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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
4章 ドリームパーク:すべて未来を捧ぐなら

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137【魔王の道化様に挑みますわ!!】いきます(2)

 どうぞ。

 コロシアムに到着すると、すでに観客が入場しながら入場チケットを購入していた。手を振って控えめのファンサをしつつ控室の方に向かい、二人はコロシアム利用のチュートリアルを受けることにした。ふつうのミーティングルームのような場所に、雷のようなひげを生やした大男がどんと立っている。


「わしは「マチケット=ヴァーサス・デュエル」である!! 説明を始めるッ、聞き逃さぬように!!」


 コロシアムで行われる「決闘」は、内部に特殊な結界を張って閉鎖し、双方が同じ土俵で戦えるようにした試みである。合計レベルでの差異が生まれることはなく、その点だけでは公平と言えよう。しかしながら、だからといってまったく同じになることはない。


 装備スキルはそのまま使用することができ、武器スキルも習得状況は変化しない。レベルによって習得するジョブスキルは一部が使用不能になるため、習得ジョブ数が多ければ多いほど弱体化はするが……フィエルの〈道化師〉は、レベルが高いからどうなるというものでもない。


「説明は以上である!! では、どのように戦うのかを決めよ!!」

「ワタクシに合わせていただいてもよろしいでしょうか?」

「うん、いいよー。いきなり新技増えても、だし」

「あっ、それとなのですけれど。フィエルさま、あの」


 小首をかしげる少女に、いちごはこっそりと言う。


「時を止めるあの技を。使っていただきたいのです!」

「え? あれは、対人だとあんまり使ってないんだけど……」

「二日ありました。対策を、身に付けてまいりましたわ」

「……そっかー。めっちゃ見たくなっちゃった」


 時計による疑似時間停止……正確にはきわめて重篤な速度デバフ、そして行動速度大幅低下である〈セット・スタンダード〉。抵抗できるものは少ないが、だからといって使ってしまえば絵面がひどいことになるばかりか、塩試合製造機になりかねない。扱いが非常に難しいばかりか、ナーフあるいは削除されてもおかしくない特技だ。


 しかし、欠点はある。そして、いちごはそれを研究し、対処法を身に付けてきた。


「ワタクシ、合計レベルを百まで上げてきましたの。まだジョブは三つだけしかありませんけれど、胸をお借りしますわ!」

「私こそ。何も気にしなくて良さそうな人、初めてだから……がんばるね!」


 彼女がどの程度戦闘狂なのか、いちごは知らない。彼女にそのような飢えがあるようにも見えず、戦わせてくれなどといった無理な要求もされていない。それゆえに、その紫色の瞳に宿る、奇妙な狂気は……ひどく不気味だった。




 誘納いちごのジョブは〈戦士〉〈マウンテンゴート〉〈格闘家〉の三つ、メイン武器はメイスである。そして彼女は、三日のうちにすでに解に目覚めていた。ちょうど反対側にある控室に移動し、コスチュームには反映されない武具も身に付けながら、考える。


(あの方もお強いですけれど、MMOの対人でしか輝かないタイプだよね。いけない、お嬢様を保つのですわ!! 切り込む隙はふたつ!)


 フィエルは、相手を自分のペースに引き込んで崩すことを得意としている。そして、相手が彼女のペースを崩そうとしても、容易に崩れないだけの地力も身に付けている。その中でも要になるのが、ボールという武器だ。


(だいたい2メートルくらい。超巨大サイズのボールが円陣を描いて跳ねて、パーティーの陣形を圧迫しながら、轟音で思考もめちゃくちゃにする。とっても合理的ですけれど、すこし範囲が大きすぎますわよね)


 三つから十個のセット販売で、ワンセットごとに陣形を描いて跳ねさせることができる〈は図み軽魔ジック〉。この特技には、ボールが大きくなればなるほど使う面積が大きくなる、という欠点がある。大きくなるほど衝撃力が増し、乏しい攻撃力もそれなりには上がるが、コロシアムの底面積は直径で言ってせいぜい三十メートル程度だ。壁にぶつかるか、壁に当たって跳ねることを計算に入れて動かすほかにない……動かせるボールの数は、野外でのそれよりも大幅に減る。


 そして、もうひとつ。


(あの方の属性スペクトル、どう見ても「全色」ですわね。だからこそ(・・・・・)、とっても対処しやすいのですけど)


 付加ダメージの属性、あるいは特技のランダム変動属性がどれになるかの抽選基準は、「属性スペクトル」によって決定される。玉華苑にある動植物の色や種数で決まるため、【愚者】はそれなりに優遇されていると言えよう。ところが、ダメージソースを付加ダメージに頼るフィエルの戦い方は、ある意味で対処しやすい。


 もとから【賢者】であるいちごは、意志アビリティによって各種耐性に優れている。そして、〈戦士〉と〈格闘家〉は両方とも基礎耐性に恵まれている。モンスタージョブによって火や射撃への耐性は下がっているが、さほど大きな瑕疵と言えるものでもない。つまるところ、付加ダメージを軽減するというただ一点だけで、フィエルの出せる火力が大幅に下がってしまう。そして、そういった性能を持つ防具はすでに存在する。


 ぱん、と顔を打って気合いを入れ、出場する。


 反対側には、すでにフィエルが立っていた。


「たくさんの方が見ていらっしゃいますわね! みなさまがた、見守っていてくださいませー!」

「私は今回ヒールだからねー。でも、手は抜かないよ」


 コメントを読めない、という理由でいったんホロウィンドウをすべてワイプして、いちごは右の手のひらをかざした。


「これが私の解ですわ!! はじめから使います!」

「じゃあ、私も!」


 山羊の頭骨に、実をつけたイチゴのつるが巻き付いたような刺青。手のひらに施された意志の証は、すでに解を宿している。フィエルもまた、魚のような月のような仮面を、こめかみから顔へするりとスライドさせた。小さめに調節したボールを跳ねさせ、九人に分身し、バイオリンの弦を長く長く鳴らしたような音とともに、夕焼けと銀河と流星群が入り混じった結界が展開された。


「――〈セット・スタンダード〉」

「はぁッッッ!!!」


 周囲からはどう見えていたのか。ほの青く染まりつつあった風景に、突如としてボールやカードが出現するが……いちごが行使した〈ハンマーサイクロン〉が、カードを巻き込み、ボールを弾き返してコロシアムをビリビリと揺らした。九人に分身していたはずの白バニーが、たった一人になっていた。


「……あはっ」


 消滅した分身が、もう一度現れる。自動操作されているため、ほんのりと微笑をたたえているだけの分身と違って……本体は、開き切った瞳孔をこちらに向け、あまりの快楽に蕩けそうになっているかのような、ひどく蠱惑的な微笑みを浮かべている。唇をなぞるその指には、いったいどんな意図が込められているのか――誘納いちごの知り得る見識のうちには、それを判別する方法はなかった。


 殺到する金魚たちにまとわりつかれながら、いちごの戦いが始まった。

Q:時止めに対処するには?

A:全方位攻撃で攻め手をぜんぶ弾き返せばいいんだぜ!


 ダメージが発生するタイミングと範囲さえ合えば「あ、これ当たらないなー……」ってなって外から解除したりする可能性がないでもない。でも手に持ってなくてもコールしなくても時止めしてくるので、ガチでルール無用なら両方道化師、あるいは時間耐性Aが最低ラインになる……うん、やっぱりクソ技やな。でも時間耐性A以上のモンスターはそこそこいます(「時間鏡面」にいた貝とか)

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