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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
1章 情華咲き、月にしぶき映す

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15 電気漁法は違法です(洗脳漁法も)

 どうぞ。

 貝殻や真珠、「特級アワビ」というすっごい食材に、サンゴや「ぼろぼろの金貨」などなど……ドロップアイテムはかなり豪華だった。アワビは高級食材……ゲーム世界でもそうなのかは知らないけど、海のないところに新鮮な海産物をそのまま持ち込めば、きっとすごいことになるだろう。


「アワビがいるなら、もっとすごいのいるかな? 海鮮の高級食材……なんだろ、イセエビとかマグロとかかなあ」


 魚はけっこう食べるけど、海鮮全般が大好きというわけでもないから、よくわからなかった。マグロはすごく魚っぽい魚だから、モンスターにして面白いのかな、と疑問を浮かべてしまう。


 ボールを元のサイズに戻して収納し、時計を手に持って襲撃に備えた。ゆっくり歩いているせいか、進むのがすごく遅く感じる。道の広さもあるんだろうけど、青みがかった海底の雰囲気もあるのかもしれない。時間耐性はあるから、こちらの歩みが遅くなっているわけではない、はずだ。あちこちにある岩みたいなものが、もしかしたら全部モンスターなのかもしれない。小さいのから試してみよう、とサッとカードを投げたが……こんっ、と当たるだけ当たって砕け散っただけで、ただの岩だった。


「どういう基準で来るんだろ。聞いた方がいいのかな」


 首をかしげつつ進んでいくと、ばかみたいに大きな部屋……というより、海の中のかごか海底神殿みたいなものが見えた。片方のハサミだけが異様に大きな、二階建ての家ほどもあるカニがいる。


「ボス……? じゃないや、扉の向こうあるし。中ボスだ!」


 カニには何が効くんだろう、と考えながら武器をぜんぶ出して、大きくしたボールに飛び乗った。そしてそのまま、カニの部屋に突入する。


「たのもー! カニさん、お覚悟!」

「ぎ、ぎぃ」


 シュオンッ、と小さい方のハサミが動いて、一瞬前にボールがあった場所が切り裂かれる。ゾッとするほど速い一撃だ。ちゃんと円陣を描いて跳ねる〈は図み軽魔ジック〉は、ずっと不規則な動きをし続けられるから、敵の攻撃がかなり外れる。〈スクリーンフェイス〉で分身を出しているから、さらに狙いが逸れる……ジョブの説明にも「敵を翻弄する」と書いてあっただけに、そこはいちばん優れている。


 一体の敵にこれはやりすぎかな、と思っていたら、カニは大きい方のハサミを上に掲げて、すいすいと振った。暑いとき自分をあおぐようなしぐさ、いったい何をしているのかと思ったら――


「::・」「ぎぃ」


 アワビとカニ、何種類もの魚にエビに……とにかくたくさんのモンスターが、どどどっと押し寄せてくる。


「えっなに、無理じゃない!!?」


 私よりすこし小さい、いくつものモンスターたちがざざざっと合わさったかと思うと、檻のような形を作った。すこし調節して、ボールが跳ねる円陣をもっと大きくする。そして、こんなときにいちばん利きがいい魔法。


「〈リンクボルト〉!」


 ズガォウンッッ!!! と恐るべき轟音が響き渡り、一瞬で檻が崩壊した。ばらばらと落ちる中には、まだ息絶えていないモンスターもいる。ささっとカードを飛ばすと、それも順序よく全滅させられた。スペックはかなり下がっているみたいだ。


「サーは巻き込んじゃうなぁ。〈ターミナル・ベル〉に〈ホット・アラーム〉……よし、当たった! カニは時間耐性ないんだ」


 こちらのバフである〈ホット・アラーム〉はともかく、相手にかけてひたすら逃げ回るだけの〈ターミナル・ベル〉は通らないこともあるだろう。今のところ固い相手にばっかり使っているから、そういう対処法もあるよ、ということなのかもしれない。


 それほど焦った様子もなく、カニはさっきみたいな攻撃も繰り出さずに、悠々とハサミを振っている。もしかすると、この召喚だけで相手を押しつぶすタイプなのかもしれない……と思っていたけど、追加のモンスターが来ない。


「あれ、クールタイム終わってないのかな……」


 時計の特技ならできそうだけど、まだ私には使えない。何が起きたのかはわからないけど、敵は弱体化しているようだ。このまま攻めていけば、ちゃんと倒せるかもしれない。ちょっとずつカードを当てて削りながら、相手の力を測る。


 気を抜いたら負けそうな気がして、ステータス変化をきちんと見られない。このへんの読み方は、もうちょっとアンナたちから聞いておいた方がいい気がした……さっと読む技術を習っておけば、こちらの有利不利をすぐ見分けられるはずだ。


 こっちにまったく攻撃を当てられなかったカニは、〈ターミナル・ベル〉のカウントダウンダメージをぜんぶ受けた。衝撃にぐらぐらと体を揺らし、また大きなハサミを空中にかかげる。そして、ついついっと振った。今度はちゃんと光っているから、またモンスターが来る。


「集まれ集まれー。もひとつあるんだ、とっておき!」


 ざあっと集う招待客に一礼して、ひとかたまりになったところで〈リンクボルト〉を撃ち込んだ。魔法陣の中にいる敵が多ければ多いほど、すごい数のコンボを叩きだして威力が上がっていく……今のところ、私の切り札になっている技だ。さっきよりは強い敵が多かったのか、ばらばらと地面に落ちていく敵は消滅していかない。けれど。


「浮かんでたよね? 私を見上げる番だよ。〈サイ・プレス〉」


 念動力での圧殺、もしくは糸杉。ひとつの音をふたつに分けたそれは、ハットからすうっと飛んだ帽子の形のエネルギー体だ。ふわりとかぶさったそれは、個々に蒼炎のシルクハットを与えたかと思うと、ズドンッと沈み込んでモンスターたちを消滅させた。糸杉の花言葉――「死」が、場を静寂に包む。


 そして、ドゴゴンッといくつも殴りつけるような音がして、カニにもう一度〈ターミナル・ベル〉が当たった。時間が経つことで消費なしに特技を使える〈ホット・アラーム〉は、もっともっと悪用できるかもしれない。崩れ落ちるカニを見ながら、私は開いた扉の方に向かった。

「ツカミドリー・クラブ」(銀冠)


 時間鏡面にいた超巨大なカニ。精神魔法や幻惑魔法を使って獲物を自分の近くまで呼び寄せ、好き放題につかみ取りして食べる。太りすぎて移動が遅いことに加え、すさまじくエネルギー効率が悪いため、呼び寄せたエサを食べられないとすぐに弱体化してしまう。

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