『どんどこ!』『すっかりファンになったなあ』『良くも悪くも脳みそ持って行かれるからな……』『いっぺん見たら価値観狂うよね』『どいつもこいつもクッソ強いんですが』


 単純な破壊力と速度で以て人間サイズの鎧をブチ壊した〈壊帝(ティラン)〉、箱型のモンスターから無尽蔵に湧き出る泥を焼却しきった〈手綱(レインズ)〉、蛾の群れとハンターたちを余裕綽々で処理した〈彼岸花〉、ドラゴンを斬る助けになったプロミナ。活躍の度合いや絵面の派手さでいえば、ディリードは確かにハイライトにふさわしかった。


 だがしかし、しかしである――既存ファンが求めるものは、「水銀同盟」の活躍だった。早すぎてほとんどカメラに映らないレーネが一瞬だけ映る瞬間を捉える、アンナがもたらす大破壊を楽しむ、フィエルの今日の変身を楽しみにする……そういった粋な瞬間を楽しむ通たちが集まる配信において、今日のそれはまだまだ、満足度が低いままである。


「それにしても、強いモンスターばかりですわね。パーティーを分割すれば、【愚者】の影響も出ないようで、すこし安心いたしました」


 プレイヤーの初期スポーン地点であるエーベル付近のモンスターは、誰でも倒せるように弱く作られている。ベルター付近はレアモンスターがかなり強く、カンデアリート付近は道のりが長いためかやや弱めになっている。


「デュデットワは極端なのですよね。湿地帯は歩きにくいからか単純なものしかおりませんけど、浜辺はギミックがあっても弱めで」


『レアの竜クッソ強かった』『どっちにしてもゴリ押し利くんだよな』『泳げたらかなり有利』『人魚形態がいちばんやりやすいらしいね』『まあつまらんわな』


 多窓している画面の中で、薄暗い照明の中でも白い生足が美しく躍り、振袖の刺繍がチロチロと煌めく。


「ああっ! とってもきれいですわ……!!!」


『出た脚フェチ』『だいたい露出してて手指を隠す徹底っぷり、たまらんね』『いちごちゃんも変態の国の国民だからね、しょうがないね』『リアル絡みで実際に撫でてる実績ががが』『脚フェチの女の子多いよね』『まあ脚見せてナンボですから』


 女性メンバーばかりのNameLLL(ねむる)は、どの事務所でもやるようなタレント同士の交流において、ほとんどパジャマパーティーと同義の「安眠会」という企画を掲げていた。


 創設者が「夜にきちんと眠れないから」と配信を始め、友人や夫と立ち上げた事務所であるため、メンバーもまた「夜にきちんと眠れない人」を募集要項としている。そのため、誰とどこでどうすればよく眠れるのか、じっくりと調べていく「安眠会」は……彼女らの生きづらさを解消するための、事務所としての最優先事項でもあった。


 が、それはそれ、これはこれとして、「安眠会」は楽しくなるようにと計画されている。布団乾燥機で布団を温めたり、湯たんぽカバーをお気に入りのものに変えたりといったきわめて常識的なものから、人と抱き合うようなややアブないものもある。


「先輩の脚よりも……ずっと筋肉質で。ああ、なんて魅惑的なのでしょう」


『(アカン)』『¥10000なんて?』『吟子先輩来てるやんけ!』『四文字でこの圧』『吟子先輩は寝てるのでは()』『あの人がこの時間に寝てる方が異常事態なんだよなあ』『いま十時過ぎだから誰も寝てないって!』『なんならVの配信は今からが本番なとこある』


 以前にいちごと二人で寝た、脚を撫でられたことのある「卦環射吟子(けわい・ぎんこ)」が、コメント欄に現れる。いちごは動揺せず、画面を指して微笑む。


「あのキック! そしてジャンプ。見てください吟子先輩、あれはリアルで脚が強い人の使い方ですよ!」


『めちゃくちゃ自信ありそうね』『あの連続キック食らいたい』『↑わかる』『トライアルいいよね……』『9.8秒も美少女のキック受けられるんですか!!?!?!?!』『ボール出してないのにこの破壊力』『あっ壁壊れた』


 神像がゆっくりと倒れ込むと同時に、壁の一部が壊れて開けた。


「あら? あの大きなお人形さん……何なのかしら」

『裏切ったんですか、ジェロゥさんっ!』


 画面の向こうにいる少女が叫ぶ。


『何のことかな。どういった筋道をたどって出てきた思考なのか、まったくもって理解できない』


 巨大ゴーレムのみならず、ランタンを揺らす偽神をも使役しているらしい、ギラギラした男装の少女「ジェロゥ」は……悪びれもせず、そう言った。

 卦環射吟子=KEy/銀・呼=「銀の鍵」(クトゥルフ神話の「ドリームランド」に行く鍵)。まともに寝られてない人の多いNameLLL(ねむる)の中でもとくに重傷で、「あっちにいるんでは?」と言われるくらい配信の頻度も多いけっこうな廃人さん。あとリアルボイスが枯れきっててヤバいのにVRだとそこそこ元気なのがさらにアレ。無駄に濃いエピソードが多いけど、本編で語られるかどうかは知らん。


 特撮関連の話題を見てる関係上同時視聴に出くわすことが多いので、配信を同時視聴する配信をやってみました。まあいるよね……ぱかライブ同時視聴とかバージョン情報チェックとか。あと「○○(同僚)の家行ったことある、こんな感じ」というのはタレント売りしている人がだいたい言ってるので入れてみる。

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