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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
4章 ドリームパーク:すべて未来を捧ぐなら

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153 愚者はその愚ゆえに迷わず選ぶ

 どうぞ。

 焼いた干物とトマトスープを、ゆっくり食べていく。


「干物、ほんと美味しいよねー……」

「干物ってぜんぶ白身だよねぇ」

「赤身のってあるのかしら。赤身の魚ってだいたい、沖の方の魚よね?」

「マグロとかかー。ジャーキーみたいになりそう」


 近くのスーパーは、近い港から入荷する新鮮な魚もそうだけど、港から直送される工場で作った加工品もいろいろ売っている。保存食でも、やっぱり新鮮な方が美味しいみたいだ。


「お父さん、今日も遅いの?」

「お父さんはいつも忙しいじゃない。最近はそうね、にごフェスの準備もあるみたいだし。この時期は毎年、九時過ぎより早くは帰ってこないのよね……」

「私も大変だからねぇ。アニバーサリーだったらASのデータ圧縮して残して後で加工とかもするんだけど、今年って別にそういうのじゃないからなぁ」

「お疲れ様、アンナ。ベーコンあげる」

「あの、えっとさ……」

「ん、どうしたの」


 やって、とそれだけ言い出した。


「私がお金出すから!」


 なんだかんだでプロだしお金持ちのはずだけど、配信周りや仕事で使うアプリに使っているみたいで、アンナが分かりやすい贅沢をしているのは見たことがない。


「あ、スポーツクラブ? ほんとに……」

「なに、どういう話をしてたの」


 母は、不思議そうに言った。


 これまでに何があったのかをすべて語っていくと、けっこう長くなってしまった――けれど、核心はきちんと話した。


「そう。もう、いいのね」

「だって、私に根付いてるものだもん。ハジケても外せないよ」


 世の中のスポーツものは、「嫌いだから二度とやらない」なんて言いつつ、結局体が覚えていたから再起するなんてドラマパートがウケるらしい。かれらと私に違いがあるとすれば、嫌いになんてなっていなかったことだろう。立てるステージの形が変わっても、同じように輝けたらという思いはまだあった。


 だから私は、〈ラフィン・ジョーカー〉になった。そう呼ばれることも、今は心地よく思える。みんなを楽しませたいし、期待にも応えたい。いつの間にか、ご飯はなくなっていた。


「本格的に、じゃないけど……。けど、パフォーマンスをもっと洗練したいのと、体力も付けたいから。戻ろうかなって」

「いいんじゃない? アンナがお金出すって言ってるし、この子の配信もアカネのおかげでずいぶん収益増えたって言ってたものね」

「そうだよぉ。気に病まなくていいよ、アカネに飛んできたスパチャの取り分だけで、だいたいどこの月謝でも半年分くらい払えちゃう」

「そ、そこまで!?」


 コメント欄は見ていたから、投げ銭が飛んできているのは知っていた。けれど、私はあくまで辻映りしているだけだから、お金を受け取るのはアンナだと思っていた。


「……私、アカネにぜんぜん恩返しできてないから。このくらい、させて?」

「そんなこと、ないのに」

「私の気持ちが済まないんだよぅ。ね、いいでしょ?」

「えっと、……ありがと」


 食費も入れているし、家事も覚えようとしている。養子というより「お世話になっている他人」みたいに振る舞おうとしているのが、なんだか嫌だったけど……いちばん大事なのは、アンナ自身の気持ちだ。


「それに! アカネがもっとすごくなったら、もっと儲かるよぉ。つまり、自前で月謝を稼ぎ出せちゃうのだ」

「たしかに……!」

「じゃ、やる理由がちゃんとできたわね。応援してるわ、二人とも」

「「うん!」」


 そんなわけで、私のスポーツクラブへの復帰がほぼ決まったところで――




「まずはこっちだよね……」


 現状、フィエルは最大MPの六割を失っていて、まともに戦えない。そして、プロミナも呪物をほとんど使い切っていて、あまり補充できていないままだ。武器のほとんどが壊れても戦えるフィエルとは違って、プロミナは準備がなければ戦えない。というわけで、こっちの準備をより慎重にしておくことにした。


 まずはとポーションをがぶ飲みしながら〈ばくはつキャンディー〉を大量生産して、〈夢現(うつせず)将刃矛式(しょうばのかじき)〉をたくさん作った。〈調兆王(ちょうちょうおう)〉や〈藍餐互(あいさんご)〉、〈階量凍血(かいりょうとうけつ)〉に〈栓封妨(せんほうぼう)〉も増やして、できるだけたくさんの戦力を確保した。


「うーん……意志アビリティ、ポーションもコピーできるんだ……? 消費MP多いし、こっちはいいかな」


 フィエルの方でもさんざん悪用している【愚者】の意志アビリティ【ひどい手癖】は、ランダムな素材アイテムを失って、代わりに任意の消費アイテムへと変換できる。アイテムの効果が高いか、作るとき消費する素材が多いものを作ると、追加でMPが必要になるけど……どのアイテムが消えるかを考えなければ、とんでもなく有利だ。別枠でかごに入れても無意味だから、そこはちょっと怖いかもしれない。


 呪符はたくさん必要だけど、紙一枚あたり百ディールで作れるのが二十枚くらい、仕入れ値がけっこう高い。その仕入れ値をゼロにできるなら、ちょっとMPが減るくらいは許容できる。


「よし、いっぱい作るぞー……」


 ポーションはまだまだある。消費できるHPも同じだけ、あふれるほど多かった。

【ひどい手癖】、本来なら「ランダムで素材アイテムが消える&MPも減る」というクソオブクソなんですが、任意でも発動できるので「素材アイテムさえ充分ストックしていれば、普段使いするアイテムが無限に補充できる」というアホつよアビリティに変わっています。基本的に素材売ってお金にする仕組みなのでめっちゃ不利なんですけども、加工品は加工できないっていうセーフティーもあるにはある。

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