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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
4章 ドリームパーク:すべて未来を捧ぐなら

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152 白じゃないなら旗さきざきフラグ!

 どうぞ。

 いつも二人でお風呂に入っていると、お互いの変化がすごく分かりやすい。それに、洗いっこするとなんだか落ち着く。アンナには「距離感がバグってる」なんて言われたけど、なんだかんだ、きょうだいがいるから自分も甘やかしたいのかもしれない。


「あ。私ちょっと太ったかも」

「イヤミかぁー? どのへんがなの」


 背中を洗ってもらっているとき、皮膚のたるっと具合がいつもよりもう少し柔らかかった。こういうふにっとした感触は、競技だとまずアウトなBMIになっている証拠だ。最近はご飯も美味しくて、けっこういっぱい食べて自制していなかったから、結果がそのまんま出てしまっている。


「どうしよ。柔軟はちょっとやってるけど、走り込みもした方がいいかなー」

「今でも選手やれるの?」

「むりむり絶対、半年以上やってないから。動きがイメージできるとか視野外でキャッチできるとか、いちおう成長したとこはあるんだけど……」


 小学生どころか、下手をしたら四、五歳から始めている人にとっては、そんなものは習得していて当たり前のテクニックだ。小学生の高学年になってから始めたけど、正直遅さを実感することはあった。体が育っていた分の安定感はあったと思うけど、いつだったか聞いた「鍛錬」という言葉の意味……数え切れないほどの反復練習の回数は、当然足りていなかった。


 悪くはないし、下手でもない。けれど足りないから、ステージに上がることはできない。その程度の実力で、「頑張っている子」くらいの評価だったと思う。同期で同じスポーツクラブの烏野選手がいなかったとしても、結局ステージに上がる機会はなかったのだろう。



――いつでも戻ってきて。私たちは待ってる。

――子供連れてきても、シニアでやるのも。大歓迎だよ。



 塩山コーチは、いつになく辛そうな顔でそう言っていた。あのまま、一度も会いに行っていない。


「んぇーっと、うーんと。どうしよ」

「どうしたの」

「夏のリアイベ、呼ばれるかもしれないんだよぅ」

「えっ、えー……え!? 私たちが?」


 思考をペンキをぶちまけて上書きするように、爆弾発言が飛び込んできた。


「七月頭の「にごフェス」、知ってるでしょ? 大昔からあるやつ」

「うん、NOVAのアバターコスしたりとか、二次元の作品売ったりとかだよね」


 たしか「ユニディメンショナル・フェスティバル」だったか、昔のまた別の祭典がめちゃくちゃ進化した、何でもありのお祭り騒ぎだ。話題のゲームもブースを出すし、開発者やバーチャルタレントが出演することも多い。ニュースで毎年やっているから、事情を知らない人も名前くらいは知っている。


「ほら、NameLLL(ねむる)とかO-Levelの人もけっこう出てて……こっちに白羽の矢が立つかもしれないんだよねぇ」

「あ、そっちかー。じゃあNOVAのオーグメントスペースに行くだけだよね」

「どっちなんだろ」

「いや、リアルの私たちが出るのは無理じゃないかなー……元からプロってわけじゃないし」


 現実でもきちんと活躍できるバーチャルタレントさんは、けっこういる――というところに思考が及んだところで、アンナに視線を送る。


「……えっと、あれだっけ? 私、リアルでもバニースーツ着られるよって配信で言っちゃったんだっけ?」

「そこは配信じゃなくてリアルで言ってた気がするけど。AS(ばしょ)作ってるとき、「白バニーさんってリアルでもあれやれるんでしたっけ?」って聞かれちゃって」

「どう答えたの?」

「半分くらいはいけると思います、って……」

「こっ、こいつぅ! このばかぁ!」

「ごめん! ちょっとアカネのこと自慢したくなっちゃって!」


 こういう大手の仕事も引き受けているから、ものすごい収入があるわけだけど……こういうやらかしをされてしまうと、ちょっと怒る。


「まったくもー……もー。お手玉はできるし、もうちょっと先のこともできるけど。ボールでトランポリンとか無理だよ?」

「れ、練習したら……?」

「危なすぎるの! ゲームは落下リスクとかないし、首折れても死なないからいいけどさー。リアルは打ち所が悪いだけで一生寝たきりなんだから」

「う、そうだよねぇ……」


 トランポリン自体はできる方だし、ボールの扱いがぜんぜんダメというわけではないけど、両方を合わせてできる人は、地上でも歴史上でもわずかじゃないかというほど減る。練習からして危険だし、一度のミスで一生寝たきりになるリスクを、スターとして推す若い女性にやらせる一座もないだろう。


「うーん……。攻略終わったら、ちょっとスポーツクラブに連絡してみよっかな」

「や、やる、の?」

「即興パフォーマンスなら今でもできるけど、一瞬でバテてたらダサいし。もっとちゃんと魅せようと思ったら、練習あるのみでしょー」

「いいんだ……」


 だってほら、と――裸ではぜんぜん締まらないけど、唇に指先を当てて、微笑む。


「ステージに立ちたかったのはほんとだし。チャンスあるなら、やるよ?」


 申し訳なさそうにしているアンナの髪をできるだけ乾かして、いっしょにリビングのソファーに座る。季節も変わりかけているから、服の生地もけっこう薄くなっている。言葉にすると変だけど、ストーブみたいに輻射熱がふんわり伝わってきた。


「さ、お夕飯にしましょう」

「ひゃっふい! アカネ、行こ!」


 ちょっとごまかし気味のテンションに付き合って、私も「いぇっへい!」と続いた。

 ネームドキャラってほとんどアカネと絡みあるよね……と思ったらアルトマン(ミルコメレオのギルマスさん)だけ面識ありませんでした。出さなければ……


 本作に配信要素を盛り込むと決めた時点から、リアイベ編はやりたいと思っていました。たぶん六章あたりになる、はず。きょうだいたちがゲーム友達に会いに行って一泊したりとか、けっこう「ネットで知り合った人のところに行くなんて!」という常識が崩れつつあるからです。それはそれとして色々あるとは思うけど。……友達んとこにお泊まりしてないの、私だけかー……

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