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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
4章 ドリームパーク:すべて未来を捧ぐなら

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141/166

141 始まりも終わりも突然で縁も唐突に結ばれる

 どうぞ。

 浮遊している状態から力が抜けると、やっぱり落ちるらしい。池にドボンと落ちて、敵の警戒がちょっとだけ緩んだ。


 あのナマズは、HPこそこれまでで最大くらいに多かったけど、吸い込みと突進くらいしか技がなかった。当たったら絶対負けていただろうけど、あんまり当てられそうな気がしない。バシュ、バシュッとまた音がして、霧は口以外からも出ているようだった。


『あ、そうだ……泳げるんだ、この体!』


 服は体に貼り付くけど、インナーは半分くらい肌と一体化しているから、そんなに違和感もない。さっきよりも自由なくらいにすいすい泳いで、水中からカジキを飛ばす。水中からは見えないけど、ダメージはまったくないようだった。口から吐いた白い霧と、体から出てきた電撃とは違って、本体に届かないのは別のからくりがあるように見える。それに――


『ここの水、伝導率悪いんだ……?』


 電気は「いちばん通りやすいところ」を選んで流れる。純粋な水に電気は流れないけど、不純物があるから流れる……とは言っても、いまは空中に塩分を含んだ霧があるから、そっちの方が良導体になってしまった。人間も良導体らしいから、たぶん私も電気の流れる優先度は高めだけど、流れる先がない。


 霧の中にいる私は、良導体に囲まれた良導体だった。だから、土手の上にいる人のように「電気の最短距離」になってしまった。けれど、今の私は水中にいる。霧には地面という行き先があり、水の優先順位は最低だから、ここには電流は来ない。


『グロロルルル……』

『えっと……あった! ホウボウ!』


 へんなトビウオみたいな〈夢現(うつせず)栓封妨(せんほうぼう)〉……三つしか作れなかったけど、かなり呪術っぽいアイテムだ。きっちり栓をした「魔封じポーション」を入れて、栓をしたまま割れてしまうことで未練を引き起こし、ごく弱い一瞬だけの疑似霊魂を相手にぶつける。効力がちょっと高まるだけだし、もったいないからちょっとイヤだけど、効くことは効くらしい。何より、呪物だから抵抗できないのが利点だ。


 カジキが届かない理由が魔術だとしたら、それをちょっと封じるだけでも、いくらでも削れるようになる。ホウボウを飛ばして、水面越しに命中確認をした――ワニ竜はビクッと震えて、全身からすさまじい電撃を放った。けれど、水中には流れてこない。


『ふふん、塩の塊投げ込んでも、すぐには混ざらないよー!』


 水中から呪符の折り紙を飛ばしているけど、すぐに濡れてべしゃべしゃになったりはしない。そして、霧は塩分を含んでいるけど、霧が蒸発してもすぐにこっちの池の塩分濃度が上がることはない。


 飛ばしたカジキは次々に命中し、蒼い焔がいくつも弾けた。魔術が復活する前に、と思って飛ばしまくったけど、効果はほんの一瞬で終わってしまった。次の電撃が来たら、と思っていたら、敵は水中に飛び込んできた。


『ゴォロロロ……!』

『やっばい、電撃来る!』


 焦って水面に飛び出してしまい、塩分を含んだ霧のただなかに身を投じてしまった。べたべたと肌に貼り付く感覚が、焦りをさらに加速させる。いったいどこへ逃げればいいのか、と判断が完全に止まったところで、なぜか水流がバシュウッと襲い掛かってきた。ギリギリで避けたつもりが、巻き込まれて下半身の一部が消し飛ぶ。


「強い……! っていうか電撃は!?」


 何か理由があるのか、敵は電撃を使ってこない。水中から電撃を放てば、たぶん霧の方に大電流が流れて、私にも当たるはずだ――そこまで考えて、気付いた。


「こっちが魔術だったんだ! 水の……!」


 防御魔術にもいろいろ種類があるけど、今回は水の薄膜だったようだ。そして、水魔術には当然水流の魔術もある。このワニ竜が口から吐くのは雷だけど、使える魔術は水魔術だった……強いモンスターだけあって、使える技も多いらしい。


 また砂地に上がるのかと思ったら、今度は水魔術を使って、泥沼のようだった湿地帯を固めて足場に変えた。そして、ごうごうと風が吹き始める。空中にいたこちらを洗濯機に放り込むように回して、HPもぐいぐい削っていく。


「風まで……!?」


 次の瞬間。


 ヴォウンッッ!!! と――風が、斬られた。


「へ?」


 右の脇腹から、左の足の付け根くらいまでが……一気に脱落して、自分の体が地面に転がるのを感じた。


「な、なに……?」

「しばし待ちなさい。お前は裁判に出る権利があります」

「裁判?」

「待て、と。そう言いました」


 純白。


 かしゃり、かしゃりと足音が聞こえて、どうやら言葉の主が全身鎧を身に付けているらしいことが分かった。ポーションを飲んで再生するのも空気を読んでない気がして、できるだけ半身欠損のまま振り向いてみる。


「ロロル、ゥオ……」

「慈悲を施しましょう。そなたは人の法を理解できないのだから」


 真っ白い剣の横薙ぎが、ワニ竜を真っ二つに切り裂いた。これまでも見たことがある、あまりにも圧倒的すぎるステータスの暴力。どう見ても【狂妄】のそれではないし、言葉の感じからすると。


「【使徒】……教会の人?」

「お前も、……その仮面は何ですか。まさか【愚者】?」

「はい、【愚者】です」


 自分はバカですと言っているみたいで、なんだか妙な気分だけど……たぶん、モンゴロイドとコーカソイドを比べるくらい、人間の種別が違うのだろう。お前“も”、と言っていたということは、この間聞いた禁忌……「【使徒】とモンスタージョブを組み合わせると、教会の処刑人が来る」という情報に関係している、のかもしれない。


「ごめんなさい。私はゾミア、〈教会騎士〉です。お前と似た姿の【使徒】が現れたと聞いて、デュデットワに来たのですが、人違いだったようですね」


 まるでガラスみたいな、虹の光沢を帯びた銀髪。清らかな美貌にかすかな憂い、体格は小さいけど全身鎧と肉厚の剣を振り回すパワーもある。ギリギリで私を殺さないだけの精密性もある、とんでもない剣筋だった。


「あのっ、【使徒】とモンスタージョブってダメなんじゃ……?」

「仮面が二つあるということは、お前は旅人なのですね。ちょうどよい機会です、お前が伝令として詳らかなところを伝えおきなさい」

「え、はい……」

「メモなど取っても構いません」


 青銀色の瞳が、こちらを貫く。ポーションでちょっとずつ再生しても、あまり構っていなかった。

 わお、12月じゃねーの……クリスマスっぽいことできる自信がまるでない。


 ほぼラギアこと「海焔竜」くん、体内のナトリウムを霧状に放出しているので、汽水域~淡水域だとすぐにナトリウム切れ起こして電撃を放てなくなるという欠点があります。海だと海水を蒸発・濃縮したものを飲んで補給していたり。当然肝臓・腎臓が塩分でマッハなので、こっち系じゃない海竜の方が長生きする。海の大物=リヴァイアサン系ばっかしなのはそういう理由なんでしょうね(適当)。しかし霧切れ(仮)起こしても魔法使いだすんだよなぁ……

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